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『ランド・オブ・バッド』最悪の地においては最善を選び続けよ。さもなくば業火に焼かれる。

◆今週公開の注目作

『ランド・オブ・バッド』
8/15(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

数年前配信された、アベンジャーズのソー役で知られるクリス・ヘムズワース主演の『タイラー・レイク』というハードなアクション映画シリーズがあった。次男であるクリスには兄ルークと弟リアムがおり、クリスほど有名ではないがどちらも俳優だ。本作『ランド・オブ・バッド』にはそのふたりが出演しており、リアムは主演として映画を引っ張っている。しかし、リアムが演じているのはほぼ実戦経験のないキニー軍曹。彼は、フィリピンのイスラム武装勢力「アブ・サヤフ」に捕らえられたCIAエージェントを救出するため、4人チームのひとりとして作戦に参加する。言うまでもなく戦場は地獄だ。あくまでも比喩ながら、一歩でもそこに足を踏み入れてしまったら生きて帰れる保証はない。青二才の彼が引っ張るのが仲間の足だったなら、自分が皆を本物の地獄に引きずり込むことになってしまう。……もし自分が同じ状況にいたらと考えると、すでに生きた心地がしない。

ただし、現代の戦闘で絶大な威力を発揮するのは無人機(ドローン)だ。キニーには実際の戦闘の経験値こそないが、JTAC(統合末端攻撃統制官)である彼の本分は敵の位置を把握し、適切なタイミングでドローンに航空支援を要請すること。アメリカ本国では、ラッセル・クロウ演じる空軍のグリム大尉がキニーからの連絡に迅速に対応できるように待機している。大尉の操る機体は高い偵察能力と攻撃力を備えた「MQ-9 リーパー」、敵からすればまさに“グリム・リーパー(死神)”であり、味方からするとこれ以上ない頼もしい存在だ。冷静に考えてみれば、キニーたちが命を預けるのは、顔も知らない、声だけしか知らない相手なのに。

接敵してしばらくはドローンによるミサイル攻撃も上手くいき、エージェント奪還もすぐかと思われたが、部隊はたったの4人。次々と襲い来る敵の増援に押され、キニーは孤立無援の窮地に立たされてしまう。一縷の望みは、脳天気な青空に細くたなびくミサイルの吐く白煙だが、ミサイルの数には限りがあるし、当然だが発射から着弾までは少なくとも数十秒のラグがある。1秒ごとに状況が変化する戦場において、数十秒は気が遠くなるほど長い時間だ。さらに銃弾や爆風、地形の影響にさらされている中では十分な情報伝達もできない。ドローンのヘルファイア(=ヘリから撃つ自動追尾)ミサイルも、自分が爆撃範囲から逃れられない内に着弾してしまえば、自軍によって地獄の業火で焼かれる羽目になる。

本作『ランド・オブ・バッド』が描く戦場はひどく絶望的だ。キニーのパートでは、キニーと同じ目線で観客もゲリラに撃たれるし、ミサイルの爆風も浴びる。グリム大尉のパートでは、バスケの試合に浮かれている仲間を尻目に、途切れ途切れの交信に耳を澄ませながら常に画面で人影を探し続ける緊張感に苛まれる。臨場感たっぷりの映像は見応え抜群だが、我々に用意されたのは最前線という特等席。スクリーンを見上げて首を痛めるだけなら良いが、最悪の地において次から次へと最悪な展開がやってくる本作は『タイラー・レイク』にも負けず劣らずかなりハードだ。バイオレントな描写も容赦がなく、誰に無惨な死が訪れるかも分からない。スカッとするエンターテイメントを求める方には向かないが、衝撃的な劇場体験を求めるならばこれ以上ない作品だろう。身体と心が揺さぶられるはずだ。数十秒のラグもなく、その瞬間に。

【ストーリー】
イスラム過激派の温床、スールー海。そこに浮かぶ緑豊かな島で、米軍特殊部隊デルタフォースによる極秘任務が行われようとしていた。彼らの目的は、誘拐されたCIAエージェントの救出と回収。その作戦に、JTAC=統合末端攻撃統制官のキニー軍曹(リアム・ヘムズワース)も航空支援の連絡役として参加する。百戦錬磨の最強軍団に囲まれ、経験の浅い新兵であるキニーは戦々恐々。だが、彼らが目的地に着いた直後、思いもよらない「来客」が出現!壮絶な大銃撃戦が展開し、巻き込まれた部隊は壊滅寸前に陥ってしまう。孤立した新人兵キニーの唯一の希望は、遠隔地から作戦を支援する米空軍の無人戦闘機オペレーター「リーパー」(ラッセル・クロウ)だった。通信、支援、武器は限られ、極限の48時間が始まる――。

監督・脚本:ウィリアム・ユーバンク
出演:ラッセル・クロウ、リアム・ヘムズワース、ルーク・ヘムズワース、マイロ・ヴィンティミリア、リッキー・ウィットル
配給:AMGエンタテインメント
上映時間:113分 レイティング:PG12
© 2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.

公式サイト:https://land-of-bad.jp

 

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