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『サンダーボルツ*』彼らは苦難を乗り越えて“星”に至る!

◆今週公開の注目作

『サンダーボルツ*』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ほんの数年前までは向かうところ敵なし、といった様子でハリウッドのトップを爆走していたマーベル。そんなマーベルも、特に現在のフェーズ5は批評的・興行的に苦戦を強いられており、低空飛行が続いている印象が否めなかった。同様に低調だったライバルのDCは、7月の『スーパーマン』で本格的に再始動する予定となっている。新DCはかつてのマーベルの快進撃に大きく寄与していたジェームズ・ガン監督が率い、予告編の時点でかなり期待が高まっているので、マーベルは絶対にここで出遅れるわけにはいかない。だが実際、どうすれば立ち向かえるのだろうか? ……と、ここで、思いも寄らない轟音が鳴り響いた。まさしく青天の“霹靂”だ。マーベル最新作『サンダーボルツ*』は試写段階で、マーベル作品の中で、いや今年の映画の中でも上位に来るほどの作品だなどと絶賛されている。

今回フィーチャーされているのは、ヒーロー側のアベンジャーズのメンバーではなく、これまでの映画・ドラマにてヴィラン的ポジションで登場してきた者たちによる即席チーム「サンダーボルツ*」。ホークアイと敵対したエレーナ、キャプテン・アメリカと敵対したウィンター・ソルジャーとUSエージェント、キャプテン・アメリカをライバル視(?)しているレッド・ガーディアン、アントマン&ワスプと敵対したゴースト、そしてエレーナと敵対したタスクマスターと、必ずしもヒーローの敵ではないにせよ、少なくとも最初からヒーロー然とは描かれてこなかったキャラクターばかりだ。語弊を恐れずに言うなら、マーベル版『(ザ・)スーサイド・スクワッド』と表現するのが分かりやすい。

ところが、皆根っからの悪人とは描かれてこなかったのも事実で、時にはヒーロー側の過失によってヴィラン的立ち回りを余儀なくされていた部分もある。今回真のヴィランとなるのは、史上最強のヒーローとなるはずが、その強大すぎる力を制御できず市民を襲い始めてしまうセントリー/ヴォイドだ。彼が手をかざせば、人間は一瞬で影と化す(日本人が見れば、ある歴史的な悲劇をどうしても思い浮かべるだろう)。傍から見れば悪役チームのサンダーボルツ*も、巨悪の前ではちっぽけな悪、いや相対的に善だ。性格も考え方も全く合わないデコボコ、むしろボコボコにやられそうなチームだがやるっきゃない。誰も、現状の負け犬人生に満足などしていない。今はヒーローでなくとも、これからヒーローになることはできるはずなのだ。

『(ザ・)スーサイド・スクワッド』と違って、彼らは首の爆弾で従わされてはいない。確かに、それなりに戦闘力を持つも超人ではないサンダーボルツ*の面々がヴォイドに立ち向かうのは死を意味するのかもしれない(ガンが監督だったら確実に数名は死んでいた)。だが、これまでの過ちを精算し新たな一歩を踏み出すためのチャンスでもある。屑は屑でも星屑になれるならば、命をかける価値がある。闇の中でこそ星は一際輝くのだ。見た目のトンチキぶりとは裏腹に、ヴィラン未満ヒーロー未満の未だ何者でもない彼らの苦悩を描き出しつつも、やはりそのトンチキぶりで笑わせてくれる本作は、確かにマーベル復活の予感をしかと感じさせてくれる。今のマーベルを救うのがアベンジャーズでなくサンダーボルツ*であるのなら、それをヒーローと呼ばずして何と呼ぼう? まあ、『スーパーマン』にとっては強大なヴィランとなるのかもしれないが!

【ストーリー】
NYの街に突如として現れた大きな黒い影。瞬く間に市民を消し去っていく謎の敵により、世界は再び大きな脅威と直面する。しかし、数々の敵から世界を救ってきたアベンジャーズは、そのピンチに姿を現さない。謎多きCIA長官のヴァレンティ-ナは、誰がこの脅威から世界を救うのかを問いかけるが、絶望の中立ち上がったのは、かつて洗脳されヒーローと対立した過去を持つウィンター・ソルジャーことバッキーだった。彼が仲間に誘ったのは、悪事を犯した過去を持つエレーナ、USエージェント(ジョン・ウォーカー)、レッド・ガーディアン(アレクセイ)、ゴースト、そしてタスクマスターだった。そこにボブと名乗る謎の男も現れ……。

【キャスト】
フローレンス・ピュー、デヴィッド・ハーバー、セバスチャン・スタン、ワイアット・ラッセル、オルガ・キュリレンコ、ハナ・ジョン=カーメン、ジュリア・ルイス=ドレイファス 他

【スタッフ】
監督:ジェイク・シュライアー

 

 

 

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