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『マッドマックス:フュリオサ』心臓はエンジン。血はオイル。怒りを燃やせ。命を燃やせ。

◆今週公開の注目作

『マッドマックス:フュリオサ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

あの衝撃からもう9年も経ったとは。メル・ギブソンが主演した元の『マッドマックス』シリーズが3作で一区切りしてから30年後の2015年に公開された、リブート版とも言えるトム・ハーディ主演の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。それまでシリーズに触れてこなかった観客をも狂気に染め上げた超弩級の大傑作で、筆者も鑑賞後の帰り道、遠くにポツンと立ち煌々と照っている街灯を見てアドレナリンが体内を駆け巡った感覚を覚えている。ただの街灯になぜ興奮したのかは分からない。だが、目に映るもの全てが異常な生命力を持っているような錯覚に襲われたのだ。実に信じがたいことに、同作を作り上げた巨匠ジョージ・ミラーは当時すでに70歳。NO WAY。

それから9年。御大も80歳を目前にした今、まさかまた新たな『マッドマックス』の新作が見られるとは! もちろん、『怒りのデス・ロード』の続編や前日譚の企画の話は前から出てきてはいたが、実現したのが本当に喜ばしい。本作『マッドマックス:フュリオサ』は、『怒りのデス・ロード』の前日譚になる。(ややこしい言い方になるが)“前作”で、核戦争後の砂漠を支配するイモータン・ジョーの配下であったのに、ジョーに囚われていた女性たち(ワイブズ)を連れて逃亡したフュリオサの過去の話になっている。こうなると、復讐の鬼となる元警官のマックス・ロカタンスキーを主人公にしていたからこそのタイトル『マッドマックス』の意味も違って見えてくるようだ。「マッド(mad、怒り狂う)」より凄まじい怒りが「フュリアス(furious、激怒)」。そこから名が付いたのがフュリオサ(Furiosa)なので、“極限のMAD”とはまさに彼女のことなのではないか?

フュリオサは今や貴重な自然が残る“緑の地”出身だ。幼い彼女は母と暮らしていたある日、ディメンタス将軍率いる野蛮なバイカー集団に見つかり捕まってしまう。勇猛な母がどうにかフュリオサを一度は救出するも処刑されてしまい、結局フュリオサはディメンタスの支配下に置かれる。そしてそのままディメンタスとジョーの抗争に巻き込まれ、巡り巡ってジョーの元へ。燃え盛る怒りを抱えながら、故郷の地を目指そうとする。

“前作”のシャーリーズ・セロンに代わり、若手トップスターのアニャ・テイラー=ジョイが演じる若きフュリオサは、アニャ自身が元々持っている眼力も相まって異常な生命力に満ちている。いわゆる「強い女性キャラクター」ではあるのだが、男性的な強さを備えているから強いのではなくて、女性として、というかもはや“生き物として”強い。全てが崩壊したこの世界では、肩書になど何の意味もない。自分を証明するのは生き様だけだ(ジョーが率いる狂信的な青年たち“ウォー・ボーイズ”にとっては、死に様が、かもしれない)。人生を破壊しようとしてくる奴らなど、蹴散らして進むだけ。

『マッドマックス』シリーズが最も異常なのは、その驚異的なアクションもさることながら、普通に考えると砂漠だらけであまりに殺風景な画になるはずなのに、「砂を噛むよう」なんて言わせない、見る者全てを圧倒する映像になってしまっている部分だ。資源がないはずなのに、狂人どもは見るからに燃費の悪そうな(戦)車で爆走し、いたずらに火炎を上げ続ける。価値観が常軌を逸している。それも仕方ない。とうに道はなくなっているのだ。だからこそ、進むべき自分の道を見つけた者は強い。再び訪れた衝撃に打ちのめされ、鑑賞後はすぐに続きが見たくなる……、おっと、すでに“続編”は存在しているのだった。

今年は、「走る」者たちの映画が光る年になると思っている。筆者の中では、現時点で『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』が今年ベスト映画になると確信していたが、本作はその強力なライバルとなるだろう。『マッドマックス』シリーズを見て、あまりに興奮した観客が「IQが下がっていく」と感想を漏らしているのを見たことがあるが、おそらくそれは違う。正しく言えば、言葉なしに全てを理解できるようになっているのだ。走れ(生きろ)。これ以上の言葉は、もう要らない――。

 

【レコメン広場】『マッドマックス:フュリオサ』公開記念!「歴代マッドマックス:私の思い入れキャラ」投稿受付け中!シリーズに登場するあなたの1番好きなキャラクターは!?

 

『マッドマックス:フュリオサ』
2024年5月31日(金)全国ロードショー!
IMAX®/4D/Dolby Cinema®(ドルビーシネマ)/ScreenX

【ストーリー】
世界崩壊から45年後――。若きフュリオサは、故郷である”緑の地”からさらわれ、ディメンタス将軍率いるバイカー軍団の手に落ちる。荒地を掃討する彼らは、イモータン・ジョーが統べる城塞都市の覇権をめぐって争いを繰り広げていた。復讐を誓うフュリオサは数々の試練を乗り越え、すべてを奪ったこのMADな世界(<マッドワールド>)をぶち壊すため、ついに覚醒する! 

監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース
公式サイト:MADMAX-FURIOSA.jp #マッドマックス #フュリオサ

(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.

 

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