MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』“大虐殺(カーネイジ)あれ”?いや、ヴェノムよ、自分らしくあれ!

◆今週公開の注目作
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

さあ、待ちに待った(?)『ヴェノム』の続編である。映画への期待値が人によって違うのは言うまでもなく当たり前のことだが、本作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の場合はそれが特に顕著なのではと予想する。なぜか。もちろん、原因は前作にある(貶していると思われるだろうが、そうではない)。前作はちゃんとヒットはしたが、期待していた内容と違ったために劇場で面食らった方もいただろう。かくいう筆者もそのひとりである。

『ヴェノム』は、とにかく凶悪な内容だという風に宣伝されていた。この2年前にはすでに同じマーベル・コミックスの『デッドプール』がR15+で公開されており、激しい残酷描写があっても楽しめるスーパーヒーロー映画が作れることを多くの観客が知っていた。そんな中、原作ではスパイダーマンの敵であるヴェノムが主人公の映画なのに加え、「最悪」とか「残虐」という言葉で焚き付けられたものだから、『ヴェノム』の残酷描写に過度な期待をしてしまったのだ。

しかし蓋を開けてみれば、レーティングはPG12。いつでも腹ペコのヴェノムがタイヤキよろしく人間を頭からガブリといくシーンなどは何度か登場するものの、目を背けたくなるような描写は画面に登場しない。流血もほとんどない。さらに、ヴェノム自体が「毒」を意味するその名に相応しく悪辣なキャラクターなのかと思ったら、かぶりつく相手は悪人ばかりだし、ヴェノムが吹っ飛ばした善人たちは死んでいない(多分)。同じような映画が前にもあった。(「ザ」がつかない方の)『スーサイド・スクワッド』だ。同作は悪役(ヴィラン)たちを主人公にした映画だったが、観てみると別に極悪な連中ではなかった。レーティングもGだった上、期待していたのと違うマイルドな口当たりのために観客の支持を得られず、半ば存在をなかったことにされてしまった。…

残酷描写の話ばかりして不謹慎な人間だと思われそうなので(実際そうだが)弁明しておくと、そういった描写は辛味のようなものだ。ご存じの方も多いだろうが、辛味とは味覚ではなく痛覚で感じられる。どちらも刺激物なのだ。辛さは癖になり、期待よりも刺激が弱ければ物足りなくなる。『ヴェノム』はものすごく辛そうなカレーに見えたのに、汗も出ないまま平らげられたわけだ。だが、「期待はずれだった」という感想で話を終えるのはもったいない。

 

主人公エディ・ブロックは、シンビオートと呼ばれる地球外生命体の一体ヴェノムに寄生されている。エディの意思とは別に、四六時中ヴェノムが頭の中で話しかけてきたり、身体を勝手に動かしたりする。この二重人格的なキャラクターをトム・ハーディが一人二役で演じている。その芸達者ぶりは、『ファイト・クラブ』のあの役者(一応名は伏せる)を見ているようだ。前作で、負け犬であるという共通点のある2人は良い凸凹コンビになった。ボケとツッコミと言っても良い。少なくとも今のところ、『ヴェノム』シリーズはマーベル・コミックスの映画化作品ではあるがソニーが製作しているので、MCUとは繋がりがない。しかし、MCUと同じで、結局のところはコメディなのだ。「辛くない=美味しくない」ではない。辛味の代わりに、甘味(笑い)、酸味(切なさ)、旨味(アクションシーン)がしかと感じられる作品だ。

本作には、天地創造の際に神が発した言葉「レット・ゼア・ビー・ライト(光あれ)」に引っかけた『レット・ゼア・ビー・カーネイジ(大虐殺あれ)』という物騒なタイトルが付いているが、レーティングはGで前作よりライトであるし、やはりコメディとして見ることをオススメする。ヴィランのカーネイジ/クレタス・キャサディを演じるウディ・ハレルソンは、オリバー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』にも出演していた。今回もまさに“生まれついての殺人鬼”という感じで、そのキャスティングに笑ってしまう。シンビオートたちは基本的には凶暴で、「毒」や「大虐殺」、「暴動(ライオット)」なんてやはり物騒な名ばかり持っているが、その社会で負け犬だったヴェノムは、きっとそもそも悪ではないのだろう。その名を冠しているこの映画シリーズも同じなのだ。この記事を読んでお腹が鳴っても、くれぐれも人だけは食べないようにしていただきたい。そして、エンドクレジットが始まってもすぐに席を立たないように。

【ストーリー】
取材中のエディに噛みつき、その血液を体内に取り込んだクレタス。エディの血液の中に生息していた地球外生命体シンビオートが、クレタスの体内で、その狂気に触れ、結合。おびただしい数の赤い触手が身体中を蝕み、増殖し、カーネイジが誕生する。その高い戦闘能力と残虐性で、収監されていた刑務所の受刑者や警官を無差別に虐殺していくカーネイジ。〈大殺戮〉が始まった。世に放たれたクレタスの目的は愛するシュリークの奪還。シュリークは音波であらゆる物を破壊する「叫び声」を持っており、その凶暴性から彼女も収監されていた。カーネイジとシュリーク、二つの狂気がいま一つになろうとしている――。

【キャスト】
トム・ハーディ、ミシェル・ウィリアムズ、ナオミ・ハリス、リード・スコット、スティーヴン・グレアム、ウディ・ハレルソン

【スタッフ】
監督:アンディ・サーキス
脚本:ケリー・マーセル
原案:トム・ハーディ、ケリー・マーセル

公式サイト:https://www.venom-movie.jp/

バックナンバー