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『ミュート・ウィットネス』あの幻のカルト・サスペンスは、キュートでウィットに富んでいた!?

この映画は、つまり―
  • 設定はしゃぶり尽くさなきゃもったいない
  • シリアスとコミカルの完璧な融合
  • 雄弁な目撃者になりましょう

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◆配信中の注目作

『ミュート・ウィットネス』
配信先:U-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

配信時代だからこそ、DVD時代には鑑賞の機会が限られていた古い良作をどんどん発掘していきたいものだ。本作『ミュート・ウィットネス』はカルト的なサスペンス映画として名高く、去年デジタルリマスター版が劇場公開された。そのおかげで、現在では各種配信サービスで見られるようになっている。タイトルは知りながらも鑑賞を諦めていた地方住まいの筆者にとっても非常にありがたいことだ(吹替版があるのも嬉しい)。

窮地に陥った主人公が何らかのハンディキャップを抱えており、そのためにさらなる窮地に追い込まれるというタイプのサスペンス映画はいくつもある。古い作品だと例えばオードリー・ヘップバーンが盲目の女性を演じた『暗くなるまで待って』、最近の作品だと車椅子の主人公が毒親から逃げようとする『RUN/ラン』などだ。障害というより一時的なケガで行動が制限されている場合もあり、『ミザリー』はその典型例だろう。本作では、主人公のビリーは声が出せない。耳は問題なく聞こえるが、言葉は話せない。『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンスと同じで、聾でなく唖(ミュート)なのだ。

映画の特殊メイクを担当しているビリーはある日、仕事終わりに現場であるモスクワのスタジオに忘れ物を取りに行ったために、外から鍵をかけられ閉じ込められてしまう。階下から物音がするので行ってみると、ロシア人の男女がポルノ映画のものらしき撮影を行っていた。しかし、物陰からこっそり見ていたビリーの目の前で、覆面の男が女優をいたぶり殺してしまう。裏社会のスナッフフィルム撮影を目撃してしまったビリーは建物中を逃げ回り……といったシンプルなあらすじだ。カルト的作品と聞くと『ザ・バニシング ‐消失‐』などのような怪作なのかと思ってしまうが、これが意外にもサービス精神に溢れまくったエンタメ作品だった!

まず、舞台や設定は活かせるだけ活かそうという心意気が伝わってくる。ビリーが逃げ惑うスタジオは上の階から下の階まで、エレベーターシャフトからゴミ捨て場まで、骨にくっついた肉の一片まで残さないように使い切る。そしてビリーのハンディキャップについてだが、話せないことのネガティブ面はもちろんこれでもかというほど提示される。彼女の言い分が相手にダイレクトに伝わらないもどかしさ、電話口だとビリーであるとすら分かってもらえない煩わしさ……。とは言え、これらはまだ予想の範囲内。何と本作、ビリーが話せないことのポジティブ面(?)まで見せてくれるのだ! ここで詳しく言ってしまうともったいないので伏せておくが、話せる主人公だった場合さらなるピンチに陥っていたであろう場面がいくつも登場する。

ビリーと犯人のかくれんぼ・追いかけっこはいつもギリギリで、数秒遅ければ即ゲームオーバーのスリリングな攻防戦として演出されている。シリアスなサスペンスとしてもきっちり作ってあるわけだ。ところが同時に、本作は非常にキュートでコミカルな一面も持っている。デイジー・リドリーを彷彿とさせる主演のマリナ・スディナの可憐さが遺憾なく発揮されており、ところどころは完全にコメディだ。多くの場面はユーモラスな雰囲気に包まれ、「良い時代の映画」感に溢れている。至極当たり前ながら、旧作にも様々なタイプの映画がある。しかし、過去に置いてきぼりにされた映画の内容はほんの一部しか現代に伝わらない。「カルトなサスペンス映画」などという紹介では、本作の魅力を何一つ話せていないのと同じ。このような映画をぜひ語り継いでいくべきだ。知っているのに過去に埋没するのもやむなしとする態度こそ、“ミュート・ウィットネス”そのものなのだから。

【ストーリー】
特殊メイクアップアーティストのビリーは、姉の恋人が監督する映画撮影のためにモスクワのスタジオを訪れていた。撮影後、忘れ物をしたビリーは館内へ戻ったが、施錠されてしまい閉じ込められてしまう。声を出すことのできないハンディキャップを持つビリーは助けを求めスタジオ内を彷徨う。そこでは密かに同じ撮影チームのスタッフによるポルノ映画の撮影が行われていた――と思った瞬間、女優の胸にナイフが突き立てられる。行われていたのはなんとスナッフフィルムの撮影だったのだ。そして彼女の地獄のような一夜が始まった……。

【キャスト】
マリナ・スディナ、フェイ・リプリー、エヴァン・リチャーズ、オレグ・ヤンコフスキー、アレック・ギネス 他

【スタッフ】
監督・脚本:アンソニー・ウォラー

(C)1995 Anthony Waller. All Rights reserved

 

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