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『バーン・クルア 凶愛の家』本当に愛していれば、“中身”など関係ない。

◆今週公開の注目作

『バーン・クルア 凶愛の家』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「バーン・クルア」。聞いたことのない外国語だ。これは邦題にしか付けられていないし、本作の劇中にも登場しないため、少し調べてみた。本作はタイ映画なので、おそらくタイ語の「バーン(家)」と「クルア(怖い)」から取ったと思われる。変な家、ならぬ「怖い家」だろうか。英題は『Home for Rent』で、貸家を意味する。ただし、普通は「house for rent」と言うので、homeなのには意味がありそうだ。実際、ストーリーにも大きく関わってくる。そして、タイ語の原題を翻訳してみると「賃貸住宅 生贄」となった。邦題のサブタイトル「凶愛の家」も含め、それぞれが本作の一面を表したタイトルになっていると言えるだろう。

物語はまず、家賃収入を得ないと苦しい経済状況にある妻ニンと夫クウィンの夫婦が自宅(ホーム)を他人に貸すところから始まる(Home for Rent)。最初反対していたクウィンが折れる形で話は進むが、相手の母娘は家を借りるとすぐにニンを遠ざけるようになる。そしてなぜかクウィンも夜な夜などこかへ出かけたり、見覚えのない赤い本を大事にするようになったり、体に気味の悪いタトゥーを入れたりと挙動不審に。ニンは幼い娘インを守るためクウィンと怪しい母娘を警戒するが、徐々にあるカルト宗教が関わっていると気が付いていく。そして事態はオカルト的な方向に……。

「カプグラ症候群」という精神疾患がある。親しい人物が、見た目はそっくりの別人に入れ替わっているのではないかと思い込む病だ。「瓜二つ」を意味するフランス語から、「ソジーの錯覚」とも呼ばれる。ニンがこの病気だというわけではないが、夫などの身近な者の豹変は実際それほど珍しくないのだろう。本当に愛していれば外見が変わっても関係ない、とはよく聞く。では、中身なら? 中身が変わってしまっても、変わらず愛し続けられるのか?

詳しいストーリーには触れないが、本作をタイ版『ヘレディタリー/継承』と例える人は少なくなさそうだ。さらに、“継承”的な要素に加え最近のアジアンホラー、例えばそれこそ同じタイホラーの『女神の継承』や台湾ホラー『呪詛』、韓国ホラー『破墓/パミョ』などにも通ずる、罰当たりなのが瞬間的に観客に伝わる奇々怪々な儀式が登場する。このような“儀式ホラー”と名付けられそうな作品ではしばしば、これまで生きてきて一度も見たことのない動きをする人間が拝めるものだ。本作も例に漏れない。つくづくホラーとは常に観客の先、否、斜め上を行くジャンルなのだと思い知らされる。そして、一生考える必要がなかったはずの問いを我々に突きつけるのだ。家は、人間たちを入れる器に過ぎない。ならば体もまた、魂を入れる器に過ぎないのではないかと。

【ストーリー】
ニンとクウィンは7歳の娘インを持つ夫婦。3人は経済的理由から、家を元々医者だったラトリーとその40歳の娘ヌッチの二人の親子に貸し出し、家族でマンションに移り住むことを決めたのだった。ラトリー親子がニンとクウィンの家に引っ越してきた後、次第にクウィンが奇妙な行動をとり始める。クウィンの不気味な行動に気付いたニンは不安に感じるが、夫がなぜそのような行動をとるのか探り始める。クウィンは、ニンに気づかれまいと秘密を抱えるようになり、毎朝午前4時に外出するようになった。だが、ニンはそれに気付き、クウィンにヌッチと同じデザインの三角形のタトゥーがあることを突き止める。夫の行動がますます不気味になる中、ニンは娘が見えない邪悪な力に狙われていることに気付く。ラトリーとヌッチはカルト集団のメンバーであり、彼女たちからある見返りを得ることを引き換えに、クウィンはカルト集団に入ってしまったのだった。彼女たちはクウィンを邪悪な計画の一部に引き入れ、その計画に娘が必要になるとクウィンを操ろうとする。カルト集団の行動が次第に過激さを増していく中で、カルト集団から、そして自分の夫からも、どのような手段を使ってでも娘を守ろうと決意をする。

【キャスト】
ニッター・ジラヤンユン、スコラワット・カナロス、ペンパック・シリクン 他

【スタッフ】
監督:ソーポン・サクダピシット
脚本:ソーポン・サクダピシット、タニダ・ハンタウィーワタナ

公式サイト:https://kyoainoie-movie.com/

 

 

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