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『オクス駅お化け』非のない所に怨みは育たぬ…。あの飛び出す韓国産ウェブコミックが今度はスクリーンで観客を襲う!

◆今週公開の注目作

『オクス駅お化け』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

駅は実に不気味な場所だ。昼間は大勢の人でごった返し、夜間は誰もいなくなる。「終着駅」と言った場合には比喩的に物事の終わりを表し、「死」を指すこともある。ホームと電車内はよく知る“こちら”側の世界だが、ホームからぴょいと飛び降りればもうそこは普段足を踏み入れることのない異世界と言えなくもない。レールを直に踏める踏切であっても、横断は日常、縦断は非日常だ。境目がはっきりしているようで曖昧。だからなのか、駅や電車をテーマにした、特にWeb上のホラー作品は多い。例えば「きさらぎ駅」。昨年映画化もされたが、いつも利用している電車に乗っていたらいつの間にか存在しないはずのきさらぎ駅に着いたという、2ちゃんねる発祥の体験談形式の怪談だ。そしてお隣の国、韓国にも、同類の作品がまたひとつ。それが『オクス駅お化け』だ。

玉水(オクス、またはオッス)駅は韓国のソウルに実在する。地名を出されると妙なリアリティがあって非常に気持ちがざわざわするが、『オクス駅お化け』の原作は韓国発のWebコミック「ウェブトゥーン」の作品だ。普通のコミックと違って、横ではなく縦にスクロールして読み進めていくのが大きな特徴と言えるだろう。今回原作について調べると、なぜだか読んだ覚えがあって驚いた。思い起こしてみれば、何年か前にネットサーフィンしている中で見つけたのだ。それまで韓国の漫画を読んだ経験がなかったのと、そのホラー度の高さで、タイトルは失念していたが強く印象に残っていた。

原作は非常に短く、数分で読み終わる。あらすじは、男性主人公が人気のないオクス駅で電車を待っていると、酔っているのか踊るようにふらふら、ゆらゆらしている女性が目に入り、面白がって匿名掲示板で実況し始める…というもの。詳しいネタバレは避けるが、この作品にはWebだからこそのギミックがある。飛び出す絵本ならぬ、飛び出すWebコミックなのだ。ホラーが苦手だったり心臓が弱かったりする方は絶対に見ないことをオススメする。ちなみに、筆者がウェブトゥーンと聞いてすぐ思い出したのは『ボンチョンドンお化け』だ(こちらもソウルの実在の地名)。こちらも、パラパラ漫画的なギミックを利用して読者を殺しにかかる凶悪なホラーだった。何だか似たソウル(魂)を感じるなと思ったら、どちらもホラン(Horang)なるアーティストの作品だった。どうりで! まったく…。

両作品とも、コミックでありながらホラー映画でよくあるジャンプスケア(驚かし)を再現しているのだ。そして当然のように、映画版の方もジャンプスケアの宝庫になっている。しかも映画版は、何と原作部分を冒頭3分で語り終えてしまう。つまりそこからは全て映画オリジナルの展開で、脚本に参加しているのは何とあのJホラーの金字塔『リング』の高橋洋だ!かなり意外な人選だが、予想通り(?)劇中に再び井戸が出てきて安心する。新たな主人公・女性記者ナヨンは、自分がしでかした取材ミスを挽回するため、バズって一発逆転が狙えそうなオクス駅での事故ネタの調査に赴くが、そのせいで恐怖に襲われていく。原作では明かされていない「“オクス駅お化け”とは何なのか」を深掘りしていく内容と言える。

ひどい出来事があれば、そこには怨みが生じる。これはもはや自然の摂理だ。フィクションの中の怨みの念は、本人の肉体が消えても残り、周りに悪影響を撒き散らす。それは本人の意思なのか、そういった毒性を持つ、ある種科学的な“現象”なのか…。どちらの方が、実在する可能性が高いのだろうか? 少なくともオクス駅と、高橋曰く本作の元ネタとなった事件はオクス駅とは無関係ながら実在する。「火のない所に煙は立たぬ」と言うが、この話にはふたつの小さな「火」が灯っているということだ…。ところで、京都には「玉水(たまみず)駅」なる駅が実在するらしい。まさか…?

【ストーリー】
駆け出しのウェブニュース記者のナヨンは、ボーイフレンドのウウォンを助手として、アクセス数を稼ぐため、地下鉄オクス駅での人身事故の記事を書くことに。取材を進めていくと被害者以外に「線路に子供がいた」という奇妙な目撃談がでてくる。ある目撃者は、取り憑かれたように謎の数字を連呼するのだった。事件の真相を追ううちに、二人の周囲で次々とおぞましい怪死が起こり始める…。

脚本:高橋洋、イ・ソヨン、白石晃士(脚本協力)
監督:チョン・ヨンギ
出演:キム・ボラ、キム・ジェヒョン、シン・ソユル 
配給:松竹ODS事業室 PG12
©2023, MYSTERY PICTURES & ZOA FILMS, ALL RIGHTS RESERVED
公式イト:https://obake-movie.com

10月6日(金)全国ロードショー

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