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『ゴーストバスターズ/アフターライフ』人は死んでも残り続ける。本作こそまさに“キュートなゴースト”だ！

◆今週公開の注目作
『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

文：屋我平一朗（日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー）

最近では数十年ぶりの続編やリブートは全く珍しくなくなったし、筆者もそういった作品を何度か紹介してきた。この『ゴーストバスターズ』シリーズでも、2016年にはすでに女性キャストがバスターズを演じたリブート版が作られている。『ゴーストバスターズ/アフターライフ』はそのリブート版とは関係がなく、『ゴーストバスターズ2』の33年ぶりの続編である。これが往年の人気シリーズの宿命と皮肉るのは簡単だが、実際本作は他とは一線を画す存在だ。なぜなら、本作の監督はジェイソン・ライトマン。オリジナル版を手がけたアイヴァン・ライトマンの息子だからだ。

やはりと言うべきか、これまでジェイソンは幾度も「『ゴーストバスターズ』の続編を作らないのか」と尋ねられてきたようだ。ジェイソンは決して親の七光りでなく、『JUNO/ジュノ』と『マイレージ、マイライフ』でアカデミー監督賞にノミネートされるなど高い評価を受けているが、ことあるごとにゴーストのようについて回る父親の影(アイヴァンは今もご健在だが)に悩まされてきただろうことは想像に難くない。基本的な作風は親子そろってコメディではあるが、ジェイソンの作品はこぢんまりとしたものが多く、父親とはまた別の道を進んでいるのは明らかだった。

しかしここでついに、その道が交わった。6歳の時に1作目の撮影現場に足を踏み入れたジェイソンは世界初の『ゴーストバスターズ』ファンとなり、そして自身がその続編を手がけることになった。…実は、10年以上前には2作目の続編となる3作目をアイヴァンが監督して作る計画があった。しかし結局、それは上手く行かずにアイヴァンは降板、3作目は続編ではなくリブートという形で作られた。本当は、ビル・マーレイ演じる主人公ピーター・ヴェンクマンが冒頭で死に、ゴーストの姿で登場したり、女性のメンバーが物語を引き継いでいくというストーリーだったようだ。失敗の理由はいくつかあるが、一番大きいのはこれだろう。バスターズのひとり、イゴン・スペングラーを演じたハロルド・ライミスが本当に死んでしまったのだ。

そのため、本作はピーターではなくイゴンが死ぬ場面から始まる。イゴンには疎遠になっていた娘、シングルマザーのキャリーがおり、一家は家賃が払えずイゴンが住んでいた田舎へ引っ越してくる。科学者であった父親への複雑な思いから、科学に対しても苦手意識があるキャリーとは対照的に、孫のフィービーはイゴンに似て人と打ち解けにくいが科学への情熱を燃やす女の子だ。ボサボサの髪やメガネもイゴンにそっくりで、天才子役のマッケナ・グレイスがキュートに演じている。装置に捕獲されていたゴーストを逃してしまったことで、祖父の正体も知らなかったフィービーは奇しくもゴーストバスターズとして活動せざるを得なくなる。

もちろん、マシュマロマンなど、ファンにはお馴染みのキモかわいいゴーストが多数登場して楽しませてくれるが、最も嬉しいのはその精神性が変わっていないことだ。ファンを自称する監督が、オリジナルの要素をごちゃ混ぜにして続編を作ったのとは訳が違う。ジェイソンは、あの世(アフターライフ)のハロルド・ライミスのために、そして頓挫してしまった75歳の父親のライフワークを引き継ぎ、ライトマン家のレガシーとして残すために(ちなみに「アフターライフ」には「余生」という意味もある)、フィービーに自身を重ね本作を作り上げたのだ。本シリーズではゴーストは退治されるものであるが、そもそもゴーストとは何だろうか。肉体を失っても残り続けるそれは、きっと精神だ。“思い”と言い換えても良い。本作は永遠に消えないでほしい“ゴースト”もいると教えてくれる。

【ストーリー】
都会での生活が苦しく、母と兄の３人で田舎町へと引っ越してきたフィービー。この街では、30年間にわたり原因不明の地震が頻発していた。祖父が遺した古びた屋敷で暮らし始めたフィービーは、リビングの床にほどこされた奇妙な仕掛けに気づく。さらに屋敷を探るフィービーが祖父の地下研究室で目にしたのは、見たことのないハイテク装備の数々だった。祖父がかつてゴーストだらけのニューヨークを救った《ゴーストバスターズ》の一員だったことを知ったフィービーだったが、床下でみつけた〈ゴーストトラップ〉と呼ばれる装置を誤って開封してしまう。それをきっかけに不気味な緑色の光が解き放たれ、街ではさらなる異変が起こり始める・・・

【キャスト】
マッケナ・グレイス／ポール・ラッド／フィン・ウルフハード／キャリー・クーン／ローガン・キム／セレステ・オコナー

【スタッフ】
監督：ジェイソン・ライトマン
脚本：ギル・キーナン／ジェイソン・ライトマン
製作：アイヴァン・ライトマン

配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト：https://www.ghostbusters.jp/

2022年2月4日（金）全国ロードショー

 

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屋我 平一朗

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