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『ARGYLLE/アーガイル』優れたスパイは画面を越えて観客をも騙す。“アーガイル”の正体はまさかの…!?

◆今週公開の注目作

『ARGYLLE/アーガイル』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

イギリスの有名スパイと言えば誰か? 有名な時点でスパイ失格なのはとりあえず置いておいて、まず挙げられるのはやはり『007』シリーズのジェームズ・ボンドだろうか? いやいや、ここ数年は『キングスマン』シリーズのエグジー・アンウィンもかなりの存在感を放っている。お世辞にも品が良いとは言えないヤンチャ坊主から、マナーとスーツを身に着けることでスマートでクールなスパイへと成長したエグジー。この印象的なキャラクターを生み出したマシュー・ヴォーン監督は、ここに来てまたしてもスパイ映画史に爪痕を残そうとしている。ヘンリー・カヴィルが出演する本作『ARGYLLE/アーガイル』で。

思い返せば約20年前、ヴォーンは『007/カジノ・ロワイヤル』を監督するはずだった。しかし、ヴォーン自身にも分からない原因によって突如MGMからのオファーはなかったことになり、ヴォーンが推していたダニエル・クレイグがボンド役に決まった。実は、当時20歳を過ぎたばかりの新人だったカヴィルもまたボンド役の最終候補だったのだが、若さを理由に役を逃していたのだ。カヴィルは後に『コードネーム U.N.C.L.E』でもスパイを演じているが、『ARGYLLE』はヴォーンとカヴィルによる『007』へのリベンジマッチでもある。…ところが、一癖あるのがヴォーンのスタイルだ。カヴィルがタイトルにもある角刈りスパイのアーガイルを演じるものだと思ったら、それは主人公の作家エリー・コンウェイが書いているスパイ小説のキャラクターで、現実にスパイとして出てくるのはサム・ロックウェル演じるエイダン。…実際のスパイは確かに地味であるべきだろうが、見た目が違いすぎる!

…そのはずなのに、だんだんとエイダンがアーガイルに見えてくる。これは比喩ではなく、本当に画面がそうなっているのだ。優れた作家は未来を予言するが、エリーが書いているスパイ小説『アーガイル』は世界の裏側を言い当てた内容になっていたらしく、そのせいで現実にスパイ組織から狙われる羽目になるので、事実と小説の境目がよく分からなくなる。エリーの目からは、エイダンが戦っているはずのシーンでも時々アーガイルが戦っているように見えるし、『キングスマン』でも見られたヴォーンらしいドラッギーでカラフルで斬新なアクションシーンのシュールさが、地に足がつかない浮遊感を生み出している。ストーリーはどんでん返しの連続で、ロバート・ロドリゲス監督の『ドミノ』も少し思い出す(奇しくも両作に登場する謎の組織の名前がどちらも「ディヴィジョン」!)。

ヴォーンが、もう3作あるとは言えまだまだ若いスパイシリーズである『キングスマン』を脇に置いて、なぜ新たなスパイ映画を手掛けたかのミステリーの答えらしきものは、本作の最後に提示される。これはある意味、2時間19分も事実と小説に弄ばれてきた我々観客に、ようやく現実をコントロールするチャンスが巡ってきたことを意味している。夢を現実にしたければ、この現実のような夢(のような現実?)に浸りに行くしかないだろう。

【ストーリー】
凄腕エージェントのアーガイルが、謎のスパイ組織の正体に迫る大人気小説「アーガイル」。ハードなシリーズの作者エリー・コンウェイの素顔は、自宅で愛猫のアルフィーと過ごすのが至福の時という平和主義。だが、新作の物語が実在するスパイ組織の活動とまさかの一致でエリーの人生は大混乱に! 小説の続きをめぐって追われる身となった彼女の前に現れたのは、猫アレルギーのスパイ、エイダン。果たして、出会うはずのなかった二人と一匹の危険なミッションの行方は──?!

【キャスト】
ヘンリー・カヴィル、ブライス・ダラス・ハワード、サム・ロックウェル、ブライアン・クランストン、キャサリン・オハラ、デュア・リパ、アリアナ・デボーズ、ジョン・シナ、サミュエル・L・ジャクソン 他

【スタッフ】
監督:マシュー・ボーン

脚本:ジェイソン・フュークス
製作:マシュー・ボーン、アダム・ボーリング、ジェイソン・フュークス 、デヴィッド・リード
製作総指揮:アダム・フィッシュバック、ジギー・カマサ、カルロス・ペレス、クラウディア・ヴォーン
配給:東宝東和
© Universal Pictures

公式サイト:https://argylle-movie.jp/
#映画アーガイル

 

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