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【今週公開の注目作】『ドミニク 孤高の反逆者』A級にはなれないが、A級にもできないことができる。敵味方ともにオーバーキル気味B級リベンジアクション!

◆今週公開の注目作

『ドミニク 孤高の反逆者』
11月21日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「B級映画」という言葉は、基本的に低予算映画を指して使われる。A級の大作と比べて独特な味がするので元々愛好家(好事家と呼ぶべきか)がいたが、昔よりも映画に出会う手段が増えた現在ではより一般的に認知されるようになった。ただ、その呼び名が示す範囲はかなり広く、同じB級でもそのルックにはだいぶ差がある。例えば、多くの個性的なホラーで有名なブラムハウス・プロダクションズの作品はB級と言われがちだが、実際主演はA級の俳優だったり、リッチとは言えなくとも画面にチープさは感じられなかったりする。その点、本作『ドミニク 孤高の反逆者』は胸を張ってB級と言える! 明らかに予算はなさそうだしキャストも誰も知らない。しかし、ホンモノのB級からしか得られない経験というものは確かにある。

本作の舞台はコロンビア。物語はいきなり、ある小型飛行機が撃ち落とされた直後から始まる。攻撃してきた麻薬カルテルの男たちを逆に皆殺しにし、白い肌を返り血で真っ赤に染める彼女こそ、本作のハードボイルド女性主人公・ドミニクだ(演じるオクサナ・オルランはロザムンド・パイクに少し似ている)。素性不明ながら高い戦闘スキルを持つ彼女は警官フリオとワンナイトラブを楽しむが、警察と麻薬カルテルの見分けもつかないような町で正義感に目覚めてしまった彼は、身内に無惨に殺されてしまう。ドミニクは、フリオが押さえた警察の悪事の証拠とともに消されそうなフリオの家族を守るため、警察・カルテルを敵に回すことを決意するが……。

一言で表せばリベンジアクションだ。南米の麻薬カルテルが登場する作品は珍しくないし、その残酷さは多くの人がある程度認識しているだろう。普通なら、その所業をありのまま描きはしない。目を背けたくなるほど胸糞悪い描写になるのが明白だからだ。ところが、幸か不幸か本作はB級映画、万人受けを狙わずとも良い。その結果、視覚的にも精神的にも嫌悪感MAXな展開を恐れずやりきってしまっている! 胸糞要素はリベンジの爽快感を増大させてくれるものながら、正直やりすぎだ。これが世界の現実だと言われればそうなのかもしれないが、マイケル・S・オヘダ監督が過去に撮った『サベージ・キラー』が凄惨な暴行を受けて死亡した女性にネイティブアメリカンの魂が乗り移り、ゾンビ化して男どもを処刑していく陰鬱な内容だったのを考えると単にそういった作家性なのかもしれない。

アクションヒーローさながらの無双アクションを繰り広げるドミニクはともかく、この物語に安全圏が存在しないのは明らかだ。ドミニクが守らなければならないフリオの家族とは、通常の映画では絶対残酷に死なないような妊婦、幼い子どもたち、老人。犯罪組織と大差ない警察と敵対し、全ての銃弾から家族を守りきるなど不可能に思えるが、いち家族+グリンガ(よそ者白人女性)は身の回りの物を利用した等身大で現実的な戦い方で抵抗せざるを得ない。これが大予算を組んだバトルシーンを撮れないB級映画事情とリンクし、もしかしたら監督らが意図した以上に切実な雰囲気が醸し出されている。主演のオルランが脚本に参加しながらこのような物語になっているのも、また味わい深い。監督やキャストが直接その手で形作った器が、そのまま焼き上がって作品となっている感じがひしひしと伝わるのだ。この生っぽさがまさにB級映画らしい。もちろん、そのせいでお腹を壊すかもしれないが、まあ……それは自己責任ということで。

【ストーリー】
南米コロンビアの小さな街に流れ着いたウクライナ人の女ドミニク。知り合った警官フリオとその家族との平穏な日常は長くは続かなかった。腐敗した警察と麻薬カルテルによってフリオが惨殺され、非力な家族に危機が迫る時、ドミニクは封印していた戦闘スキルを発動させる。無法地帯を舞台に正体不明のグリンガ(よそ者の白人女)が警察とカルテルとの壮絶な戦いが展開する!

【キャスト】
オクサナ・オルラン、モーリス・コンプト、ホセ・コネホ・マルティン、マリア・デル・ロサリオ、アラナ・デ・ラ・ロサ、セバスティアン・カルヴァハル

【スタッフ】
監督・脚本・編集:マイケル・S・オヘダ

 

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