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『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~』溢れ出る愛、愛、愛..。愛を知る全ての人に届け!人生は「ロック」だ!!

◆今週公開の注目作

『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~』

 

文:抹茶猫(今年こそホラーを克服したい)

シーナ&ロケッツ?鮎川誠?本作の顔とも言える2つのキーワードだが、筆者にとって、お初にお目にかかる未知の存在であった。曲は聴いたことがあるが誰のか分からない..というあるあるパターンからも外れ、彼らが世に送り出した音楽もまた、全てお初にお”耳”にかかるもの。加えて、筆者はロックにもドキュメンタリーにも特別関心があるわけでもないときた!正直なところ、そんな状態では本作を目一杯楽しめないのではないか?と、不安を抱えながら作品の世界に足を踏み入れることとなったのだが、飛び込んできたのは溢れんばかりの”愛”だった。1人の男が生涯をかけてロックを、そして家族を愛し抜いたその姿が赤裸々に、スクリーン一杯に映し出される。そしてその映像の数々がまるで「何かを、誰かを愛し続けることってこんなにも素敵でカッコいいんだぞ!」と語りかけてくるかのよう。そう、この作品は今何かを、そして誰かを全力で愛する全ての人々に捧げる物語となっているのだ。

©RKB毎日放送/TBSテレビ

話はいきなり変わって学校や職場、日常生活といった様々なシチュエーションにおいて度々訪れる「環境の変化」は誰しもが経験のあるところだろう。そしてその度、初対面の人とコミュニケーションを図り、打ち解け、何かしらの関係を私たちは築いてきたはずだ(もっとも、そうならない場合も往々にしてあるが)。筆者の場合、そうした場合にいつだって助けてくれたのが”好きなもの”だった。高校2年の時、たまたまテレビで見かけたプロレスの試合に惹かれ、みるみるその世界にハマった数年後、入学した大学で当時の筆者を遙かにしのぐプロレス愛に溢れたクラスメイトの1人と意気投合した記憶が今も鮮明に残っている。やはり”好きなものが一緒”、”同じものを愛している”という事実は否が応にも、人と人とを繋ぎ、結びつける強い力を秘めているのだ。ご多分に漏れず、本作でスポットが当てられるシーナ&ロケッツにも同じ事がいえる。

©RKB毎日放送/TBSテレビ

福岡・博多のダンスホールでギターをかき鳴らすとある男性の姿に魅了された1人の女性は、男性が所属していたバンド「サンハウス」のファン第一号となった。そんな2人を繋いだのは”ロックが好き”という事実。同じようにロックを愛し、同じようにロックに魅せられていたこの2人がまさしく、のちにシーナ&ロケッツを結成するシーナ(本名は副田悦子。バンド結成後にシーナと名乗るように)と鮎川誠である。同棲、結婚を経て2人はロック街道をひた走っていくこととなる。結成翌年の79年発表の「ユー・メイ・ドリーム」が大ヒットし、一躍多くのロックファンを虜にした・・・とは言うものの、そもそもこのバンドを知らない、またロックに明るくないという方には「この人たちはスゴい」という漠然とした印象しか与えかねないだろう。かくいう筆者も99年生まれかつ前述の通りロックにはてんで関心を持ってこなかったこれまでの人生だ。ではこの映画はシーナ&ロケッツのファンしか楽しめないのかと言えば、それはノーだ。何度でも声を大にして言わせて頂きたい。本作は愛に次ぐ愛!愛が溢れて止まらない!!必ず最後に愛は勝つ!!!な物語なのだ。

©RKB毎日放送/TBSテレビ「Photo by Bob Gruen」

その愛はシーナと鮎川がロックに捧げたものにとどまらない。本作のナレーションも務める俳優の松重豊をはじめ、数々の著名人を含めたファンの愛やシーナ&ロケッツの結成に携わった人々の愛、そして、ある1つの家族の愛。数多の愛が本作を形作っている。そしてシーナは「ロックするってことは、着る服も、生活も、食べるものも全部含まれると思って」と語り、鮎川も「生活とロックはイコールという世界に、シーナが引き込んでくれた」と語る。つまるところ、2人にとってロックとはそれすなわち”人生”なのだ。「好きなことに持てる力と愛を注ぎ続けること」がいかにカッコよく誇らしい行いであるかを本作は力強くも、優しく私たちに説く。

©RKB毎日放送/TBSテレビ「Photo by Hiroki Nishioka」

最後に、シーナ&ロケッツの世界に本作で初めて触れた筆者が最も印象に残ったポイントを挙げたい。作中に1枚の写真が登場する。神社と思われる場所で撮影された鮎川一家の写真だ。3人の娘の両脇に父(鮎川)と母(シーナ)が立っている。おそらく何か厳かな行事が行われた日なのだろうか、皆一様に黒を基調とした服装に身を包んではいるのだが、シーナは1人、まぶしい白の上着を纏って、こちらに白い歯を見せている。一方、3人の娘たちをはさんで逆側にたつ鮎川は後ろで手を組んで、ゆったりと自然体で構えているように映る。一見なんてことのない家族写真かと思うかも知れないが、本作を鑑賞後に改めてこの写真を見た時、きっとシーナ&ロケッツとしての生き様と鮎川家の父と母/夫と妻としての生き様がこの1枚に凝縮されている、と感じて頂けるのではないかと思う。

©RKB毎日放送/TBSテレビ

ちなみに『呪術廻戦』を愛してやまない筆者は鑑賞後、主人公・虎杖の名台詞「生き様で後悔はしたくない..!」が頭に浮かんだ。何度苦境にさらされても亡き叔父の言葉を胸に呪霊と戦い続ける虎杖の姿が、どんな運命も受け入れてステージに立ち続ける2人と重なる。命の続く限り、”好き”を全身全霊で体現し続けた鮎川とそんな彼を支え続けたシーナの生き様は、往年のファンだけでなく”推し活”に励む若者にだって、きっと届くに違いない。さぁ、各々の推しグッズ片手に、愛に溢れたロックな世界へ飛び込もう!

鮎川家の三女であるLUCY MIRROR(写真中央)が、2015年2月にこの世を去ったシーナの後を継ぎ、新生シーナ&ロケッツのヴォーカルに。©RKB毎日放送/TBSテレビ

【ストーリー】
シーナ&ロケッツは、1978年の結成から途切れることなく活動を続けたロックバンド。夫婦であるギターの鮎川誠とヴォーカルのシーナは日本のロックアイコンとして数多くのミュージシャンからリスペクトを受けると同時に、気さくであたたかな人柄から様々な年代のファンに親しまれてきた。だが2015年にシーナが病でこの世を去る。ヴォーカル不在となり存続さえ危ぶまれたバンドで、ただ1人活動続行を心に決めていた鮎川。「シーナに会える場所になった、ステージが」彼の優しさとロックへの愛はとどまるところを知らなかった___。これは、最期までステージにこだわった男とその家族の物語。

【キャスト】
鮎川誠、シーナ、鮎川陽子、鮎川純子、LUCY MIRROR、唯子
ナレーション:松重豊

【スタッフ】
監督・編集:寺井到
撮影:中牟田靖、宮成健一、丸本和也
編集:高尾将
音効・MA:寺岡章人
©RKB毎日放送/TBSテレビ

公式サイト:https://rokkets-movie.com/
公式X:https://twitter.com/rokkets_movie

8月25日(金)角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

 

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