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『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』/“新しい『ロッキー4』”という不安と興奮

◆今週公開の注目作

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』

 

文:稲生D(共感シアター)

2021年、コロナ禍のステイホーム中、シルヴェスター・スタローンが『ロッキー4』を再編集しているらしいという情報が入ってきた。その“新しい『ロッキー4』”は、アメリカですら1夜限りの劇場上映だったため、日本で見られることはないだろうと思っていた。

しかし『ロッキー』を愛する映画会社の方々のご尽力もあり、新生『ロッキー4』こと、『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、ここ日本ではロードショーという形で8月19日より劇場で公開される。36年の時を経て、それも新しい『ロッキー4』が劇場で見れるというのだ。なんとありがたいことだろう。

このシリーズは、1976年の『ロッキー』から始まり、長い歴史の中にブランク期間もあり、ファンも「どのロッキーから入ったか」で思い入れもそれぞれだろう。

筆者が最も思い入れがあるのは『ロッキー4』。小学校高学年時に出会い、ロッキーと冷徹な戦闘マシーン・ドラゴによるアメリカとソ連の代理戦争をド派手に描いた(ガキの頃の自分にはそう見えていた)ボクシング映画は最高にカッコよかった。

ドラゴの恐ろしさに心底震えあがり、ロッキーのトレーニングシーンを繰り返し鑑賞し、近所の裏山を駆け上って「ドラゴォ!」と叫んだ。学校で友達とラストパンチの左フック(ロッキーはサウスポー)を何度もマネをしたのもいい思い出だ。

サントラも自分史上ベストのひとつ。当時近所のお兄さんからサントラを貸してもらい、カセットテープにダビング。何度も何度も聞いたおかげで、初めて覚えた英語の歌はトレーニングシーンを彩る最高にアガるナンバー「Hearts On Fire」。カセットテープからCD(のちにサントラを自分で購入)、MD、そして音楽がデータになった今でもこの曲は常にプレイリストに入っていて、人生で最も聞いている歌であることは間違いない。

そんな『ロッキー4』だが、大人になって冷静に見てみると色々分かることもある。確かに本編が短いわりに、ちょっとゴキゲンがすぎる余計なシーンがある。MTV時代とはいえ、本編で4曲もフルで歌を流す(「Hearts On Fire」に至っては2回流れる)のはやりすぎに見えなくもない。東西冷戦が時代背景にあったことで、アメリカ人が単身ロシアに乗り込んでソ連を倒す、というプロットだけ見ればプロパガンダにも見えるだろう。『ランボー2/怒りの脱出』が同じ1985年公開だったこともあり、「強いアメリカ=スタローン(ロッキー)」の印象がさらに強くなったのかもしれない。

それでも、この作品が筆者の少年時代を彩った重要な作品であることに違いはなく、ドルフ・ラングレンというアクションスターを生み出し、流れる曲のシーンの見せ方も聞かせ方も最高。トレーニングシーンで名曲「GONNA FLY NOW」が流れない異端作品でありながら、そのことを感じさせない名曲の数々。時代的にプロパガンダに見えるのは仕方がないとしても、ロッキーは単なる盟友アポロの雪辱のためではなく、自分を追い込み、戦う覚悟を求めてソ連に乗り込んだ。そして国家を超えて男と男がスポーツで殴り合い、「人は変われる」ということを証明して見せたのだ。(そんな映画に最低映画のレッテルを貼ったラジー賞には心底ガッカリである)

そんな思い入れたっぷりの『ロッキー4』だけに、今回新たに40分以上の未公開映像が加えられ、『ロッキー4』が生まれ変わると聞いたときは嬉しい反面、不安もあった。

ひとつはスタローン御大がどうやら“オレの大好きな『ロッキー4』”をどうやら気に入っていないらしいということ。さらに不安なのは『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』の本編尺だ。オリジナルの本編は91分で、42分の未公開映像が追加されたら133分程度になるはずだ。なのに本編は94分と3分延びただけ。これは大変だ。

わざわざ改変するのだからスタローンはきっとドラマを厚くするはず。となると、トレーニングシーンの「Hearts On Fire」が削られるんじゃないだろうか。あのゴキゲンなジェームズ・ブラウンの「Living in America」はどうなるのか。愛車のランボルギーニ(車のナンバーが「SO(U)TH PAW」!)をかっ飛ばしながら葛藤する「No Easy Way Out」はきっとなくなるよね…。過去に名作を改変し、改悪になった事例は多々ある。オレの好きな『ロッキー4』は一体どうなってしまうのだろうか。

しかしフタを開けてみれば、そんな不安は杞憂に終わった。

詳細なネタバレは避けるが、ドラマに水を差すシーンをそぎ落とし、キャラクターに深みを与えるシーンが追加、ドラマチックなシーンはさらにドラマチックなものに差し替えられた。トレーニングシーンやファイトシーンはアングル変更や細かい編集が施され、あまりに細かく変わっているため、初見ですべての変更を見抜ける人はいないだろう。これほどの映像が残っていたことに驚かされる。

特に前半は大きく変更され、ドラマ部分が増加。そのことが後半のトレーニング、ファイトシーンにも厚みを生み出し、全体のドラマへの印象はオリジナルとは比べ物にならないほど重厚なものに変貌している。映像も4Kになり、近年の映画に引けを取らない画質にアップ。さらに驚くべきは音響編集だ。1985年から映像編集技術も進歩し、チャンネル数は格段に増加。ファイトシーンのSEもさることながら、本作の大きな魅力である音楽もさらに魅力がアップ。そう、あの名曲たちは、尺はそのままにカットされるどころか素晴らしい音と新たな映像が加わっているのだ。『ロッキー4』のその後が描かれた『クリード2/炎の宿敵』だけでもあんなに幸せだったというのに、まさかこんなにいいものが見れるなんて。

スタローン御大は無粋なことはしない男だった。疑ってすいませんでした!

8月19日から公開の新生『ロッキー4』こと『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、確実に僕らが愛した『ロッキー4』である。36年を経て、さらに魅力を増して帰ってきた奇跡の1本だ。可能なら、オリジナルと新作を横に並べて鑑賞したいというもの。それができるようになるまでは劇場で何度でも見るしかない。

【ストーリー】
王者アポロ・クリードとの戦いを経て、チャンピオンとなったロッキー・バルボアの前にソ連から“殺人マシーン”イワン・ドラゴが現れる。ドラゴとの激戦によって、ライバルであり親友のアポロを失ったロッキーは、対ドラゴ戦のため、ソ連へ乗り込むが……。

【キャスト】
シルべスター・スタローン、ドルフ・ラングレン、タリア・シャイア、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、バート・ヤングジェームズ・ブラウン、トニー・バートン、マイケル・パタキ、ロバート・ドーンニック、ストゥ・ネイハン

【スタッフ】
監督・脚本・主演:シルべスター・スタローン
撮影:ビル・バトラー
編集:ジョン・W・ウィーラー、ドン・ジマーマン
音楽:ヴィンス・ディコーラ

主題歌:サバイバー テーマ曲:ビル・コンティ
原題:「ROCKY IV: ROCKY VS. DRAGO」
配給:カルチャヴィル/ガイエ
2021/アメリカ/94分/5.1ch/ ワイドスクリーン(シネスコ 2.35:1)
(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

公式HP:https://www.culture-ville.jp/rocky4
公式twitter:@rockyvsdrago_jp

8月19日(金)、全国ロードショー

 

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