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『心霊写真』この恨み、晴らさでおくべきか…『女神の継承』監督渾身のデビュー作!

この映画は、つまり―
  • タイホラー『女神の継承』のバンジョン・ピサンタナクーン監督デビュー作!
  • Jホラーの影響を受けつつも、タイらしい雰囲気も!
  • 心霊写真は過去の遺物…ではない!

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◆配信中の注目作

『心霊写真』(2004)

ディズニープラスで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

一昔前は「ホラーを見るならJホラー」などと言われたものだが、むしろ今ではJホラーに影響を受けながら進化してきたアジアンホラーの方が勢いを増している。去年は特に、台湾映画『哭悲/THE SADNESS』と『呪詛』、そしてタイ映画『女神の継承』などが話題となり、高い評価も得た。『女神の継承』はちょうど最近、ソフト化に先駆けてU-NEXTでの独占配信が始まったが、監督のバンジョン・ピサンタナクーンのデビュー作も同様に独占配信されているので、この絶好の機会に紹介しよう。その名もズバリ、『心霊写真』だ。

「写真を撮られると魂を抜かれる」。このような迷信を聞いたことがあるだろう。現代において本気でそう信じ込んでいる人はいないだろうが、「写真には魂が写り込む」…かもしれないと考える人は少なくないのではないか? 本物か偽物かは置いておいて、誰もが一度は“心霊写真”を見た経験があるはずだ。本作の主人公は、ある女性を轢き逃げしてしまったカメラマンのタンと恋人ジェーン。その事故の後にタンが撮る写真には、我々にも見覚えがあるような白い光のモヤや女性の顔らしきものが写り込むようになってしまう。

心霊写真の歴史は、それこそ写真が発明された約150年前から始まっている。当時には、すでに多重露光(映画のオーバーラップのように複数の画像をひとつに重ねるテクニック)を用いた心霊写真が多く作られていた。タンの写真だって、カメラの故障や、何かの影がたまたまそう見えただけの可能性も十分ある。…だが、そうではない可能性もある。ホラーの世界では「○○だ」と断言できるものはそこまで怖くない。「○○かもしれない」という結論の出せない宙ぶらりんの状態こそが恐怖を呼び起こすのだ。現実に近いから。

雰囲気としてはやはりJホラーに近い。心霊写真自体は世界中にある概念とは言え、幽霊の念が映し出されている点では『リング』の貞子(またはそのモデルとも言われる実在の超能力者・高橋貞子)に通ずる部分があるし、『呪怨』の伽椰子を思い出すシーンもある。本作が制作された2004年当時の画質の悪さも不気味さを演出しており(非常に気味が悪い冒頭の映像が単なる映画会社のロゴだったのには思わず笑ってしまった)、日本要素という意味では富士フイルムの店舗やキヤノンのカメラも登場する。静かなシーンと何かが起こるシーンの緩急が見事で、分かっていてもトリハダが立つ。しかし時たまギャグもあり、中盤のいかにもタイらしいネタは背筋も凍る本作において数少ないチャーミングな場面のひとつだ。

撮影技術が向上し、誰でもスマホで高画質の写真を撮れるのが当たり前になった現代。加工のしすぎで逆に不気味な写真は増えたが、かつてのような心霊写真が撮られた話をとんと聞かなくなった。では本作も、“一昔前のネタ”にすぎないのか。否。『NOPE/ノープ』を見た方はご存じだろうが、映画は元々、連続した写真がパラパラ漫画的な映像に見えるというアイディアから始まっている。現在のほとんどの映画も、1秒間24枚の静止画の連なりにすぎないのだ。なぜ、そこに何者かの念が写り込んでいないと言い切れるのか。そして、なぜ幽霊や心霊写真と言えば女性のイメージが強いのか。本作はホラー映画であると同時に、「見ること」の罪の告発でもあるのだ。

本作は落合正幸監督により『シャッター』としてハリウッドリメイクされている。だが、ハリウッドホラーなのかJホラーなのか分からなくなっている同作よりも、やはり強くオススメできるオリジナル作品だ。

【ストーリー】
カメラマンのタンは、恋人のジェーンと一緒に友人の結婚式に参列した。その帰り道、道に飛び出してきた女性を車ではねてしまう。彼らはそのまま現場から逃げだしてしまった。翌日、タンは自分の撮った写真に女性の顔のようなものが写っていることに気づく。

【キャスト】
アナンダ・エヴァリンハム、ナッターウィーラヌット・トーンミー、アチタ・シカマナ 他

【スタッフ】
監督:バンジョン・ピサンタナクーン、パークプム・ウォンプム

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