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『M3GAN/ミーガン』アイはくっついて離れないもの。人間の親や友人なんてもう古い。

◆今週公開の注目作

『M3GAN/ミーガン』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ホラーの鬼才ジェームズ・ワンと脚本家アケラ・クーパーの黄金タッグが帰ってきた! ふたりはあの怪作『マリグナント 狂暴な悪夢』をともに作り上げた仲だ。今回の『M3GAN/ミーガン』ではワンはプロデューサーに回り、監督したのはニュージーランド出身のジェラルド・ジョンストンだが、魂は受け継がれているように感じられる。ありえない動きを実際に人間が演じることで生じる強烈な違和感を上手く活かしたホラー作りをしているからだ。

本作は、一言で表現すれば『チャイルド・プレイ』(リメイク版)と『ターミネーター』の融合だ。ワンのフィルモグラフィーにからめて『アナベル』×『ターミネーター』と言っても良いかもしれない。ただ、今回は呪いの要素は一切なく、描かれているのはAIテクノロジーの恐怖。事故で両親を幼い、心を閉ざしたケイディを引き取ったおばでおもちゃ開発者のジェマは、試作品段階のAI人形ミーガンを用いてケイディをケアしようとする。人間の感情測定やネットでの情報収集能力に長けているミーガンは、すぐにケイディの求めている行動に移れ、おもちゃの立ち位置を超えてケイディと唯一無二の親友になる…。何と美しい話か。字面的には。

しかし本当のところ、ジェマがミーガンに頼ったのは子どもとの接し方が分からなかったためだ。ミーガンの性能は高すぎるし、常に学習を続けているので、彼女がいればもう親はいらない。しかも、命令通りケイディをあらゆる危険から守ってくれる。危険なのは、ミーガンは主の言いつけを表面的に受け取り、頑なに従い続けるということ。ケイディに危害を加える人間は全員敵、ケイディを泣かす人間は全員敵。そういう意図ではなかったとしても、結果的にケイディを困らせる人間は全員敵だ。敵と見なされれば、彼女は奇怪な(機械な?)動きでどこまでも追いかけてくる。四つん這いで、アクロバティックなダンスで。外見は人間そっくりで愛着が湧きそうなのに動きが人間離れしているので、観客は恐怖のどん底、不気味の谷に突き落とされる。

このCGか何かにしか見えないミーガンの動きは、エイミー・ドナルドというダンサーの少女が演じている。『マリグナント』の方でも、アノ動きを演じているのはダンサーだった。少なくともこういった動きの面ではまだまだ人間がAIに負けることはないようだが、今や子どもたちは幼い頃からスマホやネットに長く触れている。場合によっては、親と触れ合う時間よりも。冗談でなく、そのうち親や友人のような立場はAIに取って代わられるかもしれない。AIが諸悪の根源というより、結局は人間自身が自分の首を絞めている状況なのがまた皮肉だ。

ジョンストンは、これまでにたった1本だけ映画を手がけている。夏に新宿シネマカリテにて日本初公開されるホラーコメディ『Housebound(原題)』だ。『M3GAN』がホラーでありながらヘビーになりすぎず、どこかライトでポップなのはやはりジョンストンのコメディセンスゆえだろう。ちなみに、すでに同じ布陣で続編『M3GAN 2.0(原題)』が作られることが決まっている。今のうちに、ミーガンの倒し方を研究しておこう。倒せるとしたら、だが。

【ストーリー】
おもちゃ会社の優れた研究者であるジェマは、子供にとって最高の友達であり、親にとって最大の協力者となるようにプログラムした、まるで人間のようなAI人形M3GAN(ミーガン)を開発。ある日、両親を亡くし孤児となった姪のケイディを引き取ることになったジェマは、ミーガンに「あらゆる出来事からケイディを守るように」と指示し力を借りるが、その決断は想像を絶する事態を招くことになる――。

【キャスト】
アリソン・ウィリアムズ、ヴァイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン、ジェン・バン・エップス、ブライアン・ジョーダン・アルバレス 他

【スタッフ】
監督:ジェラルド・ジョンストン
脚本:アケラ・クーパー
製作:ジェイソン・ブラム、ジェームズ・ワン
配給:東宝東和

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公式サイト:https://m3gan.jp/

 

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