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『四月になれば彼女は』恋愛も、継続は力なり。愛を終わらせたくなければ、終わらないように努力しよう。

◆今週公開の注目作

『四月になれば彼女は』

文:Nami(求めるもの:推しの最新作情報)

四月という季節は、筆者の心をドキッとさせる。出会いがある喜び、別れがある悲しみ、新たな環境に身を置く不安、新しく何かが始まる期待。まるで新しい自分に生まれ変わったかのように、様々な変化が訪れる。そんな感情が最も揺れ動く四月は、月日が流れるスピードが他の月と同じだとしてもどこか特別だ。本作における四月も、起点となる出来事が起こる特別な月だ。

物語は、精神科医の主人公・藤代(佐藤健)のもとに、かつての恋人・ハル(森七菜)から一通の手紙が届くところから物語が始まる。手紙には10年前の初恋の記憶が書かれており、その後もウユニやプラハ、アイスランドなど世界各国から手紙が届き続ける。時を同じくして、藤代は現在の婚約者・弥生(長澤まさみ)との結婚を控えていたが、突然弥生は姿を消してしまう。ハルはなぜ、今になってこのような手紙を届けたのか。弥生は一体、どこへ消えてしまったのか。物語が進むにつれて繋がっていく二つの謎に翻弄される12ヶ月を描いたストーリーだ。

本作で描かれるのは、”時間とともに変化していく愛”である。「継続は力なり」という言葉があるように、努力を継続することで成功に繋がっていくことが沢山ある。反対に、努力を継続しなければ理想からどんどん遠ざかっていく。恋愛においてもそうなのではないか?と我々にやんわりと残酷に問いかけてくるのが本作だ。本作に触れると、人間ってなんて面倒な生き物なのだろうと思う。なぜ人は、失ってから大切さに気づくのだろう。なぜ気持ちは一つなのに、言葉を濁してしまうのだろう。なぜ愛しいものに出会うと、同時に恐れてしまうのだろう。登場人物の心情に触れるたび、自分に潜む矛盾した気持ちに気づいていく。

「愛を終わらせない方法、それはなんでしょう」
誰かを大切に想った瞬間から始まるのは、愛おしい時間ではなく終わりに向かっていく時間なのかもしれない。と、本作に触れて思う。恋愛が終わらないようになんて、恋愛をしている間はなかなか思えないし思いたくもない。けれど、終わらせない方法を探して努力していかなければ恋愛は続かないのかもしれない。なんだかとても残酷な作品のような書き方をしてしまったが、これこそが人間の本質であり、面倒くさいところであり、愛おしいところでもあるのだとこの映画は気づかせてくれる。

最後に、佐藤健の凄さを語りたい。というのも、筆者は佐藤健の演技がとても好きだ。初めて彼の演技に震えたのは、2015年に放送されたTBS系日曜劇場『天皇の料理番』だ。筆者は、坊主姿で「どやっちゃー!」と泣き叫んでいる彼の姿に度肝を抜かれた。キラキラとした王道イケメンの路線を走っていた印象が、この場面を見て実力派俳優という印象にすっかり変わったのだ。イケメン枠の俳優が実力派への階段を登り始める過程はこれまでも多くの俳優で見てきた。しかし、佐藤健の変化はこれだけではなかった。それは、2020年に放送されたTBSドラマ『恋はつづくよどこまでも』への出演だ。「ここに来てまた王道にいくんだ!」とかなり驚いた。そして社会現象を巻き起こすほどの人気ドラマになったことで、佐藤健の本気を感じた。彼は実力派俳優でありながら、イケメン枠を譲る気も一切ない。まさに二刀流の表現で魅了し続ける俳優なのだと確信した。そんな佐藤健の王道的なカッコ良さと表現で魅せる実力を、本作で存分に堪能してほしい。

【ストーリー】

「あのときのわたしには、自分よりも大切なひとがいた。
それが、永遠に続くものだと信じていた」

四月。精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、
かつての恋人・伊予田春(森七菜)から手紙が届く。
“天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、十年前の初恋の記憶が書かれていた。
ウユニ、プラハ、アイスランド。その後も世界各地から届く、春の手紙。

時を同じくして藤代は、婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた。
けれども弥生は突然、姿を消した。
「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」
その謎掛けだけを残して――

春はなぜ手紙を書いてきたのか?
弥生はどこへ消えたのか?
ふたつの謎はやがて繋がっていく。

「あれほど永遠だと思っていた愛や恋も、なぜ、やがては消えていってしまうのだろう」

現在と過去、日本と海外が交錯しながら、愛する人の真実の姿を探し求める“四月”が始まる

 

【キャスト】
佐藤健、長澤まさみ、森七菜、仲野太賀、中島歩、河合優実、ともさかりえ、竹野内豊

 

【スタッフ】
原作:川村元気「四月なれば彼女は」(文春文庫)
監督:山田智和
脚本:木戸雄一郎、山田智和、川村元気
撮影:今村圭佑
音楽:小林武史
主題歌:藤井風「満ちてゆく」(HEHN RECORDS/UNIVERSAL SIGMA)
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:東宝
公開:2024 年3月22日(金) 全国東宝系にて公開
©2024「四月になれば彼女は」製作委員会

 

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