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『オオカミ狩り』ヒトの群れが血の海に沈む。この船は血の海で沈む。

この映画は、つまり―
  • 海の孤舟で警察VS凶悪犯のデスマッチ!
  • 使った血糊は2.5トン!? 画面が真っ赤!
  • 所詮人間なんて……

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◆配信中の注目作

『オオカミ狩り』(2023)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画の中でとってはいけない行動はたくさんある。車の運転中に真横を向くとか、山荘でイチャつくとか、トドメを刺さずにべらべら喋り続けるとか、とにかくたくさんある。それらのことごとくが、行った者の死亡フラグとなる。彼らは物語の終わりまで生き残るのを諦め、白旗を振っているも同然なのである。そして本作『オオカミ狩り』でも、NG行動のせいで大変な事態が引き起こされてしまう。それは「護送」だ。

冒頭、フィリピンで捕まった韓国人の凶悪犯たちが船で韓国へ送られることになる。もちろん劇中の警察は自分の仕事をしているだけなのだが、ホラー・スリラー映画で犯罪者を護送すると十中八九逃げられる。2018年版『ハロウィン』でも、人間を超えて恐怖そのものである殺人鬼マイケル・マイヤーズは護送中に脱走し、街を赤く染め上げたではないか。本作の犯罪者たちも人でなしばかりで、案の定警察が気づかぬうちに手錠を外し、海の真ん中にぽつんと浮かぶ貨物船はたちまち戦場と化す。さあ、どちらが生き残るのか。一体誰が生き残るのか。

本作において、銃で撃たれて即死なら大分マシな方で、大体はナイフでめった刺しか、鈍器でガツンだ。この船の中での死に尊厳などない。原型を留めたまま死ねるとは思わない方が良い。誰かの攻撃が当たればすぐ血飛沫が……いや、そんな表現は生ぬるい。血の噴水が噴き上がり、そこはすぐに血溜まりに。どこもかしこも血の海で溺れそうだ。どうやら2.5トンを超える血糊が使われているらしく、全て集めれば有名な『シャイニング』の血の洪水すら再現できるのではないか? もはや法の機能しないこの場において、生き残れるのはケダモノだけ……。

……と思ったら中盤、想像もしていない登場人物が船に乗っていたことが明らかになる。そこで我々もやっと気づくのだ。前半は前菜に過ぎないのだと! 今まで殺し合っていた彼らは、どれだけ凶暴であったとしても所詮はヒト。対して、闖入者はオオカミ(もちろん文字通りの意味ではない)。ヤツの前では、凶悪犯ですらも自らの血に染まった赤ずきんちゃんでしかない。ここで、本作のジャンルが斜め上にシフトする。「そういうリアリティの作品だったのか!」とやっと分かるわけだ。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でも主人公マックスが言われていたが、その後は、ヒトはただの血液袋にしか見えなくなる(これは文字通り)。

正直言って人生に有意義なものは何ひとつ得られないが、アドレナリンで見ているこっちまでおかしくなる、そんなスプラッターホラーを求めているならこれしかないと言える。火照った体に水代わりに血を浴びて涼もうぜ! ヒャッハー!

【ストーリー】
2022年、フィリピン マニラ。現地で逮捕された犯罪者たちを乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”が釜山港に向けて出航した。長年、凶悪犯罪を担当してきたベテラン刑事の約20人が護送官として乗船。釜山では、海上交通管制センターで海洋監視システムを設置。万全な体制により、韓比共同護送計画(プロジェクト名:オオカミ狩り)が進められた。監獄化した貨物船には、13名に対する殺人および殺人教唆、強姦罪に問われ第一級殺人犯として国際手配されたジョンドゥ、特殊暴行17件で赤手配者のドイルなど極悪非道な犯罪者たちが収容されていた。その夜、密かに脱走を企てていたジョンドゥと刑事として紛れ込んでいたジョンドゥの一味により暴動が勃発。船上は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる。仲間以外は誰であろうと容赦なく殺める犯罪者たちと彼らに立ち向かう警察。そこに、眠っていた“怪人”が目を覚まし、熾烈な戦いが幕を開ける。地獄の航海から生き残るのは誰か……。

【キャスト】
ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ 他

【スタッフ】
監督・脚本:キム・ホンソン

公式サイト:https://klockworx-asia.com/pwh/

 

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