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『ヌルボムガーデン』その家の庭に、憧れた。手に入らないと分かっていても。

◆今週公開の注目作

『ヌルボムガーデン』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「韓国三大凶家」をご存じだろうか。「凶家(흉가、ヒュンガ)」とは、韓国語で幽霊屋敷を指すらしい。つまり、韓国三大心霊スポット、と訳せる。ホラー映画ファンならば、この場所の名を聞いたことがあるはずだ――「コンジアム(昆池岩)精神病院」。1992年に開院となったが1996年には閉鎖、2018年には解体されてしまった曰く付きの場所であり、今では「患者が相次いで怪死した」とか「院長が自殺した」などの暗い噂が残るのみだ。ちなみにコンジアムは、2012年にCNNによって「世界七大禁断の地」のひとつとして取り上げられた(日本からは軍艦島と青木ヶ原樹海がランクイン)。こちらはすでに2018年にPOV(主観視点)ホラー映画『コンジアム』として映画化され、なかなかの好評を得た。

2つ目の凶家は、朝鮮戦争で死亡した学徒数百名が埋葬されたという土地に立つ慶北ヨンドク刺身店、通称「ヨンドクヒュンガ」。こちらも将来的に映画化されそうだが、今回は3つ目の凶家がモチーフの映画『ヌルボムガーデン』について紹介する。「ヌルボム(늘봄)」の意味は「常春」、明るく穏やかで暖かい素敵な庭が想像されるだろうが、もちろんそうではない。実際のヌルボムガーデンは元々レストランで、経営者には植物状態の娘がいたとか、娘が亡くなり自身も後を追ったないしは交通事故で死亡したなどとも言われている。その後同じ建物で店を構えた人々も、ことごとく事業を失敗したようだ。筆者が調べたところ、従業員が知らない間に料理が客に出されていたり、見えない誰かに後頭部を殴られるといった怪奇現象もあったとする記事が2009年には出ている。

とは言え『コンジアム』と同様、この『ヌルボムガーデン』も実話(と言って良いものか)の映画化をしているわけではない。あくまでその場所を用いたフィクションだ。本作でヌルボムガーデンは、主人公ソヒの目の前で謎の首吊り自殺を遂げた夫チャンスが、ソヒとじきに生まれてくる子どものために残したマイホームという設定になっている。なぜそんなタイミングで自殺を? 結果としてソヒは流産してしまい、ひとりでヌルボムガーデンに移り住もうとするのだが、誰かの気配を感じる。庭の茂みに。クローゼットの中に。廊下の奥に。そして、ソレはどうやら、夫ではない……?

もし“実話”を映画化していたなら、本作とは大きく異なるテイストになっただろう。良くも悪くも、本作のストーリーは分かりやすい悲劇になっている。その分深みには欠ける部分があるが、幽霊なる存在が死後も残るほどの強い念から生まれるとするならば、納得の理由付けではある。実際、幽霊は家と人、どちらに憑くのだろうか? 死んだ場所から離れられないのか、死の原因を作った人間から離れられないのか、どちらなのだろう。あるいはどちらもか。まあ、心霊スポットや凶家という名詞があり、曰く付きの場所での怪奇現象の報告が多いのだから、やはりその場所に憑く方が多いのかもしれない。悲しいことだ。霊の未練の対象は、家でなくその“庭”なのかもしれないのに。

【ストーリー】
幸せな新婚生活を送っていたソヒの夫チャンスが、ある日突然、自らの命を絶った。ショックのあまり流産し、悲しみのどん底に突き落とされたソヒは、生前のチャンスが購入していた郊外の邸宅を相続することに。ソヒは姉ヘランの反対を押しきって、ヌルボムガーデンと名付けられたその家に移り住むが、引っ越し後まもなく奇怪な出来事が続発。ある夜、家の中ですでにこの世にいないはずのチャンスの姿を目撃したソヒは、心優しかった彼が自殺に追いやられた理由を探り始める。やがて地元の女子高校生ヒョンジュが事情を知っていると確信したソヒは、数ヵ月前に失踪した彼女の行方を追うが、ヌルボムガーデンに取り憑いた邪悪な“何か”に脅かされていくのだった……。

【キャスト】
チョ・ユニ、キム・ジュリョン、ホ・ドンウォン 他

【スタッフ】
監督・脚本:ク・テジン

公式サイト:https://neulbom-film.com/

 

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