MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『キングスマン:ファースト・エージェント』真摯に、紳士たれ。シリーズ最新作がついに!ついに公開!

◆今週公開の注目作
『キングスマン:ファースト・エージェント』

文:屋我平一朗(今回は気分だけでもイギリス紳士の映画ブロガー)

ようやくだ、諸君。この時をどれだけ待ちわびていたことか。本作は日本でも昨年のうちには公開されるはずだったのだが、何とも陰険な某ウイルスによって大幅の延期を余儀なくされた。…まあ確かに、シリーズ1作目の『キングスマン』には地球を蝕む“ウイルス”(人類)を一掃しようと企むエコテロリストが、2作目の『キングスマン:ゴールデン・サークル』にはウイルスを仕込んだ麻薬で人類を人質にとるマダムが登場した。本シリーズと言えばウイルスであるのは間違いない。ははは。実に笑えないジョークだ。

シリーズもこれで3作目となるので、まず簡単にこれまでのおさらいをしよう。キングスマンとは、「背広」の語源になったとも言われる、ロンドンの高級紳士服店が並ぶ通りサビル・ロウに拠点を構える、全く独立したスパイ組織である。…とりあえずこれだけ知っていれば問題ないだろう。本作は続編でなく、キングスマンの誕生を描いた前日譚だからだ。公開を間近に控えた今、ユーモアのセンスに欠けた某ウイルスの出る幕はもうない。その代わり、古来より人類を蝕み続ける別の“ウイルス”の話をしなければならない。そう、戦争についてだ。

本作の舞台は1914年。2021年を生きる我々の世界では第一次世界大戦が始まった年として認識されているが、本作で描かれるのはその直前だ。この大戦は、近年では『ワンダーウーマン』や『1917 命をかけた伝令』などでも取り上げられた。前者では、敵味方の苛烈な銃撃に曝される無人地帯(ノー・マンズ・ランド)を、人間(マン)でも男性(マン)でもないワンダーウーマンが一歩一歩進んでいくシーンが、後者では、味方を救うための情報を前線に届けようとする若き兵士を擬似的なワンカットで追い続けるカメラワークが非常に印象的であった。そのため、本作に課されたハードルは高い。

しかし、監督のマシュー・ヴォーンは、観客が見慣れた素材にまた新たな風味を足している。実際の出来事は正確に、詳しい記録の残っていない部分は誠実に、だが自由に描くことで、虚実入り交じる大変魅力的な歴史アクション大作を作り上げた。主人公であるキングスマン所属の貴族オックスフォード公爵とその息子コンラッドはもちろん架空のキャラクターだが、大戦を引き起こそうと画策している秘密組織のメンバーとして、不死身と言われた怪僧ラスプーチンや、ダンサーでありながらドイツ・フランスの二重スパイとなったレディ、マタ・ハリなど、実在の人物が複数登場する。

ラスプーチンは、実際に残っている“伝説”がすでにフィクションのようにしか思えない興味深い人物だ。「過激」が売り文句の本シリーズらしく、マシュー・ヴォーンはそこにもまた愉快な要素を加えている。コサック・ダンスの動きなどを取り入れた、踊りのような戦闘スタイルで相手を圧倒するのだ。中世ヨーロッパでは、当時不治の病であったペストの恐怖を前に踊り狂う人々を描いた「ダンス・マカブル(死の舞踏)」なる絵画が流行した。ラスプーチンが踊るのは、さまに死の舞踏なのだ。

いかにラスプーチンが強敵と言えど、我らがオックスフォード公爵も負けてはいない。演じているレイフ・ファインズは、シリーズいちの紳士の座を守ってきたコリン・ファースを蹴落とさんばかりの勢いだ。『ハリー・ポッター』シリーズの恐ろしきヴォルデモート卿(おっと、“名前を言ってはいけないあの人”だったかな、失礼)と同一人物とは思えない。「ヴォルデモート(Voldemort)」のスペルの中にはフランス語で死を意味する「mort」が含まれているが、オックスフォード公爵は決死の戦いの中にあっても生を諦めない。青きコンラッドが勇敢さを示すため戦場に出ようとするのを快く思ってもいない。紳士であることは必ずしも“男らしく”あることとイコールではない。実に魅力的なキャラクターだ。

ところで、「ワクチン(vaccine)」の語源をご存じだろうか。ラテン語の「雌牛(vacca)」である。そして、「オックスフォード(oxford)」の「ox」とは雄牛のことだ。雄か雌かの違いはこの際置いておいて(些末なことには目を瞑るのが紳士というものだ)、オックスフォード公爵の掲げる平和主義はラスプーチンや戦争に対抗するためのワクチンなのだ。人類に克服できないウイルスはないと信じ、感染対策を済ませた上で、上映時間に送れぬよう劇場に急ぎたまえ。礼節(マナー)が人を作るのだ。それでは、ごきげんよう。

【ストーリー】
──1914年。世界大戦を密かに操る謎の狂団に、英国貴族のオックスフォード公と息子コンラッドが立ち向かう。 人類破滅へのタイムリミットが迫る中、彼らは仲間たちと共に戦争を止めることができるのか? 歴史の裏に隠されたキングスマン誕生秘話を描く、超過激スパイ・アクションシリーズ待望の最新作。 最も過激なファースト・ミッションが始まる!

【キャスト】
レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン、ジェマ・アータートン、リス・エヴァンス、ジャイモン・フンスー

【スタッフ】
監督・脚本・製作:マシュー・ヴォーン

公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingsman_fa

© 2021 Twentieth Century Studios. All rights reserved.

12月24日(金)公開

 

■関連記事

【瀬田ミナコのシネまんぷく】第89回:『キングスマン』|チーズバーガー+秘密のソースがワインに合う!?ヴァレンタイン氏のマクドのすすめ。

ムービーマービーに新コンテンツ誕生!大好きな映画からモテ技術を会得し、彼女獲得を目指す!果たして彼女を作ることはできるのか?
第一回は #キングスマン から学ぶモテ技!#映画モテ塾

【みてみて!】J・ボンド、J・ボーン、J・バウアーもビックリ!?高級テーラーの正体はスパイ機関!! キングスマン

【今夜何観る?】世界ビール・デー!ビールがめちゃくちゃ飲みたくなる映画特集④『キングスマン』英国紳士のパブでのセリフがかっこいい。ギネスを飲みながら斬新爽快ノンストップのアクションを楽しもう!

【キングスマン ゴールデン・サークル】インターナショナル予告が解禁!公開はいつ?!とっても待ち遠しいには訳がある?気になるハリーの行方に熱視線 #コリン・ファース #タロン・エガートン

バックナンバー