『フォールガイ』ヤツが落ちるほど、観客はアガる！今年で最も映画らしい映画!?

2024.08.14

◆今週公開の注目作

『フォールガイ』

アクション映画になくてはならないもの、それはもちろんド派手なアクションシーン。では、それは誰が行うのか。最近では、戦うキャラクターを演じている俳優自身がスタントまでこなすのも珍しくなく、それ自体がウリになる。パリオリンピックの閉会式で落下スタントをしたトム・クルーズなどがその典型だ。特に『ミッション：インポッシブル』シリーズでは、その命知らずっぷりを惜しげもなく発揮している。NGシーンで我々を笑わせるのではなくドン引きさせてくれるジャッキー・チェンも、彼らに影響を与えたジャン＝ポール・ベルモンドやバスター・キートン、ハロルド・ロイドなども、CGなどない時代から自分の体を張って決死のアクションを行い、観客を楽しませてきた。

それらはもちろん称賛されるべきだが、多くの俳優の代わりに命を賭けてきた者たちのことも忘れてはいけない。それがスタントマンだ。時に大ケガをし、時には本当に亡くなってしまうほど苛烈な仕事をこなす彼らがいなければ、世の中の大半のアクション映画は存在していない。本作の監督を務めたデヴィッド・リーチもスタントマン出身であり、『ファイト・クラブ』ではブラッド・ピットのスタントダブルも務めた。初監督作は、『マトリックス』でキアヌ・リーヴスのスタントダブルだったチャド・スタエルスキと共同で撮った、あの『ジョン・ウィック』(リーチは監督としてはノンクレジット)。その後は、シャーリーズ・セロン主演の『アトミック・ブロンド』、ライアン・レイノルズ主演の『デッドプール2』、ドウェイン・ジョンソン×ジェイソン・ステイサムの『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』、ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』と、超ド級のアクションばかり撮ってきた。

そして最新作、ライアン・レイノルズ主演『フリー・ガイ』……ではなく、ライアン・ゴズリング主演『フォールガイ』だ！　80年代のドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』の映画化となる。今回彼が演じるコルト・シーヴァースは、過去のスタントで背中を痛め、当時の恋人ジョディ(エミリー・ブラント)とも別れてしまった元スタントマン。何と言ってもこのキャスティングが良い。ゴズリングは、内向的な役もイケイケマッチョマンも演じられる器用さを持っているが、どちらの場合でもちょっとダメな感じがキュートな俳優だ。さらにこれまで、『ドライヴ』ではカースタントマン、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』ではバイクスタントマンを演じており、何かとスタントに縁がある。

本作では、もう何でもアリだ (スタントの一部はゴズリング本人が担当した)！　落下スタントはもちろん、ギネス記録を更新した8.5回転のキャノンロール(車のド派手な横転)を含むカースタント、ラリラリファイトシーンなどなど、マヒしてくるレベルでクレイジーなアクションが連続する。それだけでなく、コルトが元カノ・ジョディの初監督映画でカムバックすることになったり、以前スタントダブルをしていたスターのトム・ライダー失踪事件を追うことになったりと、設定の面白さもしっかり担保されている。ロマンスに加え、これまでのリーチ作品でも強く押し出されていたコメディ要素は健在で、ハリウッド映画に求めるものが全て入っていると言って良い。200%増しで。ちなみに、トムの飼い犬の名前が「ジャン・クロード」なのは、リーチがジャン＝クロード・ヴァン・ダムのスタントダブルも務めた経験があるから、というネタだ。

数本分のアクション映画を見た気分になれるのは間違いない。アクション映画とスタントマンへのラブレター、それが『フォールガイ』、これぞ映画だ。冒頭でアクションはアクション映画になくてはならないもの、と言ったが、正確ではなかった。正しくは、「映画になくてはならないもの」だ。撮影開始時に、監督が何と叫ぶかを考えてみれば明らかだろう。そうーー「アクション」！