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【今週公開の注目作】『ANIMAL』 この愛は深いのか、それとも不快なだけか。そもそも、愛ではなくそれに似た何かなのか。

◆今週公開の注目作

『ANIMAL』
2026年2月13日(金)グランドシネマサンシャイン 池袋、新宿ピカデリー他全国順次公開

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

数分、数十秒、数秒の短い動画の方が多く再生される現代で、インド映画はその正反対を行っている。上映時間3時間は当たり前、大体2時間のハリウッド映画を見慣れている我々でも1.5倍のボリュームにはどうしても気圧されてしまう。だがそれだけ長く登場人物と接していると、普通の映画ではなかなか経験できない深い絆で結ばれたような気さえしてくる。本作『ANIMAL』の主人公ランヴィジャイ(ヴィジャイ)は、通常ならば感情移入が難しいキャラクターのはずなのに。質的にではなく、量的な意味で。

彼は父親が大好きだ。インドで最も大きな影響力を持つ鉄鋼メーカーを率いる王のごとき父を深く尊敬している。ここまでは良い、問題は質ではないのだ。異常なのはその愛の強さで、ヴィジャイは何よりもまず父を優先する。決して仕事人間の父からそのように躾けられたわけではなく、幼い頃からそうだった。父の誕生日ならば、授業などそっちのけで駆けつける。彼の愛情は父だけでなく姉ら家族にも向けられており、自分の使命は家族を守ることだと強く思い込んでいる。家族の平和を脅かす者は殺さんばかりの勢いだ。父を馬鹿にする者や姉に乱暴しようとする者には容赦なく牙を剥き、爪痕を残す。しかしその残虐さのせいで、最愛の父からは半ば勘当のような仕打ちすら受けてしまう。

本作は、もはや人よりも動物に近いこのヴィジャイという狂人の人生を追っていくものだ。恋人とともに一度は父の元から去ったが、暗殺事件で一命を取り留めた父に8年ぶりに再会したヴィジャイは、血で血を洗う復讐にその身を捧げていく。それまでは苦い家族ドラマ、甘い恋人とのラブコメと様々なテイストで観客を楽しませてきた本作は、ここから鉄の味に様変わりする。父を狙う謎の組織の雑兵を次から次に滅多斬り、蜂の巣にしていくアクションシーンは血と銃弾の雨が飛び交う凄惨な絵面でありながらもインドお得意のミュージカル調になっている。勇壮な歌が流れると多くの場合は主人公の勝利が確定するものだが、そこはまだまだストーリーの中盤に過ぎない。無双していたヴィジャイも大きな代償を払う羽目になり、その後はさらにテイストが変わっていく。

愛に狂う男の感情の奔流に付き合わされている感覚だ。ハリウッドでは少なくなってきた、男性性が全画面に迸っているタイプの作品で、戸惑う観客もいるだろう(ただし、それを全肯定している作品とは思わない)。鎖で繋ぎ止められやしないこの愛の猟犬でも、終わりなき復讐の連鎖に絡め取られていくのだろうか? その答えは……、ちなみに、筆者が紹介しているインド映画にありがちなことだが、本作も例に漏れず続編が制作中だ。ヴィジャイと3時間も過ごすと、不思議にも彼に共感めいたものを抱き始めてしまう。こうなるとあまり時間は気にならなくなり、ただただ彼の行く先だけが気になってくる。これはキャラクター愛なのか? それとも……。

【ストーリー】
デリーの鉄鋼王バルビールの長男として生を受けたランヴィジャイ。仕事一筋で家庭を顧みない父からの愛に飢えた彼は、とある事件をきっかけに、アメリカの寄宿学校へ送られてしまう。成長したランヴィジャイは、バルビールの60歳の誕生日パーティーに参加するために帰国。しかし、義兄と諍いを起こし、バルビールに拒絶されてしまう。哀しみに打ちひしがれたランヴィジャイは、幼馴染のギタンジャリと駆け落ち同然で結婚し、再びアメリカへ。8年後、バルビールが何者かに襲撃されたと報せを受けたランヴィジャイは、デリーに舞い戻る。復讐を誓ったランヴィジャイ。ならず者を集め、敵対者を追い詰めていくが、その行為はエスカレート。さらに宿敵の存在が明らかになり、逃れられない復讐の道へと突き進んでいく——。

【キャスト】
ランビール・カプール、アニル・カプール、ラシュミカー・マンダンナ、ボビー・デーオール 他

【スタッフ】
監督:サンディープ・レッディ・ヴァンガ
脚本:サンディープ・レッディ・ヴァンガ、プラナイ・レッディ・ヴァンガ、スレッシュ・バンダル
製作年:2023年 製作国:インド 上映時間:201分
配給:ギークピクチュアズ
© SUPER CASSETTES INDUSTRIES PRIVATE LIMITED & BHADRAKALI PICTURES PRODUCTION 2023

公式サイト:http://animal-movie.jp/
X:@ANIMAL_movie_JP #映画ANIMAL

 

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