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『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』監督すら行き先が分からないストーリーに翻弄されろ!トム・クルーズが示す現代アクションの最前線!

◆今週公開の注目作

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「世界最高のハリウッドスターは誰か?」と問われれば、 あなたはどう答えるだろうか。おそらく、多くの方の答えは20年前も今も変わらないのではないだろうか。レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットなど現在でも活躍しているお馴染みのスターはいるが、やはりトム・クルーズだろう! 最近はほとんどシリーズの続編にしか出演しておらず、それだけ聞くと落ち目なようにも思えるが実際は全くそんなことはなく、『トップガン』の36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』は昨年のベスト映画と言っても過言ではない傑作だった。珍しく上手く行かなかった『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』にも、トム演じる主人公ニックが不敵に笑いながら発するこんな素晴らしいセリフがある。「君の冒険心はどこに行った?」。

『鏡の国のアリス』で赤の女王が「その場に留まりたいのなら、全力で走り続けることね」と言うが、まさにトムはこの『ミッション:インポッシブル』シリーズでトム走り(背筋を伸ばし、ももを高く上げる走り方)しながら常に危険を冒し、スター街道をトップで驀進(爆進?)し続けている。以前、映画批評サイト「ロッテン・トマト」で「トムが劇中で走る距離が長いほど批評的・興行的に優れた映画になりやすい」という説が提示された。しかも、その距離は若い頃より今の方が長くなっている。そして、最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』でももちろんトムは全力疾走しているし、上映時間(ランニングタイム)もシリーズ最長の163分だ。まだ前半に過ぎないのに!

『ミッション:インポッシブル』は作品を重ねるごとにきちんとパワーアップしていく稀有なシリーズで、「不可能な作戦」というタイトルに恥じないアクションを毎回トムが披露する。死が人生のゴールならば、完全にトムは生き急いでいる。本作の予告で、トムがバイクで断崖絶壁から飛び降りるスタントが大々的にフィーチャーされているが、これはスカイダイビング500回、モトクロスジャンプ13000回の末に成し得た偉業だ。1回のスタントで死ぬ確率が1%でもあるとしたら、トムはすでにこの世にいない計算になってしまう。AI技術による俳優の顔差し替えや若返りは珍しいものではなくなってきているが、きちんと年齢を感じられる顔(61歳!)で、しかし若々しいアクションを見せてくれるトムは、奇しくもハリウッドがAI導入反対のスト中であるこのタイミングで正面切ってAIに宣戦布告したと言えるだろう。

今回、スパイ組織IMFのエージェント、イーサン・ハントが挑むのもまた、AIによる人類征服の危機だ。AI「エンティティ」は常にイーサンたちの動きを予測し、人間の悪役ガブリエルたちを先々に手配して邪魔をしてくる。タイトルの「デッドレコニング」とは、分かっている最後の位置から速度や方角などのデータを用いて過去・現在の航路・位置を割り出す「推測航法」を意味する。前前作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』から本作までを監督しているクリストファー・マッカリーは、まずアクションシーンありきで後から脚本の辻褄を合わせるというトンデモな方法で映画を作っているので、「イーサンたちはこういう道筋を辿ってきた…ということにしよう」というデッドレコニングなストーリーになる。それでも抜群に面白いのが意味不明なのだが。

実際に崖から飛び降り、実際にローマの市街地でカーチェイスし、実際に列車の上で格闘し、その列車さえも崖から落として撮影している本作は、紛うことなき現代アクション映画の最先端だ。PART TWOのストーリーも例によって全く未定のようで、次にこれ以上の作品が作れるのか不安になるが、ここでローマだけに『ローマの休日』で知られるオードリー・ヘップバーンの名言を引用しよう。「不可能(Impossible)なんてないわ、その言葉自体に『私は可能(I’m possible)』と書いてあるもの」…。そして、トムが以前マッカリーと組んだ『アウトロー』シリーズの2作目のサブタイトルは「Never Go Back(決して戻らない)」。トム/イーサンが次に向かう場所がどこであろうと、これだけは言える。そこはきっと、今より“先”だ。もちろん、トム自身は無事にGo Backしてくれることを祈りながら、トムの現在地を本作で確認しておこう。

【ストーリー】
IMFエージェント、イーサン・ハントに課せられた究極のミッション―—全人類を脅かす新兵器が悪の手に渡る前に見つけ出すこと。しかし、IMF所属前のイーサンの“逃れられない過去”を知る“ある男”が迫るなか、世界各地でイーサンたちは命を懸けた攻防を繰り広げる。やがて、今回のミッションはどんな犠牲を払っても絶対に達成させなければならないことを知る。その時、守るのは、ミッションか、それとも仲間か。イーサンに、史上最大の決断が迫る—―。

【キャスト】
トム・クルーズ、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ヴァネッサ・カービー、ヘイリー・アトウェル、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、 他

【スタッフ】
監督:クリストファー・マッカリー
脚本:クリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセン
製作:クリストファー・マッカリー、トム・クルーズ 他

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