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『THE SIN 罪』罪と罰はひかれあう。運命の相手のように。宿敵のように。

◆今週公開の注目作

『THE SIN 罪』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

筆者は、先日のタイホラー『バーン・クルア 凶愛の家』の紹介記事で、最近アジアンホラー界では“儀式ホラー”がアツいと書いた。そしてその傾向は、本作『THE SIN 罪』によってより強く証明されたと言ってしまって良いだろう。とは言え、内容のあまりの暴走機関車っぷりに途中で振り落とされる方も少なくないはずだ。はっきり言ってトンデモなストーリー展開をしていく作品なのでネタバレ厳禁で説明しにくいが、公式で明かされている範疇でどうにか紹介してみる。

まず、本作は映画の撮影現場から始まる。主人公シヨンは新人女優であり、新進気鋭の監督によるダンスをフィーチャーした作品の主演を務めることになる(劇中でも言及される、歌手Siaの「Chandelier」のMVを見ていただくとイメージしやすい)。シヨンと共演者のチェユンは互いに同じ格好をして2人組のダンスを完璧に踊ってみせるが、気難しく自身のビジョンを共有しようとしない監督に不信感を抱いている。なるほど、「映画についての映画」のようだ。この若い監督の“アーティスティック”な姿勢は印象的に描かれており、これは映画監督なる存在が背負う罪の話なのではという疑問が浮かぶ。スティーブン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』では、映画がいとも容易く人間の感情を操作できるという恐ろしい事実が示されていた。本作もその類のものなのか?

――と思ったら、スタッフの女性が撮影現場の廃校で謎の落書きを見つける。何かしらの儀式のために書かれたもののようだ。すると突然彼女は発狂し、シヨンたちの目の前で校舎の屋上から飛び降りる。死亡事故が起きてしまった。これで映画制作はもうおしまいだ――――と思ったら、なぜか体がぐちゃぐちゃになった彼女はふらっと立ち上がり、周りの人間を襲い始める。まさか、ゾンビものだったのか!? しかも、監督は撮影を続行しようとする。ゾンビ×映画撮影と来れば、思い出されるのは『カメラを止めるな!』だ。これは韓国産のシリアス版『カメ止め』なのか? ――――――と思ったら……。

本作は、観客がこの映画の正体を掴んだと思う度にするりとその手を抜け出す。あるジャンルのホラーだと思っても、その予想を覆していく。その強引さを快に感じるか不快に感じるかで大きく好き嫌いが分かれそうだが、とにかく勢いがすごい。後半の展開を怒涛の伏線回収と呼ぶべきか、壮大な後出しジャンケンと呼ぶべきかも意見が分かれるところだろう。ジャンプスケアが多いところも。そして、結局本作のテーマは何だったのか、“罪”とは何だったのか、これについても大いに解釈が分かれるはずだ。筆者は何となくパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』を思い出した。

人は生まれながらに罪を背負うのか。それとも途中で背負わされるのか。法律的な意味で罪になるのは、法律で禁止されている事項を破った時だけだ。本来、自然界にルールはないはずだが、人はいつの間にかあらゆる縛りに雁字搦めになっている。それらから解放され、願望を叶えようとして罪を犯せば遅かれ早かれ、客観的に、主観的に、赤い血の糸を辿るように追って来た過去に捕まる。それを運命と呼ぶのだろうか。謎の引用で始まる本作にならい、ここでまた何となく思い出したアレハンドロ・ホドロフスキー監督のカルト映画『エル・トポ』からの引用で締めさせていただこう。「モグラは太陽の光を求めて穴を掘り進める動物だが、時に地上へ辿り着くも、太陽を見た途端にその目は光を失う」……。

【ストーリー】
新人女優のシヨンは、映画撮影のために山奥にある廃墟へとやって来た。しかし、変わり者と評判の監督から演技指導はなく、奇怪なダンスを屋上で踊るだけというものだった。かつてない演出に不安に駆られるシヨンは、共演者のチェユンに愚痴をこぼす。さらに、ギリギリの予算で組まれた現場は殺伐としていた。トラブル続きの撮影が進む中、突如血まみれの女性スタッフが現れる。そして、呆然とするシヨンたちを一瞥すると、屋上から飛び降りてしまう。地面に叩きつけられた体はあらぬ方向に折り曲がり、即死したかに思えた。しかし、彼女は立ち上がり、駆け寄った別のスタッフに襲い掛かる。その様相は、まるで生ける屍のようだった――。

【キャスト】
キム・ユネ、ソン・イジェ、パク・ジフン、イ・サンア 他

【スタッフ】
監督・脚本:ハン・ドンソク
配給:アルバトロス・フィルム
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公式サイト; thesin.jp

 

 

 

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