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【今週公開の注目作】『おさるのベン』水入らずの関係は血によって終わりを告げる。

◆今週公開の注目作

『おさるのベン』
2026年2月20日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

筆者は動物が苦手である。リアルな人間関係を嫌って二次元の世界に逃避する人がいるが、動物に関しては筆者も二次元で良いと思っている。ペットを飼わない理由は、その命に責任を持てないからだ。ではそもそも近づきたくない理由は何かというと、怖いからだ。人間が相手の場合でさえその思考や行動が読めないのに、動物ならばなおさら。別に動物に襲われた経験などないが、どれだけ可愛がったとしてもいつかその牙で、その爪で傷つけられる日が来るのではないかと恐れてしまう。被害妄想に近い。それは分かっている。だが、本作『おさるのベン』を見てもこの恐れをただの被害妄想と片付けられるだろうか?

本作は、『おさるのジョージ』を思い出させる邦題からは遠く遠くかけ離れたアニマルパニックホラーだ。主人公ルーシーの一家が飼っているペットのチンパンジー、ベンは非常に頭が良く、言語学者だった今は亡きルーシーの母が遺したタブレットを用いて人間とコミュニケーションができる。ところがマングースに噛まれたために狂犬病に侵され、一家を襲うようになってしまうのだ。ペットがいきなり飼い主に牙を剥くようになる恐怖を描いた作品だとスティーヴン・キング原作の『クジョー』が鉄板で、本作のヨハネス・ロバーツ監督も同作にインスパイアされたと認めている。こちらで扱われているのは狂犬病の犬だが、愛する存在に殺されかけるという悲しい恐ろしさはゾンビ映画にも通ずるものがある。

『ジョーズ』、『ピラニア』、最近だとイドリス・エルバ主演がライオンに襲われる『ビースト』など凶暴な動物を描いた作品はいくらでもあるが、それらの動物に比べるとチンパンジーは比較的危険度が低いと思われるかもしれない。しかし実際、チンパンジーによる被害は有名な事件として知られている。2006年には、人間の管理下にあったチンパンジーのブルーノが他のチンパンジーを従えて脱走し、集団で人間たちを死傷させた『猿の惑星』じみた出来事も起こった。2009年には、長年飼い主に愛されて育ったチンパンジーのトラヴィスが飼い主の友人に突然襲いかかって顔面を食いちぎり、その顔と視力を失わせた(これは『NOPE/ノープ』の元ネタのひとつだろう)。ブルーノの場合は人間への復讐、トラヴィスの場合は事前に摂取した薬物の影響だろうと考えられるし、本作の舞台が過去にも未来にも狂犬病の発症例が見られないとされるハワイであることを考慮しても、リアリティのあるストーリーなのは否定できない。

リアリティを支えているのはキャスト陣もそうで、ベンはアニマトロニクスなどの技術と俳優のミゲル・トーレス・ウンバによる演技で表現されており、聴覚障がいのあるルーシーの父を演じたトロイ・コッツァーは実際に聴覚障がい者だ。起きてほしくない事件を、いかにもそれが起きてしまったかのように描く。これは決して、単なる実際の事件の猿真似ではない。

忘れてはいけないのは、狂犬病自体も非常に恐ろしい感染症ということだ。狂犬病はその名のように犬だけがかかる病気ではなく、哺乳類全般、もちろん人間にも感染する(ただし、感染源はほとんど犬)。現在では基本的にワクチンによって発症を予防できるとは言え、発症してしまえば治療は不可能、死亡率は100%だ(最も予後が悪い膵臓がんでも、5年生存率は数%ある)。原題『Primate』が指す霊長類に属すヒトとチンパンジー。かつて両者はたった1%しか違わないと言われていたが、近年の研究で実は15%ほども違うと判明しているらしい。狂犬病に感染すると、飲み込む機能が阻害され喉の痙攣を起こすため水を恐れるようになる。“水入らず”の関係ほど恐ろしいものはないのだ。

【ストーリー】
ハワイの森に佇む高級別荘地の実家に、友人と帰省した大学生ルーシー。家族と、幼い頃から暮らしてきたチンパンジーの“ベン”との再会に心躍らせる。プールにパーティー、楽しい休暇――。しかし、いつもは賢くてかわいいベンの様子の何かがおかしい……。

【キャスト】
ジョニー・セコイア、トロイ・コッツァー、ジェシカ・アレクサンダー、ヴィクトリア・ワイアント、ジア・ハンター 他

【スタッフ】
監督:ヨハネス・ロバーツ
脚本:ヨハネス・ロバーツ、アーネスト・リエラ

配給:東和ピクチャーズ
©Paramount Pictures.
公式サイト:https://osaru-ben-movie.jp

 

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