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【配信エンタ】『オブセッション 災愛』“ささやか”な願いが全てを変える。これは、紛うことなき殉愛の物語。

この映画は、つまり―
  • ・「一生のお願い」が本当に叶ってしまったら?
  • ・緊張と弛緩、緩急が生み出す恐怖と紙一重の笑い
  • ・「好いた水仙好かれた柳」

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◆配信中の注目作

『オブセッション 災愛』
配信先:U-NEXT ほか

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

様々な恐怖譚のひとつの原型と言えるW・W・ジェイコブズの短編『猿の手』。普通、人が何かを願う時、頭に思い浮かべているのは物事の“結果”のはずだ。その過程についてはすっ飛ばされている。当然だ。過程を考慮しなければならない現実から逃れたいだけであって、魔法を欲しているのだから奇跡的な結果さえ起きてくれれば万々歳なのだ。そんな人間側の都合を慮ってくれてか、猿の手のミイラはどんな願いも叶えてくれるが叶え方までは気にしない。そのアイテムは、作中で3回効果を発揮するだけで老夫婦の人生を完膚なきまでに破壊する。しかし、実際にそんな物が存在したならば、3回もの使用回数は必要ない。たった一度きりの、人生を一変させてくれる「一生のお願い」を叶えてくれればそれで良いのだ。

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Michael Johnston stars as Bear, Megan Lawless as Sarah and Cooper Tomlinson as Ian in OBSESSION, a Focus Features release.
Credit: Courtesy of Focus Features / © 2026 FOCUS FEATURES LLC

本作『オブセッション 災愛』に登場する“猿の手”は、「ワン・ウィッシュ・ウィロー」というおもちゃにしか見えない柳の枝だ。何度チャンスが巡ってきても仲の良い同僚のニッキーに想いを伝えられない奥手な、いや臆病な青年ベアは、情けない自身を嘲笑しながらふざけてこの猿の指を折る。「ニッキーが世界の誰よりも僕を愛してくれますように」と。すると不思議なことに、さっき見送ったはずの彼女が戻ってきて、家に誘ってくれる。彼女は、本当はベアに好意を寄せていたのか? それとも……。

たった数ドルのインチキなおもちゃに向けたお呪(まじな)い。それがベアの生活を一変させてしまう。ニッキーはベアに付きっきりで、少しでもベアが離れようものなら絶叫し、激昂する。酒かドラッグでもやっていた方がマシと思えるほどに常軌を逸している。ヤンデレを体現している彼女は、どこまでも空気の読めない言動でバカップルの片割れを演じているようだ。あまりの豹変ぶりに当のベアすら戸惑いを隠せないが、バカップルになるには人間がふたり要る。そしてニッキーは業を煮やし、決して自分からは好きだと言わないベアに詰め寄り……、いやいや、違う。本作で最も気にかけられるべきは、ベアなどではない。「呪い」によって人生を一変させられた、ニッキー……、または、かつてニッキーだった彼女以外にはいないのだ。

本作のカリー・バーカー監督はまだ20代ながら、『バックルームズ』のケイン・パーソンズ監督と同様に今年世界的な特大ヒットを飛ばし、一気に現代ホラー映画界のスターとなった。自分で願いを叶えた彼が描く願うことの闇は、そのアイディアの単純明快さの裏で複雑に広がっている。文字通り闇に溶けベアを見つめるニッキーをとびきりチャーミングに、そして可哀想な“チャームド”として演じたインディ・ナヴァレッテの演技は、ニッキーとニッキー(?)の人格をスイッチでオン/オフにでもしているかのようだ。何が本当で嘘か分からず、ベアと我々観客を困惑させる。バーカーが用いた、「ベアに気があるバージョン」と「気がないバージョン」のナヴァレッテの演技シーンを混ぜて繋げる編集や、シーンが続くと思わせて劇伴を突然ブツッと切るショッキングな演出にも混乱させられてしまう。思わず、笑って良いシーンなのだと錯覚するほどに。

バーカーはYouTuber、コメディアンでもあり、作中でベアの悪友イアンを演じている相棒クーパー・トムリンソンとともにチャンネル「that’s a bad idea」を立ち上げた。だからこそ、本作は極寒の恐怖と極悪な笑いに満ちている。「願い」なる一見素敵な想いは、あまりにも醜悪な、しかし誰もが持ちうる感情の裏返しでもあるのだ。愛と執着(オブセッション)が紙一重であるように。「好いた水仙好かれた柳」ということわざがある。相思相愛の男女を指しているのだが、これほど本作を的確に言い表している言葉もない。水仙は男性、柳は女性だ。水仙は英語でナルシッサス。つまり……。ニッキーが慟哭したのは、決して“柳を身に纏った”からではないだろう。本当に願いを叶えたいのならば、それに適う人間にならなければ。

【ストーリー】
想い続けた彼女の心を掴むため、青年は禁じられた願いに手を伸ばす。「ワン・ウィッシュ・ウィロー」 ――その願いの代償、膨張する“愛”に襲われ、想像を絶する惨劇に呑み込まれていく。

【キャスト】
マイケ・ジョンストン、インディ・ナヴァレッテ、クーパー・トムリンソン、メーガン・ローレス 他

【スタッフ】
監督:脚本・編集:カリー・バーカー

 

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