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『イマジナリー』 きみはわたしだけの友だち。……でも、友だちにとっては?

◆今週公開の注目作

『イマジナリー』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ホラー映画は刺激物だ。味で例えるなら、実際には痛覚である辛味に近いと言えるだろう。つまり、ホラーは辛い料理……だが、辛さのレベルは激辛やピリ辛など千差万別。では、ホラーらしい外見の本作『イマジナリー』はどうか? “激甘カレー”である(“激辛カレー”は『マリグナント 狂暴な悪夢』だろうか?)。辛いのが苦手な方は問題なく食べられるが、逆に辛いのが好きな方には物足りない。そういった作品だと先にお伝えしておく。

本作では、ホラーと家族ドラマがミックスされている。主人公ジェシカには夫との間に血の繋がらない娘がふたりおり、幼い次女のアリスには好かれているが、お年頃の長女テイラーには疎まれている。彼女たちと本当の家族になろうと奮闘するジェシカに降りかかる試練が、アリスの空想上の友だち、イマジナリーフレンドなのだ。家族でジェシカの生家に引っ越し新たな生活を始めようという時に、アリスは古いテディベアを見つける。「チョンシー」(「チャンス」にちなむ名前)と名を付け最初は他愛ない“会話”をする程度だったのが、チョンシーとのスカベンジャー・ハント(リストに並んだアイテムを見つけてくる遊び)に発展し、さらに奇行がエスカレートしていく……。

ファンタジー(空想)は人を助ける。アリスらの実の母親は精神を病んでおり、それがアリスたちにも悪影響を及ぼし両親は離婚に至ったが、それでも母親と会えないのはアリスにとって多大なストレスだろう。その寂しさがチョンシーを生み出した。アリスが自らを癒そうとしているのを分かっているジェシカも、テディベアと話すアリスを止められなかったが、それが裏目に出てしまう。……子どもにとって、自分と他者との境界は曖昧だ。本当にチョンシーはアリスの頭の中にしかいない存在なのだろうか?

本作は、個性とエンタメ性が両立したホラーを多数生み出している製作会社ブラムハウス・プロダクションズの新作だ。イマジナリーフレンドものは珍しくないが、中盤で明かされる事実にはすっかり騙されてしまった。そこからはさらに思ってもみない方向に話は進んでいく。本作はやはりホラーというより、ダークファンタジーと呼ぶべきだろうか? アリスだけに、不思議の国的な描写まで登場する。後半の展開は好き嫌いが分かれるところだろうが、大人向けのホラーではないものを望む方には新鮮な驚きがあるのではないか。ホラー好きが本作を見るのであれば、友だちだと思っていた相手が本当はこちらをどう思っているのかを描いた作品と捉えれば怖がれるだろう。実在する人間だって、“イマジナリーフレンド”かもしれない。

【ストーリー】
夫と継娘2人と共に暮らしながら、毎晩見る悪夢に苦しんでいた絵本作家のジェシカは、環境を変えるため幼い頃に暮らしたかつての家へと引っ越す事を決める。懐かしさの残る家の地下室で、末の継娘アリスが見つけたのは、古びたテディベアだった。新しい友達“チョンシー”に異常な愛情を抱くようになるアリス。最初はただの遊びだと思っていた〈宝探しゲーム〉も次第にエスカレートし、邪悪さを増していく。このテディベアは普通じゃない―そう気づいたとき、衝撃の真実と恐怖が家族に襲いかかる。

【キャスト】
ディワンダ・ワイズ、トム・ペイン、パイパー・ブラウン、ベティ・バックリー、テイゲン・バーンズ 他

【スタッフ】
監督:ジェフ・ワドロウ

公式サイト:https://imaginary-movie.jp/

 

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