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【配信エンタ】『プロジェクト・ヘイル・メアリー』宇宙では、希望までもが等速直線運動をする。

この映画は、つまり―
  • 地球滅亡の危機なのに、全編ギャグばかり!?
  • 生きて帰れない旅にこそ、普通の人生で得られない光景がある
  • そして宇宙の果てにこそ、運命の相手が……

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◆配信中の注目作

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
配信先:AmazonプライムU-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ディザスターSF映画では、人類が滅亡するシナリオがいくつも描かれてきた。『アルマゲドン』『ディープ・インパクト』のように隕石や彗星が地球に激突したり、『ザ・コア』のように地球の自転が突然止まった影響で各種災害に見舞われたり……。『インターステラー』では、ダストボウル(巨大な砂嵐)による農業の壊滅が人類を死に追いやっていた。これらは地球規模での危機だが、さらに広い視点で見た時、(『ザ・コア』もそうだが)フィクションでしかありえない滅亡の仕方が存在する。それは、先に太陽が死に、そのついでに地球が死ぬパターンだ。

実際には、太陽の寿命は残り50億年ほどと言われているので、このパターンでの人類滅亡は当分の間は考えなくて良い。むしろ、オゾン層が消失し紫外線の悪影響が増大する可能性などの方がよっぽど現実的だろう。とは言え、もしも太陽の力がなくなったとすると地球はすぐに壊滅的なダメージを受けるので、SFで扱うにはもってこいの題材だ。筆者の好きなキリアン・マーフィー主演の『サンシャイン2057』でも、“なぜか”太陽が弱った近未来で致死的な氷河期を回避するため、宇宙飛行士たちは太陽へ向かって飛んでいく。ディザスターSF映画はいつも絶望とともに始まるが、同時にひどく楽観的と言える。大抵、現実には人類をオウンゴールで滅亡させる核爆弾こそが希望になるからだ。そして、同作もその例に漏れない。ただ、同作のダニー・ボイル監督はインタビューで、リアリズムを重視したSFにユーモアは合わないと語っている。……ところが。

本作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』でも、やはり衰えた太陽のせいで地球は滅亡の危機に瀕している。しかし、聞いたことも考えたこともない原因によってだ。何と、太陽表面で増殖している微生物によってエネルギーが食われ、そのせいで太陽が弱っていたのだ! 体に侵入した細菌などを食べる白血球の一種をマクロファージというが、本作の微生物は「アストロファージ(星を食べるもの)」と呼ばれている。リアリティのあるディテールを下敷きに、宇宙という非常にマクロな舞台で、非常にミクロな原因にフォーカスしていくのだ。観測された太陽から金星に伸びる赤外線の帯を手がかりに、太陽以外にも“感染”していくアストロファージの根絶を目指し、ライアン・ゴズリング演じるしがない中学校の科学の先生、グレースは成功しても生還できない決死のミッションに旅立つ。それなのに、なぜかそこには悲壮さも、ましてや勇壮さもない。あるのは宇宙の壮大さと、……何だろう。壮年? そして、ダニー・ボイルが否定したユーモアの海だ。

原作者のアンディ・ウィアーは、火星に独り取り残されたマット・デイモンが70年代ディスコ・ソングを聴きまくりながらノリノリで生き延びる超ポジティブSF『オデッセイ』の原作も書いている(奇しくも、その後デイモンはクリストファー・ノーラン監督の新作『オデュッセイア』に出演)。ストーリーはもちろん、半歩間違えれば命を落としそうなピンチの連続だ。それにもかかわらず、いまいちシリアスな雰囲気にならない。幸運にも、宇宙には希望を止める空気の抵抗が存在しない。ゴズリングの軽~い雰囲気も相まって、何だかんだ何とかなりそうな予感を漂わせつつ進んでいく。彼の役名は女性名に聞こえるが、「グレース」とは神の恩寵という意味だ。「ヘイル・メアリー」は元々聖母マリア様への祈りの言葉であり、アメフトで試合終了間際に放つダメ元のロングパスのこと、つまり一か八かの神頼み。まず上手くいかない、しかしやらなければ皆死ぬという最悪の状況において、その祈りが届いたのか、その捻くれたユーモアセンスが気に入ったのか、どうやら神はグレースに微笑んだ。そして思わぬ“相棒”を遣わした。人類と同じ危機に見舞われている宇宙人だ!

『インデペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』のように人類を駆逐しようとする宇宙人もいれば、『E.T.』のような友好的な宇宙人もいる。本作の場合は後者で、『メッセージ』を思わせる他言語コミュニケーションのパートに上映時間の多くが割かれている。地球上でも各国の人間は皆協力し合っており、さすがに何の葛藤もないとは言わないがやはり楽観的だ。見たことのないカラフルな惑星、ユニークなデザインの宇宙船、目を奪われる様々な現象に、片道切符の旅もそう悪くない気にさせられる。“赤い糸”を辿った結果、宇宙の果てに一生に一度の相手との“コンタクト”までもが待っているかもしれないのだから!

【ストーリー】
未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、数十年後に地球は氷河期に突入する。原因解明に向けて宇宙に送り込まれたグレースは、科学の知識だけを武器に80億人の命をかけた人類最後の賭けに挑むが、この危機を救おうとする小さな相棒と出会い、共に愛する故郷を救うため宇宙の超難題に挑む。

【キャスト】
ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー、ケン・レオン、ライオネル・ボイス、ミラーナ・ヴァイントゥルーブ、ジェームズ・オルティス 他

【スタッフ】
監督:フィル・ロード&クリストファー・ミラー

 

★配信エンタの過去記事はこちら

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『コンパニオン』運命を、“愛”を超えろ。真の“わたし(I)”になるために。

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