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『マトリックス レザレクションズ』公開記念!ムービーマービー編集部が『マトリックス』への思いを語る!<第2回>「物語の“よみかえ”を教えてくれたあの作品が、今ここに“よみがえ”る!」

いよいよ今週末より17年ぶりのシリーズ最新作『マトリックス レザレクションズ』が公開となります。今やSF映画の金字塔とも言えるマトリックスシリーズの最新作ということで、シリーズのファンはもちろん、多くの映画ファンも一目置く、この冬一番の話題作であることは間違いないでしょう。

しかし100%楽しみかと言われると、そこはまたそれぞれ違う思いあるでしょう。「なぜ今になって続編なんか?」、「あの時完結したはずでは?」、「なぜローレンス・フィッシュバーンは出ない?」こんな疑問を抱くファンは多いはず。それに、古参の映画ファンが「映像革命をも新した傑作」と思う一方で、若い世代にとってはそもそも『マトリックス』という作品自体を知らない人も多いはずです。一口に『マトリックス』と言っても、世代や環境によってこの最新作に対する想いは様々でしょう。

そこで今回、ムービーマービでは最新作『マトリックス レザレクションズ』の公開に際して特別企画を実施。編集部20代〜50代のライターが、それぞれが胸に抱く『マトリックス』への想いを語ります!

第2回:「物語の“よみかえ”を教えてくれたあの作品が、今ここに“よみがえ”る!」

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

僕にとって、『マトリックス』は長らく“忘却”の物語でした。1作目に出てくる裏切り者のサイファーが、人間が機械の養分と化している現実世界の救いのなさに嫌気が差して、宿敵エージェント・スミスに「これまでの俺の記憶を消して、マトリックスに戻してくれ」と頼みますね。あれは関係ありません。単純に、映画の詳しい内容を覚えておくことができなかったのです。本作のヒロイン、トリニティーを演じるキャリー=アン・モスが出演した同時期のクリストファー・ノーラン作品『メメント』が「思い出せ、忘れるな」という意味のタイトルであるにもかかわらず。

最初に『マトリックス』に触れた時のことは記憶もありません。公開された1999年には小学校低学年ですから、きっと後からVHSかDVDで観たのでしょう。もちろん、ネオ(キアヌ・リーブス)が仰け反って銃弾を避けようとするシーンは覚えていましたが、結局避けきれず数発食らうことは忘れていました。分かりやすくカッコ良いところだけが記憶に残っていたのです。だんだん『ドラゴンボール』化していく派手なバトルはともかく、その哲学的なストーリーを理解するには幼すぎました(今でも理解しきれたわけではないですが)。今回、18年ぶりの続編『マトリックス レザレクションズ』の公開を間近に控えたこのタイミングで、おそらく子どもの時以来となる3部作全ての一気見を敢行しましたが、以前とは違う全く新しい世界が広がっていました。

そもそも、僕が初めて『マトリックス』を観た頃は、監督は「ウォシャウスキー兄弟」と呼ばれていました。それから「ウォシャウスキー姉弟」になり、今では「ウォシャウスキー姉妹」に。双子ではないのですが、どちらもMtF(身体的に男性として生まれたが、女性として生きたいと希望する者)のトランスジェンダーだったのです。考えてみれば、彼女らの監督デビュー作『バウンド』は、主人公が同じセクシュアル・マイノリティであるレズビアンの物語でした。そしてその後、ドイツ人監督トム・ティクバと共同で僕のオールタイム・ベストでもあるSF大作『クラウド アトラス』を作り上げます。

『クラウド アトラス』は6つの時代を縦横無尽に行き来するという実験的な構成の映画ですが、一番重要なのはそこではありません。『マトリックス』の時からある東洋思想的な要素として輪廻転生が用いられており、各キャラクターの生まれ変わりが各時代に登場します。同じ役者が生まれ変わり後も演じていますが、前世とは人種も、そして性別も違っていたりするのです。魂(心)レベルでは、人種も性別も関係ないのです。日本人なら、来世でどんな人物に生まれ変わりたいか一度は考えたことがあるでしょう。僕も同様なので、その設定はすんなり受け入れられましたが、観た後にウォシャウスキーが姉妹となったことを知り、膝を打ちました。「どうりで!」と。

『マトリックス』の話に戻りましょう。はじめネオを導くモーフィアスは、示唆的なセリフをいくつも喋ります。「君はずっと感じてきた。“何か間違ってる”。“はっきりとはしないが間違ってる”。」、「システムは敵だ」。もちろん、劇中では幻想の世界にすぎないマトリックスに対して言われており、多くの観客は自身を縛り付ける現代社会を思い浮かべるわけですが、ウォシャウスキー姉妹にとっては心の叫びのようなものだったのかもしれません。また、こういったセリフもあります。「心を解き放つんだ」。『マトリックス』におけるこれらのキーワードは、セクシュアル・マイノリティだけでなく、どのような観客にも響く力を持っています。「理解しがたい」と思われることも多いセクシュアル・マイノリティとマジョリティを繋ぐ、シンプルだけれどパワフルな言葉たち。これこそが『マトリックス』最大の功績と言っても過言ではありません。

さて、僕は小学校低学年の頃と比べると、それなりに知識は増えてきました。今ならば、エンディング曲を歌うRage Against The Machineのバンド名が「機械(または組織)への怒り」、曲名『Wake Up』が「目覚めよ」という意味なのも分かります。新作タイトルの「レザレクションズ」とは「復活」のこと。『マトリックス』では、童話とは男女が逆転し、死にかけたネオはトリニティーのキスによって蘇ります。今回は妹のリリーはおらず、姉のラナ・ウォシャウスキー単独監督作ですが、脚本に『クラウド アトラス』原作者のデビッド・ミッチェルが参加しています。新たに“生まれ変わった”『マトリックス』は、忘れがたい、どのような予想外の形で復活するのでしょうか? 分かりませんが…でもきっと、魂は変わっていないのでしょうね。

【関連記事】

第1回:「いつも大きな作品の影に隠れていた『マトリックス』という映画」

第3回:「マトリックス避けと日本文化の影響」

第4回:「1999年、『マトリックス』を目撃したあの夏。」

第5回:「人生劇場から、宣伝劇場へ」

 

 

【作品紹介】
目に見えるものが真実とは限らない。あなたが疑ったこともないこの[世界]は、本当に[現実]なのか?未来を選ぶとき、あなたの世界は一変する。何を信じるべきか、自分の目で見極めろ。全世界で空前の社会現象を巻き起こしたアクション超大作の新章、ついに登場。もし世界がまだ「仮想世界=マトリックス」に支配されていたとしたら、もし主人公ネオが救世主ではなかったとしたらーー!いま、新たな未体験の世界に飛び込む覚悟はあるか?

【キャスト】
キアヌ・リーブス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット・スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、プリヤンカー・チョープラー、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティーナ・リッチ

【スタッフ】
監督:ラナ・ウォシャウスキー

公式サイト:matrix-movie.jp
公式Twitter:@matrix_movieJP #マトリックス #マトリックス復活

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12月17日(金)より全国公開!