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『IMMACULATE 聖なる胎動』信ずれば、単なる偶然も奇跡に。行動すれば、一度の奇跡も必然に。

◆今週公開の注目作

『IMMACULATE 聖なる胎動』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「IMMACULATE(イマキュレイト)」。あまり聞き慣れない英単語である。この原題をそのまま邦題に持ってくるのは少し挑戦的に思えるが、このタイトルでなければならない理由も思い当たる。キリスト教にまつわるホラーである本作『IMMACULATE 聖なる胎動』で描かれているのは、聖母マリアの再来だ。キリスト教において、人はみな原罪を背負っているとされる。人類の祖、アダムとイヴが神の言いつけに背き、食べると善悪の知識を得られる知恵の実を口にしたという、人類最初にして最大の罪。しかし神の計らいで、この世に生を受けた瞬間からすでに原罪を免れていた者も存在する。それがイエス・キリストの母である聖母マリアで、このことを「無原罪の御宿り(Immaculate Conception)」というのだ。

通常、「immaculate」は「汚れのない、完全な」という意味で使われる。ラテン語の「汚れた」に否定の接頭辞がついたのが元だ(個人的なお気に入りの訳は、仏教由来の語ながら「垢=不浄なもの」に否定の「無」がついた「無垢」)。同様の意味ながらその単語だけでプラスの意味がある「perfect(完全な)」と比べると、マイナスな意味の言葉を後から否定している「immaculate」は不安定な感じもする。本作で現代の聖母となるのは、幼少期に心停止状態から奇跡的に生還したために、神の道に生きると決意した若きシスター・セシリア。彼女は単身イタリアへ渡り、高齢のシスターたちのお世話をしながら修道院で生活することになる。ところが悪夢的なビジョンを見て間もなく、男性経験のないはずの彼女の妊娠が判明する。これは天使による受胎告知なのか、それとも……。

キリスト教ホラーということで堅苦しいイメージを持たれるかもしれないが、本作はナンスプロイテーション映画である。語弊を恐れずに言うならば、敬虔な修道女たちを俗っぽい目線で描く作品群の中のひとつだ(セシリアの友人となるシスター・グウェンを演じるのが「ベネデッタ」・ポルカローリなのが面白い)。要するに「聖と性」がテーマで、アメリカでは本作と同じく昨年公開された『オーメン:ザ・ファースト』に大きく通ずる部分がある。先日紹介した配信作品の『7A号室』や、そのオリジナルの『ローズマリーの赤ちゃん』なども近い。現実のアメリカでも妊娠・出産はかなりタイムリーなトピックなので、それとホラーを混ぜた作品は伝統的でありながらも最新のトレンドと言えるかもしれない。

良い意味でドギツすぎた『オーメン:ザ・ファースト』と比較すると、残酷描写は多いながらもジャンプスケアも多めな本作はホラーとしては少々インパクトに欠ける気もするが、一番の見所はやはり主演のシドニー・スウィーニーの演技だろう。(内容は正直ちょっとアレだったが)『マダム・ウェブ』にも出演している彼女は、本当にここ数年で目覚ましい活躍を見せている最も新しい若手スターのひとりだ(彼女主演の音楽ホラー『ノクターン』はぜひ見てほしい)。画面が彼女のおぞましい表情に支配されている時間も長く、脳裏にこびりつくのはグロシーンよりもむしろそちらかもしれない。監督は『観察者』でもタッグを組んだマイケル・モーハンであり、色っぽさもある彼女の魅力がしっかり引き出されている。筆者は、今一番リアルタイムでキャリアを追っていく楽しみが感じられるのは彼女だと思っている。ハリウッドの最前線をチェックするという意味でも、本作を押さえておいて損はないだろう。

【STORY】
イタリアの田園地帯に佇む修道院へと招かれた敬虔な修道女・セシリア。穏やかな日々を過ごす彼女だが、処女であるにもかかわらず妊娠していることが発覚。周囲は“次なる聖母”として彼女を崇めはじめる。だが赤いフードの集団が現れ、修道女の自殺や拷問が続発するなど、修道院の中では次第に異常な出来事が起こり始める──。セシリアはやがて、この場所に渦巻くおぞましい秘密と対峙することになる…。

『IMMACULATE 聖なる胎動』
7 ⽉18 ⽇(⾦)新宿武蔵野館ほか全国公開
© 2024, BBP Immaculate, LLC. All rights reserved.

監督︓マイケル・モーハン
主演︓シドニー・スウィーニー
配給︓クロックワークス

 

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