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『オールド』歳を取るのは早いもの。矢のように過ぎる時間の恐怖があなたの心を射抜く。

◆公開中の注目作 
『オールド』

本作の監督、M・ナイト・シャマランほど、観る人によって作品の評価が分かれる監督はいないだろう。

名作と呼ばれる作品も残しているが、同様に“迷作”認定された作品も1本と言わず複数ある。彼の作品を端的に表す言葉は「面白い設定」と「どんでん返し」だ。誰もが興味を引かれる魅力的なシチュエーションがまず提示され、終盤には予想外の展開が待ち受ける。これが基本だ。キャリア初期の名作『シックス・センス』のタイトルを知らない者はないだろう。ホラーでありながら鮮やかなどんでん返しも相まって、多くの観客に感動まで与えてしまった傑作だ。その後しばらくは良い調子だったが、6作目『ヴィレッジ』のあまりにトンデモなオチは観客を落胆させた。続く4作も観客の支持を得られず、一度彼の名声は地に落ちた。

M.ナイト・シャマラン監督

復活の嚆矢となったのは、11作目の『ヴィジット』。幼い姉弟が初めて会う祖父母の家を訪ね、滞在する中での恐怖を描くスリラーで、よくできた小品だった。姉弟の恐怖の対象になるのはまさに“オールド”、祖父母の持つ「老い」という子どもには理解しがたい特性だ。光陰矢の如し、『オールド』が描くのは美しいビーチに閉じ込められ、尋常でないスピードで体が老いていく恐怖だが、今回は子どもも老化からは逃げられない。ワンシチュエーションの「面白い設定」と「どんでん返し」で勝負している作品は『ヴィジット』以来、実に6年ぶりだ。

本作の設定は非現実的に聞こえるが、人間にとって時間とはそもそも相対的なものだ。例えば…楽しい時間はあっという間に過ぎる。本作の怪奇現象もビーチで遊ぶのが楽しすぎたのが原因…というのは冗談として、「60歳にとっての1年は人生の60分の1だが、6歳児にとっての1年は人生の6分の1」のような言い回しを聞いたことは? この時間の主観的な長さが年齢に反比例する現象は「ジャネの法則」の名で知られている。子どもの成長は想像以上に早く1年ぶりに会うと恐ろしく大きくなっているし、特にこのコロナ禍で刺激の少ない毎日を送るうち、いつの間にか思ったよりも日が経っていたなんて方もいるだろう。本作が描くのは全くの絵空事ではないのだ…。ところで、本作はアメリカ本国で評価が綺麗に二分されている。しかし、賛否両論あるのはアートとしては非常に真っ当なことだとも言える。…個人的には、あなたがこの108分をあっという間に感じるよう祈るけれど。

 

文:屋我平一朗(ホラーが主食の映画ブロガー)

【概要】
本作のテーマは、“時間”。バカンスを過ごすために訪れた美しいビーチで、[時間]が異常なスピードで加速し身体が老いていく不可解な現象に見舞われ、謎を解かなければ脱出できない家族の恐怖とサバイバルを描く、謎解きタイムスリラー。

【キャスト】
ガエル・ガルシア・ベルナル,ヴィッキー・クリープス,アレックス・ウルフ,トーマシン・マッケンジー ほか

【スタッフ】
監督・脚本:M.ナイト・シャマラン
原案:「Sandcastle」(Pierre Oscar Lévy and Frederik Peeters)
製作:M.ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストックほか

配給:東宝東和

公式サイト:old-movie.jp

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