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【今週公開の注目作】ネタバレ厳禁の考察ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』子供たち17人が一晩で消えた町で何が起きたのか・・・?

◆今週公開の注目作

『WEAPONS/ウェポンズ』
11月28日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開

『IT/イット』や『死霊館』シリーズを送り出してきたニューライン・シネマが、次の一手に選んだのが『WEAPONS/ウェポンズ』。いかにも“ニューラインのホラー”という派手さを想像すると、少し肩透かしを食らうかもしれない。今回は、怖がらせるだけで終わらない、「観たあとにどうしても考えてしまう」タイプのミステリー寄りの一本になっている。

物語の舞台は郊外の小さな町。ある夜、午前2時17分という中途半端な時間に、子どもたちがベッドから起き上がり、家を出て行方をくらます。消えたのは同じ教室に通う17人だけ。残されたのは、空っぽの机の列と、突然容疑者として名前を挙げられる教師ガンディ、そしてどこかおかしくなり始める町の空気だ。なぜその時間なのか、なぜこの子たちだけなのか。映画はそこをストレートに説明しないまま、観客を事件の渦中に連れていく。

印象的なのが、情報の出し方。少年の「これは、ぼくの学校で起こった本当のお話」というモノローグから始まる予告編どおり、本編も断片的なイメージを積み上げるスタイルを徹底している。夜の街を走る子どもたち、どこか現実味のない笑み、異様な行動に走る大人たち……バラバラのピースを見せられながら、「何が現実で、どこからが幻なのか」をこちら側で組み立てていく感覚に近い。最後に待っている“真っ黒な扉”も、答えを教えてくれる装置というより、むしろ考えるきっかけとして置かれている。

アメリカ公開は8月。全米週末興行ランキングで3度1位に立ち、批評サイトのスコアも90%台半ばをキープしたままロングランに突入した。ホラーとしてはかなり攻めた内容にもかかわらず、観客の出口調査スコアがA−というのも興味深いところで、「分かりやすいカタルシスより、じわじわ残る不安」を好む層にきっちり届いたことが数字からもわかる。世界興収はすでに300億円台後半に達し、賞レースの名前もちらつくなど、ジャンルの枠を越えた広がりを見せている。

メガホンを取ったのは『バーバリアン』で注目を集めたザック・クレッガー。コメディ出身という経歴を持ちながら、前作では構成と演出でホラー好きの信頼を一気に掴んだ人だ。『WEAPONS/ウェポンズ』では、ひとつの事件を複数の視点から見直す群像劇の手法を取り入れ、現実と虚構が入り混じる感覚をじわじわ積み上げていく。インタビューでは「この世界観でまだ探りたいアイデアがある」とも語っており、続きの物語を想像させる仕掛けも含めて、かなり意欲的な一作になっている。

日本の状況を考えると、この作品がきちんと劇場公開される意味も大きい。ここ数年、海外ホラーは配信スルーや公開中止が目立ち、『ミーガン2.0』のようにシリーズ作品ですらスクリーンにかからないケースが出てきた。そんな中で、『WEAPONS/ウェポンズ』を映画館の暗闇で体験できるのは、ホラーファンにとってかなり貴重な機会だと思う。世界各地で「ネタバレ厳禁」のまま話題を呼んだ作品を、同じ条件で追いかけられる。

さらに、本作はワーナー・ブラザース映画にとって最後の洋画配給作品という節目の一本でもある。長年ハリウッド作品を届けてきたレーベルの締めくくりが、ジャンルのラベルに収まりきらないこの映画だという事実もどこか象徴的だ。

集団失踪という強烈な入口から始まり、ホラーとミステリーのあいだを揺れながら観客の想像力に投げかけてくる『WEAPONS/ウェポンズ』。派手なドッキリよりも、「あの出来事はどう解釈すべきだったのか」を後から考えたくなるタイプの作品が好きなら、かなり相性がいいはず。予告編以上の情報はあまり入れず、あの町で何が起きたのかを自分の目で確認しに行く一本として、劇場でチェックしたい作品だ。

【STORY】
これは、ある町で起きた本当の話。多くの人が命を落とした秘密の話。深夜2時17分、子どもたち17人が同時に姿を消した。消息を絶ったのは、ある学校の教室の生徒たちだけ。疑いをかけられた担任教師ガンディは、集団失踪事件の真相に迫ろうとするが、この日を境に不可解な事件が多発、やがて町全体が狂い出していく・・・。

出演:ジョシュ・ブローリン、ジュリア・ガーナー、オールデン・エアエンライク、オースティン・エイブラムズ、ケイリー・クリストファー、ベネディクト・ウォン、エイミー・マディガン
監督・脚本・製作:ザック・クレッガー
原題:WEAPONS/2025年/アメリカ映画/上映時間:2時間8分/映倫:R18+
配給:ワーナー・ブラザース映画
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