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『ウルフウォーカー』アニメーションの美しさと神秘の全てが詰まった、今年最高のアニメーション作品

◆公開中の注目作 
『ウルフウォーカー』

カートゥーン・サルーンというアニメーションスタジオをご存じだろうか?アイルランドに拠点を構えるスタジオで、近年最も注目されているアニメーションスタジオと言っても過言ではない。このスタジオが手掛ける長編アニメーションは本作が4本目で、まだ新しいスタジオだが、その全ての作品のクオリティが高いのだ。それはアニメーションにおいても、物語においてもだ。

本作は『ブレンダンとケルズの秘密』、『ソング・オブ・ザ・シー』に続くケルト三部作の三作目だ。まるでステンドグラスを見ているかのような美しい作画と、物語の神秘性とテーマ性が完璧に溶け込んでいる。近年のアニメーションは、デジタルのコンピューターグラフィックが主流になってきているが、本作にはそれとは一線を画するような、クラシカルな魅力に溢れている。まるでセル画のアニメーションを見ているような心地良い懐かしさがあり、そのクラシカルな映像の一つ一つが神秘に溢れている。これはもう見事としか言いようがない。

物語は狼の狩りをするハンターの娘ロビンが、伝説に伝わるウルフウォーカーの少メーヴ女と出会い、自身もウルフウォーカーになることで、人間と狼の「共存」の道を探すというもの。ロビンは余所者であるため、街では疎まれている。その境遇であるがゆえに、自身がウルフウォーカーとして覚醒し狼の姿になった時に、狼と自分の境遇が同じであることに気付く。余所者や姿の違うものを排除しようとする人間は、今日の現代社会にそのまま通ずるテーマだ。ロビンは父に狼狩りをやめるように必死に頼み込むも、父は護国卿を恐れて取り合ってくれない。現代的なテーマに友情や家族愛が見事に盛り込まれていて、観ている者の感情を大きく揺さぶる。

もう一つ欠かせないのが音楽である。特にロビンが狼となり、メーヴと共に森を駆け抜けるシーンで流れるオーロラの「Running With The Wolves」は最高で、神秘的な歌声がこのシーンにさらに大きな感動を与えてくれる。人間として息苦しい生活を送っていたロビンは、ウルフウォーカーとして覚醒し、狼の姿で大自然を駆け抜けるこのシーンは映画のハイライトだ。是非このシーンには注目してもらいたい。映像と音楽が最高にマッチしている。

中世アイルランドから伝わる伝説を基に作られた本作。クラシカルだけど透き通るように美しく神秘的なアニメーションと、それを引き立てる音楽、現代的な社会テーマと、普遍的な愛の物語の全てが堪能できる見事な映画である。日本ではディズニーやイルミネーションのような、キャラクターが人気のアニメーションスタジオが注目されがちだが、カートゥーン・サルーンが生み出した本作を観ればきっと他の製作作品も見たくなること間違いなしだ。是非ともこの作品が持つ魅力の全てを劇場で体験していただきたい。


【ストーリー】
中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンは、森の中で出会った少女メーヴと友だちになるが、メーヴは人間とオオカミがひとつの体に共存した「ウルフウォーカー」だった。魔法の力で傷を癒すヒーラーでもあるメーヴと、ある約束を交わしたロビン。それが図らずも父を窮地に陥れることになってしまうが、それでもロビンは勇気を持って自らの信じる道を進もうとする。

【キャスト】
オナー・ニーフシー、エバ・ウィッテカー ほか

【スタッフ】
監督:トム・ムーア、ロス・スチュアート

配給:チャイルド・フィルム
公式サイト:https://child-film.com/wolfwalkers/

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