『ラスト・オブ・アス』お互いにとって残された「最後の一人」。傑作が静かに動き出す。

2023.01.21

この映画は、つまり―

超人気ゲーム「THE LAST OF US」の実写ドラマ化！
あまりにも完璧に再現された「ポストアポカリプス」の世界
ペトロ・パスカルがあまりにも“ジョエル”だった

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『ラスト・オブ・アス』（2022）

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文：大西D（ヒカセン兼業ライター）

まるで映画を観ているかのように引き込まれるドラマと、見事なまでに作り込まれた世界観で、今なお絶大な人気を誇るゲーム「THE LAST OF US」。そんな「THE LAST OF US」が実写化されると聞いて誰もが期待と不安を抱いただろう。もちろん実写化は見てみたい気もするが、そもそもゲームの時点でかなり映像のクオリティは高かったし、もはや実写化の必要を感じない程に、引き込まれるゲームだったからだ。そんなわけで前述のとおり、期待半分不安半分で第一話を見たのだが、その不安は杞憂だったと言っていい。

物語の大まかなストーリーはゲームに忠実だが、そこに至るまでの細かい部分はドラマオリジナルの展開だったりするので、思いのほか楽しめた。それもゲームの世界観に沿った物語を展開してくれる。中でも物語冒頭に来る、学者が語る人類の終焉がこの先の物語を見事に言い当てているし、これから起こることへの恐怖と期待を煽ってくれていい。ゲームでは冒頭で出番が終わってしまうジョエルの娘サラもオリジナルのシーンが足されており、この先の物語で、鑑賞者のメンタルにより大きく訴えてくるように仕組まれているのは、非常に良い。

あっという間に絶望のどん底に叩き落されたジョエルを演じたのは「マンダロリアン」や『ワンダーウーマン1984』でお馴染みのペトロ・パスカルだ。このペトロ・パスカルが最高で、どこからどう見ても“ジョエル”にしか見えないのだ。もちろんゲームでも大きなインパクトを与える、ポストアポカリプス世界の荒廃した街並みはこのドラマでも見事に再現されている。そしてそこにジョエル演じるペトロ・パスカルが存在することで、初めてこのドラマが「THE LAST OF US」になるのだ(主役だから当たり前だけど)。

唯一気になったとすれば、サラのキャラデザインが原作と大きく異なるところ。原作ではサラは白人の少女だが、本作では黒人として描かれている。こういう事を言うと人種差別的と誤解されてしまうかもしれないが、これを変更する意味があったのかは疑問だ。いわゆる“ポリコレ”に配慮した結果なのかもしれないが、やはり原作通りにして欲しかったというのが、ゲームをプレイした一ファンとしての正直な気持ちだ。

第1話ではジョエルとエリーが出会うところまでが描かれている。80分ほどの尺は、ドラマの1話分としては長いかもしれないが、それを全く感じさせない程の没入感があった。もちろんゲームを知らない人は楽しめると思うが、ゲームをプレイした人でも楽しめると思う。文字通り、お互いがお互いにとっての「最後の一人＝THE LAST OF US」。これから先ジョエルとエリーはどのような運命を巡るのか。ゲーム誌に残る傑作の実写化は、こちらも傑作になりそうな予感。早くも第2話が待ちきれない。

【ストーリー】
人体に寄生する菌類による感染症が発生。パンデミックから20年が経ち文明崩壊したアメリカでは、生存者による勢力争いが起こっていた。生存者の1人・ジョエルは、「ファイアフライ」の指導者・マーリーンから、身元不明の少女・エリーを隔離地域から脱出させる運び屋を任される。はじめは小さな仕事だったが、やがて壮絶な旅へ発展していき、2人は生き残りを懸け感染者がはびこるアメリカ全土を横断することに…。

【スタッフ】
脚本／製作総指揮：クレイグ・メイジン、ニール・ドラッグマン
監督：クレイグ・メイジン、ニール・ドラッグマン、ピーター・ホアー、ジェレミー・ウェッブ、ヤスミラ・ジュバニッチ、リザ・ジョンソン、アリ・アッバシ

【キャスト】
ジョエル役：ペドロ・パスカル
エリー役：ベラ・ラムジー
トミー役：ガブリエル・ルナ
テス役：アナ・トーヴ
サラ役：ニコ・パーカー
フランク役：マレー・バートレット
ビル役：ニック・オファーマン
キャスリーン役：メラニー・リンスキー
ライリー役：ストーム・リード
マーリーン役：マール・ダンドリッジ
ペリー役：ジェフリー・ピアース
ヘンリー役：ラマー・ジョンソン
サム役：キーヴォン・ウッダード
マーロン役：グレアム・グリーン
フローレンス役：エレーヌ・マイルズ
ベイカー役：アシュレー・ジョンソン