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『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』 ”普通”に馴染めないんじゃなくて、”普通” に馴染まない方が自分らしいんだ。

◆今週公開の注目作

『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』

文:KON

皆さんは映画を劇場へ観に行く、配信で観てみるときの評判は誰の言葉をより信頼していますか?昨今はさまざまなSNSもあったり、インフルエンサーとして口コミを発信している人たちもいます。映画好きの友だち、信頼しているインフルエンサーでも、「いや〜あの映画良かったですよ!ぜひ、劇場で観るべき」と言われたら、一回観てみようかな、なんて気持ちになっちゃいますよね。こういう心理傾向を「黒い羊効果」と呼ぶらしい。好ましい身内は好ましくない他人より高く評価され、好ましくない身内は好ましくない他人より低く評価されるというのがこの心理学的現象、要は群れの中で目立つ羊をポジティプに捉えるのか、ネガティブに捉えるのかでバイアスがかかってしまうというもの。自分では人間関係をフラットに見ているつもりでも、自分でも気づかないバイアスがかかってしまうのが人間の性なんて哀しいような気もするが、多様性が謳われている時代でもまだまだマイノリティを感じてしまう人々が実際にいるので、本当なのかもしれない。そんな群れの中で目立ってしまう「黒い羊」側のふたりを描いているのが、まさに『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』である。

フランスの帰国子女で大学入学当初から自由奔放に自分を生きているジェヒと、ゲイであることを誰にも知られたくなく周りと距離を置いて孤独に生きているフンスが本作の主人公である。『アデル、ブルーは熱い色』、『Summer of 85』、『パリ13地区』といった作品からもみて取れるように、”普通”に馴染まないを生き方を肯定されるような世界で暮らしてきたジェヒとしては、フンスをマイノリティな存在として捉えていないが、やはりアジアではまだまだ”普通”にはなっておらず、このふたりの異質さに感じ、フンス自身もそれを隠したいと思っている。ただ、本作は先にあげたフランスの性的マイノリティを主題に描いている映画とは違い、いわゆる『猟奇的な彼女』や『ラブリセット 30日後、離婚します』のような韓国のラブコメっぽくそれぞれの恋愛事情を描いていたり、時には激しく喧嘩をする姿だったり、ふたりの仲のよさが伝わる描かれ方がされているのでそういった作品を観る方でもとっつきやすいのが本作の良さでもあるように感じる。

「トッケビ 君がくれた愛しい日々」が話題になり「トッケビ・シンドローム」という言葉を生み出したほど社会現象になり、最近では話題作『破墓/パミョ』にも出演をした演技派俳優のキム・ゴウンがジェヒを演じ、Apple TV+の世界的な話題作「Pachinko パチンコ」で牧師イサク役を熱演し、国際的な知名度高め、本作でも韓国国内でさまざまな賞を獲るなど今後の期待のノ・サンヒョンがフンスを演じているので、その演技を安心して観ることができるので、本作のふたりをシームレスに感じられること間違いない作品ではないでしょうか。

筆者的にはとてもお気に入りのシーンでもあり、ネタバレなく感じていただいたいので、少しだけの紹介にしますが、作中でフンスの母親がフンスを理解するために、ひとり『君の名前で僕を呼んで』を観に行くといったシーンがあります。自分が”普通”と違うことに、息苦しさを感じる瞬間は誰にでもあるかと思います。でも、そんな時に理解しようとしてくれる人がいるだけでも心が軽くなる気がします。フンスの母親のように、身近な人や自分自身を理解したいという気持ちで本作をふらっと劇場へ観に行ってはいかがでしょうか。そして、ふたりのように自分らしい”普通”を見つけられたら、自分にも、誰かにとってもいい世界が見えてくるかもしれません。

『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』
6月13日(金) 全国ロードショー

原題:대도시의 사랑법(英題:Love in the Big City)
原作:パク・サンヨン著「大都会の愛し方」(亜紀書房刊)
監督:イ・オニ
出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン
配給:日活/KDDI 提供:KDDI
2024年/韓国/韓国語/1時間58分/カラー/1.85:1/5.1ch

公式サイト:loveinthebigcity.jp
公式SNS:@lovein_jp(X / Instagram / TikTok)
ハッシュタグ:#映画ラブイン

★期待&感想投稿キャンペーン実施中!
https://voiceup.jp/loveinthebigcity/

 

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KON

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