『ポトフ美食家と料理人』登場する美食がとにかく美味しそうでお腹がすく…傑作グルメ映画！

2023.12.13

◆今週公開の注目作

カンヌ国際映画祭〈最優秀監督賞〉受賞／アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表
名匠トラン・アン・ユンが描く、愛と人生を味わう感動の物語

『ポトフ美食家と料理人』

この映画を観ていての率直な感想は「お腹がすく映画」だ。何と言っても、劇中の多くの時間調理シーンを観せられるのだ。そう感じてしまっても仕方がないことだろう。美食家と、その美食家が考案するレシピを完璧に再現する調理人。この2人の物語と、数々登場する美味しそうな美食を楽しむ。それが本作『ポトフ美食家と調理人』だ。

この作品の見どころの一つは間違いなく調理シーン。この調理シーンはワンカットで撮影されており、肉や魚を焼いたり煮たりする音も、劇伴をあえて挿入しないことでより引き立てている。照明も自然光をメインにしており、その映像美は見事としか言いようがない。この時のカメラワークも本当に見事で、クローズアップが入ったかと思えば、ワイドな映像が入ったりして、しかもそれらが流れるように繋がっていく。いやはや、美味しそうな調理を、美しい映像とカメラワークで観せられると、余計にお腹がすいてしまう。

この映画に出演しているのはジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメル。ジュリエット・ビノシュと言えばアカデミー賞はもちろん、世界三大映画祭の全てで女優賞を受賞した名女優。そしてブノワ・マジメルはかつてハネケの『ピアニスト』で、イザベル・ユペールの相手役を演じた俳優である。あの時は若かったが、こんなに貫禄のある俳優に成長していたとは。時が経つのは早い・・・。

この作品は、もちろん美食についての映画でもあるが、同時に美食家と調理人の物語も描いている。夫婦と言う関係ではないが、夫婦と同じぐらいの長い時間を共に過ごしてきた2人は、プロフェッショナルな関係であると同時に、それ以上の関係でもある。調理人であるウージェニーが病に倒れた時に、美食家のドダンは単に調理人を変えるのではなく、彼女のために料理を作った。2人の関係性がどう変わっていくのか、ここも大きな見どころだ。

とまぁ色々書いてはみたものの、やはりこの映画を観た時の感想は素直に「美味しそう」だった。筆者自身、美食はあまり縁が無いし、そこまで興味もなかったが、たまにはこういう料理を食べてみるのも良いかもなと思わせてくれた。本作は美味しい気持ちを味わえる、傑作グルメ映画だ。

【ストーリー】
食〉を追求し芸術にまで高めた美食家ドダンと、彼が閃いたメニューを完璧に再現する料理人ウージェニー。二人が生み出した極上の料理は人々を驚かせ、類まれなる才能への熱狂はヨーロッパ各国にまで広がっていた。ある時、ユーラシア皇太子から晩餐会に招待されたドダンは、豪華なだけで論理もテーマもない大量の料理にうんざりする。〈食〉の真髄を示すべく、最もシンプルな料理〈ポトフ〉で皇太子をもてなすとウージェニーに打ち明けるドダン。だが、そんな中、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンは人生初の挑戦として、すべて自分の手で作る渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようと決意するのだが──。

【キャスト】
ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル　ほか

【スタッフ】
監督：トラン・アン・ユン
脚本・脚色：トラン・アン・ユン
料理監修：ピエール・ガニェール
配給：ギャガ
原題：La Passion de Dodin Bouffant/2023/136分/フランス/ビスタ/5.1chデジタル/字幕翻訳：古田由紀子
(c)2023 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA

公式HP：https://gaga.ne.jp/pot-au-feu/
公式Twitter：@Pot_au_Feu_1215

12月15日(金) Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか　ほか全国順次公開