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【配信エンタ】『パッセンジャー』 肉体は魂の乗り物である。

この映画は、つまり―
  • ・いつの間にか旅人に憑く、招かれざる乗客(パッセンジャー)
  • ・旅人の守護聖人、聖クリストファー
  • ・車=家、自由のはずが袋小路に

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◆配信中の注目作

『パッセンジャー』
配信先:U-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

言葉は旅をする。日本社会の中で、意識もされないほど当たり前に使われている英語は数え切れないほどある。ベッド、スピード、ショック……あまりに浸透しすぎていて、日本語に直した方が違和感を覚えるほどだ。寝台、速度……衝撃? 「大きな精神的衝撃を受けて泣いてしまった」という文章は、意味的には何ら破綻していないがどこかぎこちなく聞こえるだろう。これらの場合はまだマシな方で、何という日本語に置き換えるべきか分からない場合すらある。逆に、アメリカ社会で使われている日本語もある。Bento(弁当)、Karoshi(過労死)に、買った本を読まずに積んだままにしておくいわゆる“積読(つんどく)”さえ、Tsundokuとして普通に使われているようだ。また、英語で「ホーボー(Hobo)」と呼ばれる者たちがいる。鉄道などにタダ乗りしながら場所を転々とした、旅と労働が合体したライフスタイルを選んだ者たちだ。これはあくまで俗説だが、日本語の「方々」が語源と言われることもある。

本作『パッセンジャー』の主人公カップルも、それまでとらわれていた固定の住居を捨て、自由なバンライフに一歩踏み出す。大型のバンに必要なものを全て積み込み、一か所に留まることがない。バン自体が走る家なのだ。カップルのマディとタイラーが、旅人の守護聖人である聖クリストファーに見守られながら新たな生活へと走り出してからしばらくして、ある自動車事故の現場に立ち会ってしまう。そこでマディは、人気のない深夜の道路に立つ謎の老人の姿を見る。その日から常に何者かの気配に悩まされ、バンも傷つけられ、命の危険を感じるようになるのだが……。

老人は事故で死んだ者の成れの果てなのか、また別の何かなのか。映画ではたいてい、不法侵入してきたソレと家の中で遭遇する羽目になるが、不幸にもマディらの家はすでに車だ。タクシードライバーが乗せた客が実は幽霊で、誰も座っていないシートだけがぐっしょり濡れていた、なんて怪談も聞くが、どうやらソレすらも旅をするらしい。老人は、夜間に現れる。ふと停車した側にある木々の向こうに。細く枯れゆく道路の先に。闇の中で視認できるのは、懐中電灯と車のライトが照らす範囲だけだ。葉っぱのざわめきはまるで家鳴り、車外であっても家の中と錯覚させるほどの閉塞感で、我々まで呼吸がしにくくなる。このあたりは『ジェーン・ドウの解剖』や、それこそ招かれざる乗客について描いた『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』を撮ったアンドレ・ウーヴレダル監督の手腕が光るところだ。……いや、車外にまで付いてくるということは、やはり車ではなく、人間に憑いている存在……?

インド哲学などにおいて、「肉体は魂の乗り物」であるとする表現が古くから使われている。また、聖クリストファーに関しては以下の逸話が語られている。「彼は最も強い者に仕えたいと思い、王さえも恐れる悪魔に仕えようとした。しかし、その悪魔でさえ十字架を恐れた。時が流れ、激流の川の渡し守となった彼はある日少年を背負ったが、これまでの誰より重かった。その少年こそ、世界中の罪と苦しみを背負ったイエス・キリストだったのだ。それから、彼は『クリストファー』と名乗るようになった」。クリストファーとは、「キリストを運ぶ者」という意味だ。つまり、ある意味キリストの乗り物だったわけだ。その彼に見守られたはずのマディたちであっても、望まぬ地へ“旅立って”しまうのか、それとも……。かの偉大な旅人はこう言っている。「家より素敵な場所はない」と。

【ストーリー】
マディとタイラーのカップルは、住んでいた部屋を手放し憧れのバンライフの旅に出た。6週間が経過し新生活にも慣れた頃、マディはタイラーからのプロポーズを受ける。しかし、夜間の交通事故を目撃しバンを停めたことで得体のしれない存在に付きまとわれるようになり、幸せの絶頂から地獄のどん底へと転落していく……。

【キャスト】
ジェイコブ・スキピオ、ルー・ロベル、メリッサ・レオ 他

【スタッフ】
監督:アンドレ・ウーヴレダル

 

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