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【今週公開の注目作】『廃用身』 社会を打ち震わすこの提言を、あなたは切って捨てることができるだろうか。

◆今週公開の注目作

『廃用身』
5月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

[断捨離](だんしゃり):不要な欲求を断ち、無益な物を捨て、あらゆる対象への執着から心を離して悟り・解脱を目指す試み。

――医学用語で「廃用身」という言葉がある。麻痺などで動かなくなったまま、回復する望みもなくなった四肢を指す(寝たきりや活動性の低い状態が長期間続くことで、筋力低下や床ずれなど心身に悪影響が出る状態を廃用症候群という)。廃用身となった手足はかつてのようには二度と動かせないのに、痛みと、血行の悪さのため冷えを感じる。ただでさえ弱った身体にとって、その手足は文字通りの重荷なのだ。本人のみならず介護者にも大きな負担となるので、近年革新的な治療……ではなく、介護ケアが提唱されている。

その名も「Aケア」。Aは「Amputation(切断)」の頭文字を取っており、本人の希望で廃用身を切断することで生活や介護の質を向上させるのを目的としている。もう動かない部位ではなくまだ動かせる部位に着目し、過去の代わりに未来を見据えてもらおうとしているのだ。切断など、あまりに乱暴な処置と思われるだろうか? しかし、例えば脳が“ショート”するてんかんの場合だと、脳全体に影響が出るのを避けるため左右の大脳半球を繋ぐ脳梁(のうりょう)を切断し症状を和らげる方法が実際に用いられている。廃用身の切断は言わば、身体の“断捨離”である。「親からもらった身体を傷つけるなんて」という一般的な発想にとらわれない、真に患者やその家族に寄り添った新時代の医療サービスに他ならない。

……「Aケア」については初耳だろうか? 当然だ。そのような“医療”など存在しない。「廃用身」というのも原作者の造語だ(ついでに、厳密に言えば「断捨離」も仏教用語ではなくヨガの「断行」「捨行」「離行」の思想に基づいた造語らしい)。本作『廃用身』は今から20年以上も前に出版された、医師であり作家の久坂部羊の衝撃的なデビュー作の映像化である。あり得るような、あり得ないような、あり得てたまるかと思ってしまうようなSFにもありそうな設定だが、彼は実際に永久に眠れる四肢に苦しめられている患者のリアルな声からこの作品を書き上げた。主人公の医師、漆原は善意からこの廃用身切断を思いつき、処置を受けた患者は血流が良くなった影響か、執着を手放した影響か、人生に絶望し鬱屈した様子から見違えるように明るくなっていく。これは本当に救いなのか、果たして……。

筆者は大のホラー好きである。そのため、人体が破壊されたり欠損したりする描写は見慣れている。そのような描写はホラー映画の特権と思いがちだが、どうやらそうではなかったようだ。演出がエンタメ性やホラー性を排しているので、半ばドキュメンタリーのようにすら見える。それがむしろ悍ましさを助長している反面、Aケアは非常に合理的でメリットもありそうなリアリティを感じるので、自分が単に常識に執着した、介護の現場に無理解な人間にも思えてくる。SF映画『インターステラー』ではこう語られる。「運動の第3法則。前に進むには、何かを後ろに置いていかねばならない」。出版当時は映像化不可能と言われた作品がこうして映画になったのは、時代が追いついたからだろうか? Aケアは“まだ”存在しないが、廃用症候群に苦しむ患者は大勢いるし、てんかんの脳梁離断術はすでに大勢を救っている。タイムスリップなどしなくとも、その未来はすぐそこまで迫っているのかもしれない。その時、人々が打ち震えるのは恐怖によってなのか、歓喜によってなのか、一体どちらなのだろう……。

【ストーリー】
ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りの間で、漆原院長が考案した“画期的な”治療が密かに広まっている。究極のコスパの良い介護を目指すその医療行為は、<廃用身>(麻痺などにより、回復見込みがない手足のこと)をめぐる、従来の常識を覆すものだという。その結果、「身体も心も軽くなった」、「厳しい性格が柔らかくなった」などと予想外の“好ましい副作用”が現れたという。噂を聞きつけた編集者・矢倉は、老齢期医療に革命を起こす可能性を感じ取り、漆原に本の出版を持ちかける。しかしやがて、デイケアに関するとある内部告発が週刊誌に流出。さらに、患者宅で起きた衝撃の事件をきっかけに、すべてが暗転していく――。

【キャスト】
染谷将太、北村有起哉、六平直政、瀧内公美、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄 他

【スタッフ】
監督・脚本:田光希
原作:久坂部羊 『廃用身』

 

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