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【今週公開の注目作】『カリギュラ 究極版』実在したメガロポリスのイントレランス。血の臭いすら貴腐ワインのごとし。

◆今週公開の注目作

『カリギュラ 究極版』
2026 年 1 月 23 日(金)より新宿武蔵野館、TOHO シネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

今年の始まりは本当に景気が良い。1月からこんなにエンジン全開で大丈夫なのだろうか。新年早々本作のようなモノを公開してしまうなんて、明らかに倫理的にマズい。やるべきではない。だがそうやって抑圧されるほどに反発心は強くなり、やってしまいたくなるものだ。こういった心理効果を俗にカリギュラ効果と呼ぶが、筆者も勘違いしていたのだが、このネーミングは歴史上の暴君カリギュラがタブーを犯しまくっていたことが由来というより、1979年の歴史映画、いやポルノ映画『カリギュラ』が一部地域で上映禁止となったために逆に関心を呼び、皮肉にも大ヒットに繋がったのが元らしい。起用されたのはイタリアのポルノ映画監督ティント・ブラスなのに、プロデューサーのボブ・グッチョーネ(すごい名前だ)に勝手にポルノシーンを足されたり編集されたりした挙げ句クビになり、他にも様々な人物がクビになり、その他諸々トラブル続きで出演者からも黒歴史扱いされながら46億円も浪費した映画界の首刈りマシーンにして暴君。それが『カリギュラ』だ。

しかしこの度、新たなプロデューサー、ネゴヴァンにより元のバージョンで使われていない素材のみを繋ぎ合わせられ、全く別の3時間の作品『カリギュラ 究極版』として蘇る運びとなった。運命は数奇なものだ。それでもポルノ的な映画なのは否定できない事実としてあるが、間違いなく映画にしかできない規模で、なかなかお目にかかれないバカなことをやっているのも確か。ほぼストーリーはなく、カリギュラがローマ皇帝となり、悪逆非道の限りを尽くしていく様をうんざりするほど見せつけられるだけ(元のバージョンよりは十分“映画”らしい)だが、そんな醜悪な内容を華美すぎるセットの中で撮影しているという倒錯っぷりを愉しむのが本作の醍醐味だ。比較対象として挙げるのが憚られるものの、実に今から110年前に同じような超巨大セットを作り撮影された名作『イントレランス』や、昨年観客に様々な意味で強烈な印象を与えたであろう迷作『メガロポリス』などを思い浮かべてしまう。

カリギュラについての記録を調べると、誇張されている可能性はあるにしろ、とにかく反道徳的で放蕩三昧だったのを示すエピソードばかりが出てくる。何せ、本作のヒロイン然としているのはカリギュラの妻となるカエソニアではなく、実の妹ドルシラだ。もちろんただでさえいかがわしい本作のこと、正確な時代考証より優先されているのは疑わしくも血と肉の香り香(かぐわ)しい逸話の方であり、メガロマニアックでニンフォマニアックな狂人のイメージをひっくり返すようなサプライズはないのだが、とにかく貴族に全く相応しくない卑俗的な描写の常軌を逸したスケールの大きさに度肝を抜かされる。

3時間もの間、悪趣味映像を見続けさせられるのは“一部”の方にとっては拷問に等しい体験だろうが、それを可能にしているのはやはりカリギュラを演じた名優マルコム・マクダウェルの功績が大きい。『カリギュラ』の8年前に出演したスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』で見せた、バイオレントでインモラルな青年アレックスの衝撃再びといった感じで、滑稽なまでに荒唐無稽なカリギュラをここまで説得力のある形で体現できるのは彼くらいしかいないだろう。カリギュラの妻となる妖婦カエソニア(といってもカリギュラの前ではほとんど常識人)を演じているのは、何とその後『クィーン』にてエリザベス2世役でアカデミー主演女優賞に輝くこれまた名優ヘレン・ミレン! 同じく英国出身で同世代のシャーロット・ランプリングにも似た貫禄を見せており、最近の姿しか知らない方は開いた口が塞がらないだろう。他人に対し本作を見に行くとは口が裂けても言えないだろうが、不寛容(イントレランス)なカリギュラを受け入れることこそ寛容というもの。3時間の地獄に耐えた後は、不思議と彼の特徴的な仕草をならって親指を立てたくなるはずだ。

【ストーリー】
紀元一世紀前半、ローマ帝国の王室は第二代ローマ皇帝・暴君ティベリウスの下で堕落しきっていた。初代皇帝の曾孫であるカリギュラは、祖父であるティベリウスの異常性癖に辟易しながらもその王座を虎視眈々と狙っていた。やがてカリギュラは親衛隊長マクロと共に暗殺を企て、ローマ皇帝の座を強奪することに成功。第三代ローマ皇帝となったカリギュラは、世継ぎのためにカエソニアという淫乱女を妻に迎え、本格的な統治を開始するが、内なる欲望を抑えきれず徐々に暴君の片鱗を見せ始める――。

【キャスト】
マルコム・マクダウェル、ヘレン・ミレン、ピーター・オトゥール、ジョン・ギールグッド、テレサ・アン・サヴォイ 他

【スタッフ】
撮影監督:ティント・ブラス
脚本:ゴア・ヴィダル
プロデューサー:ボブ・グッチョーネ
究極版プロデューサー:ネゴヴァン

 

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