MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

【今週公開の注目作】『ナイトボーン -夜哭-』 その身体に流れる血は何色だ。赤か、緑か。

【今週公開の注目作】

『ナイトボーン -夜哭-』
2026年8月28日(金)より全国順次公開
公式HP:
https://gaga.ne.jp/nightborn_NOROSHI/  

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「子どもは親を選べない」。人によっては耳が痛いかもしれないが、それは紛れもない真実だろう。子どもから「産んでほしい」と頼んできたわけではない以上、親が子どもを持とうとするのは親側のエゴだ……というのは、あまりにも厳しい言い方になるだろうか。いかに他の動物とは一線を画すと必死に自らに言い聞かせている人類であっても、種の繁栄という生物の最大目的からは逃れられないのだから。……いや、一夫多妻のハーレムが作られるサルの世界では、支配者が変わった時に新たなボスが前のボスの子どもたちを皆殺しにするらしいではないか。しかもこれはサルに限った話ではなく、例えばライオンや、あろうことか一般的に攻撃的とは思われていないイルカにも見られると。要するに、種自体の繁栄が目的ではなく、“自分の”子孫の繁栄が目的なのだ。未だに殺人や戦争を止められない人類も全く同じかもしれない。そうであれば、子どもを持とうとするのはやはり親のエゴなのか。

エゴだとしても、これもまた真実だ。「親も子どもを選べない」。そのために起こる悲劇は、度々ホラーの大きなテーマとして取り上げられてきた。本作『ナイトボーン -夜哭-』は、新婚夫婦が授かったどこかおかしな赤子と、夫婦の関わり方の絶望的なまでの違いを描いている。赤子……というより、“緑児”と呼ぶ方が適切だろうか。その子は夫婦が交わった、深く暗い古の森の神秘を受け継いでいるかもしれないからだ。人間の子にしては毛深く、明らかに力が強すぎる。腕を掴まれれば皮膚が裂け、母乳をやろうとすれば噛みちぎられそうになる。日光に当ててしまうと皮膚が焼け、白い母乳は飲もうとしない。噛み跡から流れ出る赤色がソレの好物だ。だがこの異質さは、自ら腹を痛めて産んだ母サーガにしか気付かれることがない。仕事で日中留守にする父ジョンと、普通の子しか育てた経験のない周りの母親たちは皆、ソレを自然に可愛がる。サーガこそが産後うつでおかしくなってしまったのだろうか?

監督は、デビュー作である前作『ハッチング -孵化-』が高く評価されたフィンランド出身のハンナ・ベルイホルム。『ハッチング』は、表面的には“幸せな家族”の中で苦しむ少女が拾う謎の卵と、それから孵った生命の奇妙な関わりの話だった。両作品とも共通して、産まれてしまった得体の知れないモノと母性を描いている。サーガの子は、北欧諸国に神話として、民話として伝承されてきた存在、トロールとの関連を感じさせるが、本作ではもうひとつの神話が絡められている。即ち、“母性神話”だ。

サーガは周りの人間から、“母親”にまつわる様々な、そして「あるある」な話を何度も聞かされる。『ハリー・ポッター』シリーズのロン・ウィーズリー役で知られるルパート・グリントが夫ジョンを演じているが、見るからに人の良さそうな彼だからこそ、サーガの絶望はさらに深まっていく。観客すら、彼女の置かれた状況を理解しつつも、常軌を逸したような言動を取り始める彼女に対し共感を拒否し始めるだろう。しかし、さらに観客を突き放してくるラストは、意外にもある種の爽やかさすら感じさせる。森を吹き抜ける自由なそよ風のように。

【ストーリー】
子供を望む新婚夫婦サーガとジョンは、理想の子育てを夢見て、サーガの故郷であるフィンランドの森深い田舎町へと移り住む。北陸神話の気配が今なお息づく、神秘的な森に抱かれながら結ばれた二人は、やがて待望の子供を授かる。愛する夫と我が子との幸せな暮らし――サーガは、その未来を信じて疑わなかった。あの産声を聞くまでは――。

「この子は、“何かがおかしい”」

生まれた我が子に拭いきれない違和感を覚えるサーガ。不安は次第に恐怖へと姿を変え、やがて狂気へと暴走していく。そしてサーガが辿り着く、恐るべき真実とは――。

【キャスト】
セイディ・ハーラ、ルパート・グリント 他

【スタッフ】
監督:ハンナ・ベルイホルム
脚本:ハンナ・ベルイホルム、イリヤ・ラウツィ

 

関連記事

『ヒトラーの毒見役』 夫たちはその男の手足となった。妻たちはその男の胃袋となった。
『プライベート・ケース』原因ってな、200種類あんねん。
『デスストーカー』 血湧き肉躍る戦い!血吹き肉剥き出る痛い!大きな少年のための特撮がここに!
『スカーフェイス【4K版】』 この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば。
『アウトウォーターズ 裂けた砂漠』 喉が渇く。肌が焦げる。汗が止まらず、血は枯れる。

バックナンバー