『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』この前日譚は『GOT』のリベンジとなるか？新たな女王の誕生を祝福せよ！

2022.08.27

この映画は、つまり―

『ゲーム・オブ・スローンズ』の約200年前を描く前日譚。本作から入っても良し！
『ゲーム・オブ・スローンズ』よりドラゴン増量！よりスケールアップ？
『ゲーム・オブ・スローンズ』を超え、そしてデナーリスを超える女王を描けるか!?

記事を見る

◆配信中の注目作

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』

U-NEXTで視聴する⇒こちら

文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

J・R・R・トールキン原作の叙事詩的作品『ロード・オブ・ザ・リング：力の指輪』の配信を来週に控えるAmazonプライム・ビデオに先んじて、すでにU-NEXTではもうひとつの叙事詩的作品が配信されている。ジョージ・R・R・マーティン原作の、あの一世を風靡したドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ(以下GOT)』の前日譚ドラマシリーズ、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』だ。

「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(ドラゴンの一族)」とは、『GOT』でエミリア・クラークが演じていたデナーリスらターガリエン一族のことを指す。前日譚なので時は『GOT』よりも約200年も遡るが、はじめにお馴染みの旋律が流れたところで、本作でも戦慄必至の継承者争いが起こることは容易に想像できよう。舞台となるのは、王ヴィセーリス1世が治めるウェスタロス大陸。…この王の名に聞き覚えがある方もいるだろう。ヴィセーリスとは、デナーリスの兄の名でもある。結局そちらのヴィセーリスは王となれなかったが、もし戴冠していればヴィセーリス3世と呼ばれていたはずだ…(ヴィセーリスはさらにもうひとりいる)。この時点で、今後一族の複雑な人間関係が展開されていく予感がする。

『GOT』の物語はターガリエン家が、一族の象徴であり、強力な武力でもあるドラゴンを失い没落した状態から始まるが、それは元はと言えば本作で描かれる継承者争いの影響があったからだ。ヴィセーリス1世は温厚だが、それ故に倫理感に欠けている弟デイモンの秘めたる野望に気づかない。デイモンは王の右腕という重要な役目を任されてこず、そのために兄への不満を溜め込んでいる。そして、王位は伝統的に男子が継ぐ決まりになっているものの流産が続き、王のもとには娘のレイニラしかいない。そんな中、デイモンがヴィセーリス1世の逆鱗に触れたために仲違いし、異例だがレイニラが王位継承者となる。そうして再び、玉座を巡るゲームが始まってしまうのだ。

ショーランナーは『GOT』のデヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスから代わっているが、シリーズの血はそのまま受け継がれている。ターガリエン家が血を絶やさないようにするがごとく、絶えず血が流され、今後はより残虐な鉄とドラゴンによる命の奪い合いが行われることになるだろう。琥珀色の松明の炎に照らされた暗い部屋で交わされる密約や裏切りもだ(ちなみに琥珀を意味するアンバー(Amber)という言葉は龍涎香という香料に由来する)。残念ながら、『GOT』は最終シーズンで失速したと言われており、竜頭蛇尾との評価を受けている。本作では数多くのドラゴンが登場するようだが、継承戦争が落ち着くところまでを描く場合やはりドラゴンも滅んでしまうのだろうか。

本作を『GOT』の弔い合戦として考えるのであれば、最も期待するのはやはりレイニラの成長だ。1話の時点ではレイニラは少女であるが、成長したレイニラはミリー・オールコックに代わってエマ・ダーシーが演じる。おそらく2話かそれ以降で時間が数年進むことになるのだろう。ターガリエン家の女王と言えばどうしても、気弱な娘から偉大な女王へと成長していったデナーリスが思い出される。レイニラもデナーリスと同じく、強い眼差しが印象的だ。本作は『GOT』のように画竜点睛を欠くような事態にはなってほしくない。レイニラにはデナーリスを上回る活躍を見せてもらいたいものだ…竜の雲を得る如く。