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『ジェヴォーダンの獣 4Kレストア ディレクターズ・カット』その獣はかつて、そして今も存在している? ロマン溢れる物語(ロマン)。

◆今週公開の注目作

『ジェヴォーダンの獣 4Kレストア ディレクターズ・カット』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

命名とは、その対象を理解し定義しようとする試みである。理解不能に思えるような怪物に対して、人間の取れる選択肢などたかが知れている。その中で、はじめに行えるささやかな抵抗が相手に名前をつけることだ。フランスには、「ルー・ガルー(Loup-Garou)」と呼ばれる存在がいる。Loupが「狼」で、Garouは「狼男」を意味するので、大切だから2回言っているのかは分からないが直訳すると「狼狼男」。要するに人狼だ。身も蓋もないネーミングながら、その対象を的確に表しているのは間違いない。

ところが、確固たる名前がない怪物もいる。例えば、「フランケンシュタインの怪物」。その姿形は多くの方が想像できるだろう。「フランケンシュタイン」と呼ばれる機会も多いが、正確には「フランケンシュタイン」とはあの怪物を創造したヴィクター・フランケンシュタインを指す。怪物自体には固有の名称がないのだ。フランケンシュタインの怪物は小説家メアリー・シェリーが想像した架空の存在にすぎないものの、実際に歴史に残った名無しの怪物もいる。それこそが本作のタイトルにもある「ジェヴォーダンの獣」だ。

ジェヴォーダンの獣とは、18世紀のフランス・ジェヴォーダン地方でたびたび目撃された得体の知れない生物のことである。狼に似ているがそれよりずっと大きくより凶暴で主に女性と子供を襲い、犠牲者の死体は見るも無惨な状態であったという。100人以上がその牙と爪の犠牲になったとされるも正体は未だ不明と、実に好奇心を刺激する存在だ。本作は、歴史上の人物や出来事を取り入れながら想像を膨らませ獣の謎に迫ったアクション・ミステリー・ラブストーリー大作となっており、ルイ15世の命で獣を追う学者フロンサックと同行するモホーク族のマニとの友情、フロンサックと地元の伯爵令嬢マリアンヌとの恋、マリアンヌの兄で片腕のジャン=フランソワの濃すぎるキャラなど、見どころが多い。

アクション面では、ケレン味の効いたカメラワークと打撃の重さを感じさせるバイオレンスな格闘が目を引くが、何より驚くのはマニに対してだろう。序盤、顔を隠し目だけを出した状態で登場するが、そのあまりに美しい目に俳優は誰だろうと思ったら、何とマーク・ダカスコス。そう、『ジョン・ウィック:パラベラム』ではジョン・ウィックの厄介ファンで、推しを殺しても推しに殺されてもお幸せな、押しも押されもせぬヘンタイニンジャを演じていたあの男だ。こんな美青年だったとは! 神秘的でスピリチュアルな雰囲気をまといながらも、もちろん戦闘シーンの動きは素晴らしく、斧片手に荒くれ者相手に無双するのが最高にクールだ。

そして、フランス映画と言えばヴァンサン・カッセル。カリスマ性のある卑劣な男を演じさせたら彼の右に出る者はいない。今回も見事に蛇のような嫌味ったらしさが顔全体からほとばしっており(褒めている)、最後にはやはりドヘンタイだったと分かる。これだけだとあまりにも可哀想な紹介になるのでアクションの話をしておくと、彼が演じるジャン=フランソワは中々珍しい蛇腹剣の使い手。普通の剣かと思えば伸びて鞭のごとくしなるという、残念ながらフィクションの世界にしか存在しないがロマン溢れる、まさにジャン=フランソワにピッタリな武器だ。嫌らしい。結構この映画、欲張りである。

さらに、過去カッセルと夫婦だったモニカ・ベルッチ。ミステリアスな娼婦として登場するが、ベルッチほどのスターがただの娼婦を演じるわけはない…という風に、脇役のキャラが濃すぎて主人公フロンサックの影が薄くなっているのはご愛嬌。もう20年以上も前の映画だけに、例の獣はCG丸出しで時代を感じるが、「本当の獣とは何なのか」という哲学的な問いにも片足を突っ込んでおり味わい深い映画となっている。本作も配信がされていないようなので、せっかくの機会に劇場で伝説の獣に相対してくると良いだろう。あと蛇腹剣に。

【ストーリー】
18世紀フランス・ジェヴォーダン地方。100人を超える女と子供が何者かに惨殺された。残された死体の巨大な傷跡。狼の仕業か? それとも呪いか? 生存者の証言では、全く見たこともない怪物だと言う。謎の野獣退治の為、ルイ15世より最強の騎士たちが派遣された。彼らはそこで魔獣の謎と、驚愕の真相に立ち向かうこととなる!

【キャスト】
サミュエル・ル・ビアン、ヴァンサン・カッセル、エミリー・ドゥケンヌ、モニカ・ベルッチ、ジェレミー・レニエ、マーク・ダカスコス 他

【スタッフ】
監督:クリストフ・ガンズ
脚本:クリストフ・ガンズ、ステファーヌ・カベル

公式サイト:https://www.tc-ent.co.jp/sp/Gevaudan_4K_jp/

 

 

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