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『ザ・フラッシュ』ヒーローは遅れてやってくるものさ… その俊足でマーベルに追いつき、DCの未来を変えろ!

◆今週公開の注目作

『ザ・フラッシュ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

皆さんはどのアメリカン・ヒーローが一番好きだろうか? 筆者が好きなのは、高速で移動できるキャラだ。マーベルなら『X-MEN』シリーズのクイックシルバー、『エターナルズ』のマッカリ。そしてDCなら、このフラッシュだ! これまで『ジャスティス・リーグ』などにちょこちょこ登場していたが、メインに据えられるのは初めて。それなのに、今回フラッシュに課せられた使命は人命救助より…とは言えないまでもかなり重い。遥か先を行くマーベルに追いつかなければならないし、ユニバースの誕生からDCを率いてきたザック・スナイダー監督の退場後、リーダーがジェームズ・ガン監督に代わって従来とは全く違う路線にシフトすると決定しているからだ。本作はまさに、運命のレールを分岐させるポイントの役目を担っている。

先輩ヒーローのバットマンやワンダーウーマンには不可能で、フラッシュには可能なことがひとつある。もちろん高速移動だが、フラッシュの場合高速どころか光速だ。科学的には、光速に近づくと時間の流れは遅くなる。だからこそ、俊足ヒーローが能力を発揮すると周りがスローモーションになるのだが、そこからの発想で、フラッシュは光速を超えたスピードで走って過去にタイムトラベルできるのだ。フラッシュことバリー・アレンは幼い頃に母親を殺され、父親は犯人とされ捕まっている。父親の無実を信じるも、疑いを晴らせるような証拠が見つからない。そこで、バリーは過去に戻り母親の命を救おうとするのだが、彼は分かっていなかった。過去を変えるのはレールが分岐するのと同じ。つまり、行き先(未来)が完全に異なってしまうのだ。

「母親が生きている」だけで、他は今まで通りになると思っていたバリーを迎えたのは、これまでDCで活躍してきたスーパーマンやバットマン、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグなどがいない世界。これはかなりメタ的な設定だ。今後のDCユニバースでは、少なくともスーパーマン役のヘンリー・カビルやバットマン役のベン・アフレックは起用されないことが確定している。つまり、DCをリセットするための本作で描かれている世界自体が、これまでのDCの流れを汲まないものに変わっているのだ。そして、ヴィランはDCエクステンデッド・ユニバース(以下DCEU、現在のDCユニバースの前身)の第1作目『マン・オブ・スティール』でスーパーマンと戦ったゾッド将軍。これはユニバースの“再誕”をやろうとしているのだろう。

かなりの力技だが、フラッシュの特殊能力と上手くリンクさせているために不思議でスリリングな味わいになっている。…とは言え、驚くべきことに本作はDCで最も笑える作品のひとつでもある。『シャザム!』と良い勝負ではないだろうか。新たな世界にも別のバリーがおり、我々のよく知るバリーと“自問自答”する様子はもはや漫才だ。別のバットマンは、何とDCEUよりずっと前のティム・バートン版バットマンを演じていたマイケル・キートンが再演。大傑作だった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』…、もしくは、ちょうど本作と同時に公開された『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』的と言っても良いかもしれない。ある意味、フラッシュのオリジンを描いているところも、スパイダーマンのオリジンストーリーをやり直した『ノー・ウェイ・ホーム』に似ている。

スーパーマンの代わりに登場する、彼のいとこのスーパーガールもクールだ。スーパーマンのような陽でなく陰の雰囲気をまとっており、今までとは異なる魅力を放っている。フラッシュの走りは名前通り目も眩む閃光のように美しく、アクションシーンはこれまでDCが揶揄されてきたような、単なる暗い中でのド派手なCGバトルとは一線を画す出来だ。現代アクション映画の王様トム・クルーズも絶賛したと報じられているが、それもよく分かるほど痺れる快作になっている。監督のアンディ・ムスキエティは、正式に新たなバットマン映画『The Brave and the Bold(原題)』を撮ることが決まったようで、今後のDCに対する不安を払拭し期待を高めてくれた。主演のエズラ・ミラーは私生活でかなり様々なことをやらかしているが、未来は変えられるはずだ。この『ザ・フラッシュ』は、DCとファンの希望の光になるだろう!

【ストーリー】
地上最速ヒーロー“ザ・フラッシュ”は亡き母を思うあまり“過去”に遡り彼女の命を救うが、その行動が“現在”に歪みをもたらしてしまう。スーパーマンらはこの世界には全く存在せず、バットマンはまったくの別人に。さらに、かつてスーパーマンが倒したはずの敵が大軍勢を率いて襲来、地球植民地化を始める。フラッシュは別人のバットマン、黒髪のスーパーガールとともに、世界を元に戻し人々を救おうとするが…。

【キャスト】
エズラ・ミラー、ベン・アフレック、マイケル・キートン、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン、ジェレミー・アイアンズ、キアシー・クレモンズ、ロン・リビングストン、マリベル・ベルドゥ 他

【スタッフ】
監督:アンディ・ムスキエティ
脚本:クリスティーナ・ホドソン
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved © & TM DC
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/flash/

2023年6月16日(金)世界同時公開

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