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『ザ・ウォッチャーズ』もはや安定の不穏さ。画面いっぱいにぶちまけられるのは“シャマランの血”!?

◆今週公開の注目作

『ザ・ウォッチャーズ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画監督の子が映画監督になるのは、そう珍しいことではない。フランシス・フォード・コッポラの娘ソフィア(『ロスト・イン・トランスレーション』)、アイバン・ライトマンの息子ジェイソン(『ゴーストバスターズ/アフターライフ』)、ローレンス・カスダンの息子ジェイク(『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』)……。ちなみにリドリー・スコットの子どもたち、長男ジェイク(『ロストガール』、クリステン・スチュワート主演)、次男ルーク(『モーガン プロトタイプL-9』、アニャ・テイラー=ジョイ出演)、長女ジョーダン(『汚れなき情事』、エバ・グリーン主演)もまた、皆映画監督になっている。ホラー界だと、デビッド・クローネンバーグの息子ブランドン(『インフィニティ・プール』)あたりが有名か。

そして今その中に、本作の監督も加えることになろう。イシャナ・ナイト・シャマラン――、そう、何とあのM・ナイト・シャマランの娘である。脚本も兼任しながら、まだ24歳というのだから驚きだ。気になるその内容はやはりと言うべきか、いわゆる“シャマラニズム”に満ちている。分かりやすく興味を惹かれるミステリアスなシチュエーションと、観客の予想を裏切ろうとするストーリー展開。もうすでにお馴染みの、我々を常にワクワクと不安の狭間に置こうとするいたずらっ子なシャマランの血には、逆に安心感すら覚える。

今回の舞台もこれまた魅力的だ。ダコタ・ファニング演じるミナはペットショップの店員で、ベルファストの動物園にオウムを届けるために車を走らせる(アイルランドという土地のおかげでフォーク・ホラー的な雰囲気が漂っている)。しかし不気味な森の中で車が故障し、方角も分からなくなった時、突如現れた老婆マデリンに導かれ謎の建物へ。この場所が本作の主役と言って良い。中の部屋はマジックミラーで囲まれたように、内部から外部が見えない。見えないのだが、どうやら得体の知れない怪物が外部からミナたちを見つめているという。それだけでなく、ルールを破るとそのナニカに殺される可能性すらある。マデリンの他には若い女性キアラと若い男性ダニエルがいるが、なぜこんな異常な生活を続けているのか? 彼女らは信用できるのか? これは何のオーディションなのだろうか? 分からない。

ミナたちと同様、多くを制限されたシチュエーションに見えるが、その実非常に自由度が高い舞台設定だと言えるだろう。ナニカの正体もそうだが、「一方的に見られている状態」はいかにも何かの比喩のようだ。メタな話をすれば、スクリーンを眺める我々だって“ウォッチャーズ”なのだし、映画についての物語にも思える。デビュー作にして堂々たる作品を完成させたイシャナも、少なからず“ウォッチャーズ”の視線に恐怖を抱いた部分があるはずだ。シャマランの血を継いでいるだけあって、本作もまた評価が分かれそうな作風であるが、ホラーファンは彼女の今後のフィルモグラフィーを注意深く監視していく必要があるだろう。彼女が父の言葉を繰り返すだけのただのオウムなのか、「七光り」との声を跳ね返すナニカを持ったホンモノなのかを。

【ストーリー】
28歳の孤独なアーティスト、ミナは贈り物を届けるために家を出て指定の場所に向かったのだが、そこは……。

【キャスト】
ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オリバー・フィネガン、オルウェン・フエレ 他

【スタッフ】
監督・脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン

公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/thewatchers/index.html

 

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