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【今週公開の注目作】『THE MONKEY/ザ・モンキー』ドラムロールが鳴り響く。豪勢な死を指折り数えて待て。

◆今週公開の注目作

『THE MONKEY/ザ・モンキー』
9月19日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『猿の手』という怪奇小説の古典がある。その名の通り、ミイラ化した猿の手を巡る数奇な物語だ。猿の手は持ち主の願いを3つ叶えてくれるが、それを実現させる手段にはひどく無頓着で、軽い気持ちで使ってしまった夫婦を地獄の苦しみに遭わせる。大金を願うと、息子が業務中の事故で死んで会社から同額の弔慰金が支払われた。息子を蘇らせてほしいと願うと、家のドアがノックされたが、“そのまま”蘇ったのではと恐怖に駆られた父親が息子を墓に戻すように願い、ノックの主は消えた……という話だ。これはCLAMPの漫画『xxxHOLiC(ホリック)』でもオマージュされており、筆者と同じくそちらの方で先に知った方もいるかもしれない。同作では、願いを叶える度に猿の手の指が1本ずつ折れる視覚的アレンジがされていた……さて。

本作『THE MONKEY/ザ・モンキー』は、ホラーの帝王スティーヴン・キングの短編『猿とシンバル』を原作としたホラー映画だ。話はワンアイディアで分かりやすい。出自が不明で不気味な、ドラムを叩く猿のおもちゃが登場する。ぜんまいを巻くとその“猿の手”はドラムを叩き始め、それが止むと周りの誰かが死ぬのだ。しかも、とびきりオモシロイ形で! 子どもの頃、なぜか家にある猿を見つけてしまったハルとビルの双子がぜんまいを回してしまい、ベビーシッターや母が目の前で不自然に死ぬのを目撃する。処分しても元通りになって戻ってくる猿をどうにか井戸に封印し、何事もなく20年が経過するが、自身のせいで不幸にならないよう妻子を遠ざけて暮らすハルの周りで再び怪死事件が起き始める。この猿が叶えるのは、「誰かが無惨に死ぬ」ことだけ。所業は省みざる。殺したい相手については聞かざる。そして死の方法も言わざる、だ。

先に言っておくと、本作は非常にグロい。死に方は『ファイナル・デスティネーション』的な感じで、物事の連鎖がキャラクターの死に繋がるのだが、そのそれぞれがブッ飛んでおり奇怪で見所満点、本作自体が怪死のカタログになっている。ホラー映画と紹介したが、実際はブラックコメディと呼ぶ方が近いだろう。監督のオズグッド・パーキンスは、『ロングレッグス』に続いて日本では今年2本目の公開作でかなり流れが来ているが、これまでは変な(のは同じとして)シリアスホラーを撮ってきていたので、ここまで振り切ったコメディも撮れるというのは正直意外、嬉しい誤算だ。ちなみに彼は劇中にもハルの伯父さんとしてカメオ出演しており、目を背けたくなるほどヒドい死に様を披露してくれる(次回作は、本作でハルの母を演じるタチアナ・マズラニーと再び組んだ『The Keeper(原題)』だ)。

原作が『猿とシンバル』なのになぜドラムに変更されたかについては、オズグッドがScreen Rantのインタビューで語っている。曰く、シンバルを持った猿の権利をディズニーが持っており(『トイ・ストーリー3』で登場)、変えざるを得なかったとのことだ。しかしそれは結果的に最高の変更になった。猿は決して、呪いを1発のシンバルで終わらせたりはしない。何度でも何度でも、事情を知っている者、また知らぬ者に求められれば、次の“出し物”のため景気良くドラムロールで盛り上げてくれるのだ。いつ不幸がまた起き始めるか、誰にも予想できない。

オズグッドの父親は『サイコ』で有名なアンソニー・パーキンス。彼はエイズのため亡くなった。母親はスタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』で有名なマリサ・ベレンソンの妹ベリー。彼女はアメリカ同時多発テロ事件の際、世界貿易センタービルに突っ込んだその飛行機に乗っており亡くなった。本作は不謹慎に見えて、理不尽な死へ笑いで対抗するためのオズグッドなりのセラピーにもなっている。いつ、誰が、どんな死に方をするかは分からない。死の前では、病める者も健やかなる者も関係ない。富める者も貧しき者も関係ない。だから、踊れる時に踊るのだ。キングの著書に引っかけて言うならば、そう、ダンス・マカブル(死の舞踏)を。

【ストーリー】
双子の少年ハルとビルは父が遺した持ち物から、ぜんまい式のドラムを叩く猿のおもちゃを見つける。その頃から周囲で“不慮の事故死”が相次いで起こりはじめる。最初はシッターのアニーが、ほどなくして母・ロイスが亡くなった。ハルはふたりが死ぬ前にこの猿がドラムを叩いていたことに関連があるのではないかと気味悪がっておもちゃを切り刻んで捨てるが、気づくと元通りとなって戻ってきた。母の死後、兄弟を引き取ったチップ伯父さんが“普通じゃない狩りの事故”で死んだことで、兄弟は猿を枯れ井戸へと葬った――つもりだった。それから25年の時が経ち、一度は結婚し息子をもうけたハルだが、猿が戻ると身近な誰かが死ぬと思い、家族とは距離を置きビルとも疎遠になっていた。しかしそれは起こる。今度はアイダ伯母さんが“気味の悪い事故”で亡くなったのだ。遺品整理で伯母の家を訪れたハルは、あの猿が戻ってきたことを確信する。

【スタッフ・キャスト】
監督・脚本:オズグッド・パーキンス  
原作:スティーヴン・キング  
製作:ジェームズ・ワン
出演:テオ・ジェームズ、タチアナ・マズラニー、クリスチャン・コンヴェリー、コリン・オブライエン、アダム・スコット、イライジャ・ウッド
原題:THE MONKEY/2025年/アメリカ映画/98分/R-15作品
配給:KADOKAWA
コピーライト:© 2025 C2 MOTION PICTURE GROUP, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/themonkey/

 

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