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『ブレット・トレイン』最終目的地は京都か死か。どちらにせよ、放たれた“弾丸”はもう止まらない!

◆今週公開の注目作

『ブレット・トレイン』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

洋画の中で日本が正確に描かれているケースはそう多くない。スシにテンプラ…はまだ良い。街を歩けばニンジャ、ゲイシャ、サムライ、ヤクザにぶつかる。そんなトンデモ、もとい“理想の”ニッポン描写を堂々としている映画は未だに存在する(ニンジャが現代にも存在していると信じる外国人がいるという噂は本当だろうか?)。日本人には格別の喜びを与える荒唐無稽文化財だ。例えば近年、最先端アクション映画監督として台頭してきたチャド・スタエルスキの『ジョン・ウィック』シリーズにもニンジャが登場する。そして『ブレット・トレイン』には帯刀したヤクザが。両作にはそれ以外にも意外な共通点がある。

スタエルスキは同作主演のキアヌ・リーブスの元スタントダブル。そして本作のデヴィッド・リーチ監督は主演のブラッド・ピットの元スタントダブルだ。1997年にアクション・スタント・デザイン会社「87Eleven」を立ち上げた2人は、ともに第2班監督を務めるようになる。最初の作品タイトルはそのものズバリ『ニンジャ・アサシン』だ。その後に『ジョン・ウィック』1作目を2人で監督し、今でもニンジャやアサシンの映画を作り続けている。まさに運命の盟友だ。

好調のスタエルスキに対しリーチがぶつけてきたのは、名優ブラッド・ピットのアクション映画。伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』のハリウッド実写版だ。舞台はほぼ東京発・京都行きの“ブレット・トレイン(弾丸列車。新幹線の別称)”内のみ。それを除けば、劇中で起こる事態自体は『ジョン・ウィック』とそう変わらない。暗殺者同士の殺し合いだ。『ブレット・トレイン』も『ジョン・ウィック』のように、もっと言えばリーチらが敬愛するジャッキー・チェン映画のように、その辺に転がっているアイテムを駆使してのバトルが連続する。車両を移動する度に雰囲気はガラリと変わり、殺し屋たちは我々のよく知るあの狭さの中で縦横無尽に跳ね回る。

ただ、リーチにはスタエルスキにはない味がある。『デッドプール2』以降の作品に顕著な、やりすぎギャグ要素が炸裂しており非常に楽しい。ピット演じる殺し屋レディバグは非情ではない。腕利きのはずがどことなく間が抜けておりチャーミングな人物だ。そして、とことん運が悪い。『デッドプール2』に登場した幸運というスーパーパワーを持ったキャラクター、ドミノとは全く逆だ。ドミノ倒しのように不運は訪れ、将棋倒しのように死体が積み上がる。だが怖い映画と警戒する必要はない。それでも画面からポップさや軽快さが失われることはないからだ。

なぜ殺し屋ばかりが乗り合わせているのか。なぜこの大騒ぎで新幹線が止まらないのか。果たしてこのクールでハイテクな、日本人にも見覚えのない列車は本当に新幹線と呼べるのか。観客のそんな疑問はたった1秒で後方80mの彼方へ。実際の東京~京都間の所要時間とほぼ同じ、2時間6分のランタイムをノンストップで駆け抜ける。ああ、もちろん駅には止まるが、不運なレディバグは目当てのブリーフケースを盗んで降りるだけの簡単な仕事すらスムーズに行わせてもらえないのだ。目も当てられない。

実在しないこの新幹線の名前「ゆかり」よろしく、初対面でも実は縁もゆかりもある殺し屋たちの運命が交差する。人生を生き急ぎ、一瞬ですれ違い散っていく弾丸たちは、死という終着駅へと伸びるレールをたどるしかないのか? レディバグは名前の通り、再びお天道様を拝めるのか? ゆかりはこれから約1か月間の特別運行を行う予定だ。出発時間に遅れることのないように。

【ストーリー】
世界一運の悪い殺し屋レディバグが請けたミッション、それは東京発の超高速列車“ゆかり号”でブリーフケースを盗み、次の駅で降りること。簡単な仕事のはずが、次から次へと“ゆかり号”に乗ってくる殺し屋たち。彼らに狙われ、降りたくても、降りられない! 最悪な状況の中、列車はレディバグと殺し屋たちを乗せたまま終着点・京都へと走る… やがて明らかになる乗り合わせた10人の過去と因縁。そして京都で待ち受ける世界最大の犯罪組織のボス=ホワイト・デス! 思いもよらない展開が連続するミステリー・アクション!

【キャスト】
ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=・ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之、マイケル・シャノン、サンドラ・ブロック、ベニート・A・マルティネス・オカシオ、ローガン・ラーマン、ザジー・ビーツ 他

【スタッフ】
監督:デヴィッド・リーチ
原作:伊坂幸太郎 『マリアビートル』

2022年製作/126分/R15+/日本
原題:Bullet Train
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

公式サイト:https://www.bullettrain-movie.jp/

 

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