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『マトリックス レザレクションズ』 確信、革新、核心、そして…。赤いピルを飲む覚悟を決めろ。

◆今週公開の注目作
『マトリックス レザレクションズ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

筆者がリアルタイムで『マトリックス』に触れるのは、今回が初めてだ。1作目公開当時、劇場で鑑賞した方の心に最初に思い浮かんだ言葉は、きっと「何だこれは!?」だっただろう。推測に過ぎないが、確信をもってそう言おう。今回筆者も強くそう思ったからだ。“真実”の衝撃はとてつもなく重い。劇場へ行こうかどうか迷っている読者のガイドになりたいが、正直とても内容を理解しきれたとは言えないので、ネタバレを避けつつ直感に従って言葉を紡ぐことにする。

『マトリックス』は、初めから「メタ」な物語だった。メタには「高次の」という意味がある。2次元に生きているゲームキャラクターを3次元に生きている我々が「プログラムだ」と認識するように、またはその我々をさらに高次元に生きている何者かがせせら笑うように…物事を俯瞰的に見つめることから、つまりは「この世界は現実なのか」という問いから始まった映画だった。

では、前作『マトリックス レボリューションズ』から18年ぶりの続編が公開される今の状況は熱狂に値するものではあるが、それを冷静にメタ視点で見てみよう。こう思っている方も少なくないと思われる。“『マトリックス』は3部作として完結していたはずだ”。“そもそも、主人公ネオは前作で死んだはずだ”。“最近数十年ぶりに続編が作られる映画が多いが、本当に必要なのか“? 非常に真っ当な意見だ。シリーズを監督してきたウォシャウスキー姉妹の片割れ、妹のリリーですらも企画に新鮮さを感じられないとして本作に関わっていないほど。しかしそんなこと、今回単独監督を務めた姉のラナが一番分かっているのだ!

劇中では、こちらの心がハッキングされているかのように、観客の思いがそのままセリフとなって飛び交う。過去作の印象的な場面は、ネオの記憶や、記録されたデータとなって再生される。まるでデジャブだ。『レボリューションズ』の世界から20年が経ち、最盛期を過ぎながらも変わらず済世を期待されているネオ。1作目ですでに仮想世界マトリックスを相対化しているラナは、本作では『マトリックス』シリーズそのものを相対化してみせる。観客が求める斬新なアクション、カンフーはもちろん、異常な深度の哲学を加味し、しかし噛み砕いて説明することなく、これまで以上の震度で観客を揺さぶる。革命(レボリューション)を経ての、さらなる革新だ。

死んだはずのネオことトーマス・A・アンダーソンは、なぜかまたマトリックスの中で普通に暮らしている。『不思議の国のアリス』よろしく、新たな“白ウサギ”バッグスに導かれ、ネオは忘れていた過去を思い出していく。そして同じく死んだはずのヒロイン、トリニティーと瓜二つの女性ティファニーと出会う…というのが簡単なあらすじではあるが、細部に目を向ければ、何回も観なければ分からないほど難解かもしれない。しかし、シリーズを追いながら、キャラクターたちと同じだけ老いてきた方にはよくお分かりだろう。結局、『マトリックス』の核心は、ネオとトリニティーのラブストーリーなのだ。そこさえ忘れなければ問題ない。

本作は、「各」人の「心」にそれぞれ全く違う形で刻み込まれるはずだ。個人的意見を述べるなら、ラナがあえてこのタイミングで本作を手がけたのはおそらく、想像が新世界を創造しうるという希望にかけたからだろう。マトリックスが現実世界に影響するように、2次元メディアの映画が3次元の我々を変えるように。過去作では雨の場面が多く登場した。本作で印象的なのは晴れた空だ。そう、前作を完成させた後、晴れて女性となったラナが成し遂げたいのはきっと、我々の頭上に広がる蒼穹に“虹”をかけることなのだ。

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共感シアター×MOVIE MARBIE「どう見まSYO!」#3
映画ライターSYOが18年ぶりに動き出すの新章をどう見まSYO!

【ストーリー】
目に見えるものが真実とは限らない。あなたが疑ったこともないこの[世界]は、本当に[現実]なのか?未来を選ぶとき、あなたの世界は一変する。何を信じるべきか、自分の目で見極めろ。全世界で空前の社会現象を巻き起こしたアクション超大作の新章、ついに登場。もし世界がまだ「仮想世界=マトリックス」に支配されていたとしたら、もし主人公ネオが救世主ではなかったとしたらーー!いま、新たな未体験の世界に飛び込む覚悟はあるか?

【キャスト】
キアヌ・リーブス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット・スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、プリヤンカー・チョープラー、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティーナ・リッチ ほか

【スタッフ】
監督:ラナ・ウォシャウスキー
(C) 2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

公式サイト:matrix-movie.jp
Twitter:@matrix_movieJP #マトリックス #マトリックス復活

12月17日(金)全国公開

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