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『破墓/パミョ』地に答えありて未来なし。空に答えなかれども光あり。

◆今週公開の注目作

『破墓/パミョ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

パミョ。何だろうか、このポニョとかきゃりーぱみゅぱみゅのような気の抜けた響きのタイトルは。音だけだと何を意味するかも不明。しかし、当てられた漢字「破墓」を見れば何となく分かる気もする。実際、本作は主人公たちがある墓を暴いたために奇々怪々、阿鼻叫喚の事態に陥る様を描いたホラー映画だ(英題の「Exhuma」は死体などを掘り起こすことを意味する「exhume」の変形だろう)。この、分からないようで分かる、または分かるようで分からないという感覚は、本作を楽しむ上で重要になるものだと思う。さらに言えば、この感覚を最も強く味わえるのは我々日本人かもしれない。「考えるな、感じろ」――まさにこの言葉がふさわしい作品だ。

あらすじ自体は難しくない。主人公たちは4人チームとなって、ある裕福な一族にかけられた呪いめいたモノの原因を解明しようとする。メンバーは、シャーマンである巫堂(ムーダン)のファリムとボンギルの師弟、風水知識を駆使し墓に適した土地を探せるサンドク、葬儀の進行を担当するヨングンだ。各々がプロフェッショナルであり、それぞれの役目を全うしながら一族の先祖の墓を暴こうとするのだが、超常現象が起きまくるホラーでありながら、その過程が驚くべきリアリティをもって描き出されていく。言うなれば、“お仕事映画”である。本当に存在する儀式・呪術なのか分からないし、彼らは霊感も知識もない素人には何やらよく分からない論理・手順に従って行動するのではじめは翻弄されるも、あまりにも真実味があるので見入ってしまう。

筆者はもちろん字幕で鑑賞したが、驚いた。儀式中のセリフの字幕が読めないのだ! いや、ちゃんと漢字で書かれてはいる。ただし見たことも聞いたこともない漢字の羅列(例えるなら「南無妙法蓮華経」とか「臨兵闘者皆陣列在前」)が連続し、面食らう。さらに呪文を、節をつけてお経のように、歌うように唱えるので、少々誇張して言えば本作の前半はある意味“呪術ミュージカル”だ。なぜだか、おそらく『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を見ている時よりもこちらのテンションも上がっていく。タイのホラー『女神の継承』にも儀式が登場するが、線香を上下逆さまに立てるという、あまりにも罰当たりな行為なのが日本人には直感的に分かる素晴らしいシーンがある。本作も、そういった描写の連続である。台湾ホラー『呪詛』が人間の生理に訴えかける映画だったとすれば、本作はアジア人の生理に訴えかけるホラーと言えそうだ。

日本人の方が楽しめると言ったのには他の理由もある。本作の至る所に日本語が溢れているからだ。韓国キャストも日本語を話しまくるし、詳しくは言わないが、ストーリーにも日本要素が関係している。ここまでで何となく察せられたかもしれないが、同じ韓国映画でいうなら本作に似ているのは巫堂を扱い國村隼が出演した『哭声/コクソン』だろう(そして本作には、知らぬ者はいない日本人有名男性声優が???役で出演している)。『オールド・ボーイ』や『悪魔を見た』で強烈すぎる演技を披露したチェ・ミンシクがサンドクを演じており、土地の良し悪しを判断するため土を実際に食べる(?)などやはり面白い行動をとる。サンドクは悪霊が持たぬ魂の強さを表現しているキャラクターでもあり、本作の鑑賞後に「良い映画を見た!」と思わせてくれる。

考えてみれば、土地というのは過去が層のように積み重なってできている。安易にそれを掘り返しても、陸(ろく)なことにはならないのだ。埋蔵金を探す前に、埋葬されるのはあなたかも知れない。得体が知れなくて、しかし傑作であるのは疑いようもない。確実に今年を代表するホラーの一本だ。今後も、アジアンホラーの代表作として語り継がれるに違いない。

【ストーリー】
巫堂ファリムと弟子ボンギルは、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から、桁違いの報酬で依頼を受ける。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドクと葬儀師ヨングンも合流する。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行なうが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていた……。

【キャスト】
チェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョン 他

【スタッフ】
監督・脚本:チャン・ジェヒョン

公式サイト:https://pamyo-movie.jp/index.html

 

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