『ベスト・フレンズ・エクソシズム』／「友達」は終わりと悪魔の予感。神より友情を信じて立ち向かえ！

2022.10.08

この映画は、つまり―

ホラーコメディ版『エクソシスト』
友達関係の問題は宗教では救えない!?
『エイス・グレード世界でいちばんクールな私へ』のエルシー・フィッシャー主演

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『ベスト・フレンズ・エクソシズム』（2022）

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文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「友達」とは、何と不吉な言葉なのだろう。そう思わないだろうか？　「友達(friend)」という言葉の中には、「終わり(end)」と「悪魔(fiend)」の字が隠れている。友情は儚く、昨日の友は今日の敵となるかもしれない。本作は、友人関係に悩んでいる方に特に刺さるであろうホラーコメディだ。

主人公のアビーとグレッチェンは親友同士だ。どのくらい親友かというと、互いに「ライラス(LYLAS)」と言い合うほど。LYLASとは「Love You Like A Sister(姉妹みたいに愛してる)」の頭文字を繋げたものだ。そしてまた、互いにとって相手はなくてはならない、ライナスの毛布でもある。だがグレッチェンは引っ越しを間近に控えており、アビーは内心友情が終わりを迎える可能性を危惧している。2人は他の友人が持つ湖沿いの別荘に遊びに行くが、よりによって湖ではなく森を散歩してしまったことで怪しげな家を見つけてしまう。ホラー映画で定番のキャビンではないものの、大した違いはない。そこで2人は怪奇現象に遭遇し、逃げ遅れたグレッチェンは悪魔に取り憑かれてしまうのだ。

それからグレッチェンは誰に対しても態度が悪くなり、品まで悪くなる。普段なら心にしまっていた方が得策な黒い本音を吐き、真っ赤な嘘も吐き、あろうことか大量の緑色の液体まで吐く。この“リバース”シーンからも明らかなように、本作は『エクソシスト』を意識している。ホラーの帝王ことスティーブン・キングは、『エクソシスト』は、いきなり性的におかしくなったり、反抗的な態度をとったりするようになった娘を見た親の恐怖を描いた作品と分析した。本作でも、グレッチェンは同様の状態になるが、アビーが自分を見捨てて逃げたと思い込んで自暴自棄になっているようにも見える(緑の液体はともかく)。

宗教的に厳しい学校のため、アビーから姉妹のように愛されているグレッチェンも、シスターからは軽蔑の眼差しを向けられてしまう。本作にはキリスト教の要素が所々に登場するが、基本的にそれらをバカにするように描かれているのが面白くもあり怖いところだ。学校にキリスト教のショーをしにくるのは脳みそまで筋肉でできている超マッチョの男集団だし、キリスト教は基本的に役に立たない。はじめ、アビーはグレッチェンがおかしくなった原因を暴漢に襲われたためだと思っているが、大人に相談してもまともに取り合ってもらえない。それどころか、その直前にLSDを試したことだけに食いつかれる。“そんな理由”で純潔を奪われるなど決して許されないのだ。親でさえその可能性を直視しようとしない。大事なのは娘より神だからだ。

気弱なアビーを健気に演じているのは、A24の青春ドラマ『エイス・グレード世界でいちばんクールな私へ』で主演を務めていたエルシー・フィッシャーだ。彼女は今年、同じくホラーの『悪魔のいけにえ ―レザーフェイス・リターンズ―』にも出演しており、今後もこの路線で行くのかもしれない。ホラー好きの筆者からするとウェルカムだ。…ところで、「友達(friend)」の中には、もうひとつ別の単語も見つけられる。そう、「見つける(find)」だ。あなたの周りにも、グレッチェンのようにグレちゃった友達などいないだろうか。そんな時は、第六六六感…もとい、第六感までも駆使して相手の問題の原因を見つけ出し、忘れてしまった相手の長所を思い出そう。例え離れ離れになっても、探し出せば良いのだ。そうすればズッ友だ。死が2人を分かつまで。