MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

【今週公開の注目作】『ザ・クロウ』 愛に生きて、愛に死に、憎しみに蘇る。あの伝説的カルト映画を無謀にもリブート!

◆今週公開の注目作

『ザ・クロウ』
3月6日(金)全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『クロウ/飛翔伝説』と言えば、カルト映画と呼ばれるものの中でも特に有名な1本だろう。残念ながら、有名な理由の半分は悲劇的なエピソードのためだ。何と、主演を務めたブルース・リーの息子、ブランドン・リーが撮影中のミスで亡くなってしまったからだ。誤って、銃撃シーンで用いられた小道具の銃が通常に近い形で撃てる状態になっていた。結果的にブランドンの遺作となった同作は彼なしで完成させなければならなくなり、奇しくも父ブルースの死後にどうにか完成した『死亡遊戯』と同じような道を辿った(ちなみに、亡きブランドンのボディ・ダブルを務めたのは『ジョン・ウィック』シリーズでお馴染みのチャド・スタエルスキ)。しかし、『クロウ/飛翔伝説』が有名な理由のもう半分は、その内容の非凡さからだ。コミック原作なのを強く意識したケレン味たっぷりの映像、雨が降り止まない街のダークでゴシックなビジュアル、そしてもちろんブランドンの圧倒的なカリスマ性。主人公がロックミュージシャンであることも相まって、若く切ない衝動が全編を貫いている作品だった。

それを、リアルに寄せて現代的にリブートしたのが本作『ザ・クロウ』だ。『クロウ/飛翔伝説』を知っている方には、この一文だけでかなり趣向の異なる映画になっているのが察せられるだろう。何しろ、監督のルパート・サンダースはあの『攻殻機動隊』のハリウッド実写版である『ゴースト・イン・ザ・シェル』を撮った人物なのだから。『クロウ/飛翔伝説』と『ザ・クロウ』は、核となる設定が同じだけの別物と考えた方が良い。主人公エリック・ドレイヴン(クロウは小さなカラス、レイヴンは大きなカラスを指す)が恋人シェリーとともに悪党に殺されるが、エリックのみ冥界の使いであるカラスの力で不死身となって蘇る。そしてシェリーの復讐のため、悪党どもを完膚なきまでに叩き潰していく。この基本ストーリーが共通しているだけで、鑑賞後感はまるで違う。

今回エリックを演じたのは、様々な作品で着実に爪(クロウ)痕を残し続けているビル・スカルスガルド。劇中で唯一、見るからに非現実的なビジュアルをしているのは彼だけだが、コミック的なキャラクターが実によくフィットする。彼の当たり役であるリブート版『IT/イット』のペニーワイズのように、蘇ったエリックも黒いピエロメイクをしている。全身はタトゥーだらけ(なぜか、もみあげ部分に日本語で「永遠の」と彫ってある)で、『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』の時のように身体はバキバキだ。それだけ厳ついマッチョな外見をしていながら、どこか内気で繊細な少年にしか見えない。実年齢が35歳なのが嘘のようだ。ヒロインを演じる歌手のFKAツイッグスはさらに年上の38歳だが、恐ろしいことにこちらも少女にしか見えない。

オリジナル版はシェリーをエリックの思い出としてのみ一瞬で、しかし鮮烈に描いていたのに対し、本作では前半の多くの部分をふたりのラブストーリーに割いている。あまりにイチャイチャしておりなかなか復讐劇が始まっていかないが、そのシークエンスは10代か20代のカップルの純愛ものにしか見えないのがすごいところだ(ピエロが更生施設でヒロインに出会うので、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を思い出す)。後半になると、そこからはオリジナルを凌駕する凄惨なバイオレンスが展開されていく。エリックは不死身とは言え痛みは感じるので、無双アクション的な爽快さとは正反対の陰鬱さが画面を支配する。

オリジナルとも違うし、前半と後半でも全く違う映画のようだが、作風を踏襲してオリジナルを超えるというのはブランドンの死の影響を考えてもそもそも不可能な話だ。だからこそ、本作はアプローチを大きく変えたのだろう。終盤に差し掛かると、本作はようやくオリジナルを強く意識しつつ、しかしそこからさらに別の地平に至ろうとする。なるほど、強すぎるラブストーリー要素はこのためにあったのだ。オリジナルと本作の両方を気に入る人はそう多くない気がするが、逆に言うと癖が強いオリジナルよりこちらを気に入る人はいるかもしれない。それはそれで良いのだ。白いカラスだって実在するのだから。

【ストーリー】
奪われた魂が、男を覚醒させる―
恵まれない家庭環境に育ち、非行を繰り返す青年エリック。彼は、更生施設で同じく暗い過去を持つ女性シェリーと出会う。瞬く間に燃えるような恋に落ちた彼らは脱走を成功させ、誰も知らない場所で二人だけの時間を過ごすうちに、お互いの中に生きる意味を見出して深く愛し合っていくのだった。しかし、謎の組織が隠れ家を襲撃し、二人は惨殺されてしまう。やがて命を落としたエリックの怨念に引き寄せられるように、彼の魂の下へ死の国の使者であるカラスが現れ、“復讐のための力を持って生き返る代わりに、目的を遂げた後は魂を永遠に捧げる”という取引を持ち掛ける。激しい憎悪に駆られたエリックはこれを承諾して蘇り、シェリーを凌辱した組織を滅ぼすことを強く誓って夜の闇へと飛び出していくのだった。

出演:ビル・スカルスガルド、FKAツイッグス、ダニー・ヒューストン
監督:ルパート・サンダーズ
配給:クロックワークス 【R15+】
© 2024 Yellow Flower LLC

 

関連記事

『悪魔のいけにえ 4Kデジタルリマスター公開50周年記念版』元祖チェンソーマンと言えばこの男!これで新年初斬り!

『マッド・フェイト 狂運』 どうせ狂うなら、狂わせてしまえ。運命の歯車までも。2026年も『トワイライト・ウォリアーズ』監督作品で幕を開ける!

『Fox Hunt フォックス・ハント』 血も涙もないけれど、水も滴る良い男。

『アダムズ・アップル』神の前には、ネオナチも我々も等しくちっぽけな人間。食べると笑って泣ける毒リンゴ。

『愛はステロイド』電撃のように全身に走る。それは血筋よりも濃い、運命の赤い糸。

『バレリーナ:The World of John Wick』 運命に踊らされるな。自らの意志で復讐の銃弾を見舞え。

『MaXXXine マキシーン』全方向から私を照らして。影のできる隙間もないくらい。

『メガロポリス』巨匠の情熱、執念、狂気。“とし”を重ねた先に生まれた未来とは。

バックナンバー