MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『死霊のはらわた ライジング』何かがいる。家の中に。…そして私の中に!この夏を代表するホラーは劇場未公開の本作だ! 

この映画は、つまり―
  • 過去作と、創造主サム・ライミへの愛に溢れた『死霊のはらわた』シリーズ最新作!
  • 予習は必要なし。これこそ『死霊のはらわた』だ!
  • ホラーは行き過ぎるとコメディに

記事を見る

◆配信中の注目作

『死霊のはらわた ライジング』

Amazonプライムで視聴するこちら
AppleTVで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

昔懐かしの映画シリーズにおいて久々の続編が作られるのは珍しいことではなくなっているが、あのホラー映画の金字塔も例外ではなかった。そう、トビー・マグワイア版の『スパイダーマン』3部作で広く知られているサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』シリーズだ! 彼は元々低予算・手作り感満載の『死霊のはらわた』からキャリアをスタートさせており、特にシリーズ2作目『死霊のはらわたII』でホラーコメディ監督としての地位を確立した。シリーズで印象的なのは、死霊に憑依された者が浮かべる恐ろしく邪悪な笑み。ホラーとコメディの融合が、この笑顔に象徴されている。

今回紹介する『死霊のはらわた ライジング』はシリーズ5作目となるが、鑑賞にあたって前作までを予習する必要は全くない。そもそも、2作目は1作目のセルフリメイク的作品だし、3作目の『死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット』は2作目と直接繋がっていない。その上、2013年公開の4作目『死霊のはらわた』も1作目のリメイクだった(監督は傑作ホラー『ドント・ブリーズ』を撮り『エイリアン』の新作が控えているフェデ・アルバレス)。つまり、1・2・4作目がほぼ同じ内容の、非常に変わったシリーズなのだ。

シリーズの基本設定は、死者を蘇らせる呪文が書かれた「死者の書」により邪悪な死霊(イーブル・デッド)が蘇り、身近な人間に憑依して主人公を殺しに来るというものだ。「死者の書」は“ブック・オブ・ザ・デッド”。「◯◯・オブ・ザ・デッド」なるタイトルを冠するのはゾンビ映画と相場は決まっているが、憑依によって肉体も魂も腐ってしまった愛する者を殺さなければならなくなるのは本シリーズでも同じ。しかも、感染するように死霊化した人間が増えていくのも共通している。

今回メガホンを撮ったのは、地面に空いた不気味な大穴により狂っていく息子に恐怖する母親を描いた奇妙なホラー『ホール・イン・ザ・グラウンド』でデビューしたリー・クローニン。本作は1・2・4作目のように山小屋ホラーとして始まる。カメラが森の中を飛び回る死霊の視点と同化したお馴染みのカメラワーク(とそのオチ)で軽くジャブをかまし、超絶カッコ良くオープニングタイトルが出たところで物語は1日前へ戻り、舞台は山小屋からロサンゼルスのアパートへ移る。予期せぬ妊娠によって不安になった主人公のベスが、長らく会っていなかった姉エリーとその娘たちの家を尋ねると地震が起こり、アパートの地下に空いた穴(やはり!)から見つかった死者の書によってエリーが憑依されてしまうのだ! 2作目の原題のサブタイトルは「Dead by Dawn(夜明けまでに死ぬ)」だった。このままでは皆、夜明けまでに死ぬ。

映像は非常にスタイリッシュで、ホラー表現はエクストリームだ。痛いグロ描写もふんだんに盛り込まれているが、時々正気とは思えないギャグなのか何なのか分からないシーンも挿入される。シリーズの特徴である、やりすぎのため笑ってしまうようなブッ飛んだコミカルさは健在だ。また、エリーを演じたアリッサ・サザーランドが最高で、ホラー映えする顔と抜群の存在感で死霊の邪悪さが十五分に伝わってくる。本作には、3作目まで主人公アッシュを演じていたブルース・キャンベルの姿はなく、声だけの出演となっている。しかし驚くのは、ベス役のリリー・サリバンの顔がアッシュにしか見えない瞬間が終盤にあることだ。これだけで、続編としての正当性は備えていると言えるだろう。『悪魔のいけにえ』と同じく、本シリーズに欠かせないチェーンソーも、待ってましたというタイミングでしっかり登場する。

シリーズ過去作へのオマージュだけでなく、他作品への目配せもある。例えば、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』を“内側”から見ているようなシーンだ(サム・ライミは、キューブリック版に不満だった原作者スティーブン・キングが自ら作ったドラマ版『シャイニング』に出演している)。ここでは詳しく言わないので、実際に鑑賞して圧倒されてほしい。また、コーエン兄弟のある作品を思い出させるシーンもある。コーエン兄弟は昔からライミと縁があり、何と兄のジョエルは1作目の『死霊のはらわた』の編集を手がけているのだ! 実に、本シリーズとライミへの愛が溢れる一作になっている。

本作はあの『死霊のはらわた』シリーズ最新作であり、“カノン”とするに素晴らしい内容にもかかわらず、残念ながら劇場公開されなかった(本国では元々配信のみの予定だったが、試写で好評だったこともあり公開された)。しかし、この夏に見るべきホラーとしては本作が第一候補となるだろう。暑さやコロナが気になって海に行けないと嘆いている皆様方。ならば、この“血の海”へ出向いてみるのはいかが?

【ストーリー】
互いに疎遠になっていた2人の姉妹。その感動の再会に水を差したのは「死者の書」によって復活し、人間の肉体を手に入れた死霊たちだった。生か死か?極限のバトルが繰り広げられ、これ以上ないほどの悪夢が襲いかかる最恐ホラー!

【キャスト】
リリー・サリバン、アリッサ・サザーランド、モーガン・デイビス、ガブリエル・エコールズ、ネル・フィッシャー 他

【スタッフ】
監督・脚本:リー・クローニン
製作:ロブ・タパート
製作総指揮:サム・ライミ、ブルース・キャンベル 他

 

★配信エンタの過去記事はこちら

『シークレット・インベージョン』/敵は誰で味方は誰か…そしてあいつの顔をしたお前は誰だ?誰も信じてはいけない、スーパーヒーローなしのマーベルドラマ!
『タイラー・レイク -命の奪還-2』/ストーリーよりアクション重視ならこれしかない!クリス・ヘムズワースが配信アクションの限界を再びブッ壊す!

『ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン』/去年が『トップガン』なら今年はコレか!?フィクションが超えられない高みを目指して飛んで行け!
『別れる決心』/ロマンスはミステリー。パク・チャヌク監督が仕掛けたこの謎は、絶対に解いてはいけない。
『FUBAR/フーバー』/敵を欺くにはまず家族から。娘にタジタジのシュワちゃんが奮闘するアクションコメディ・ドラマシリーズ!
『AIR/エア』世界一有名なバスケシューズはこうやって生まれた!?弱小「ナイキ」が強豪ライバル会社に立ち向かう!

バックナンバー