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『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』俺たちは崖っぷちだった。だが今はその1歩先にいる!

◆今週公開の注目作

ヘヴィトリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー」を名乗る者として、本作を扱わないわけにはいくまい。一応、この『ヘヴィ・トリップ』シリーズが扱っているデスメタル(凶悪な響きのダミ声=デスヴォイスを多用するメタル)よりは、デスヴォイスと対照的なハイトーンのクリーンヴォイス(高音の歌声)主体で、適度にプログレッシヴ(リズムが複雑だったり転調が多い)でメロディアス(メロディーが美しい)なメタルの方が好みではある。もしかしたら普段メタルを聴かない方には意外かもしれないが、北欧諸国はメタル国家だ。例えばスウェーデンはそれが顕著で、日本語版ウィキペディアの「各国のヘヴィメタル・バンド」のページ数はぶっちぎりで他国より多い。本当かどうか知らないが、ヘヴィメタルを聴くとストレス軽減効果があるとする研究もあり、そういう意味でも福祉国家なのだ(すでに面倒くさい文章になってしまっているのは大変申し訳ない)!

とにかく、フィンランドも例に漏れず、日本でも有名なバンドがいくつもある。フィンランド映画の『ヘヴィ・トリップ』シリーズは、ダメダメ4人組のアマチュア・デスメタル・バンド「インペイルド・レクタム(直訳で「串刺し直腸」)」の珍道中を描いたゆる~いコメディだ。メタラーに怖いイメージを抱いている方でも全く問題ない。えげつないデスヴォイスを用いるが実は気弱で奥手なイケメンヴォーカルのトゥロ、ソーを演じている時のクリス・ヘムズワースに似たワイルド系だがおバカな速弾きギタリストのロットヴォネン、悪魔メイクが死ぬほど似合う耳コピの天才だが嘘がつけないKYベーシストのパシ(a.k.aクシュトラックス)、パワフルなドラミングだがキレると手が付けられないハルク型ドラマーのオウラ。個性豊かすぎるメンバーながら、基本的には皆イカツい外見に反してどことなく残念な良い人たちばかりなのである。おかげで親近感MAXだ。

前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』で、色々あって投獄されたインペイルド・レクタム。デスメタル・バンドとして箔が付いたと喜んだ彼らは、本作『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一髪!』ではドイツで行われる世界最大のメタルミュージックフェス「ヴァッケン・オープン・エア」に出演するため脱獄を画策する。こう書くとサスペンスフルな展開が待っているように聞こえるだろうが、本シリーズにはバカしか出てこないので脱獄は大した障害ではない。むしろ、バンドがセルアウト(売れ線狙い)してメタル魂を失ったり、ひとりのメンバーのエゴのせいで解散の危機に陥ったりする問題を描いている。バンドである以上、インペイルド・レクタムもその危険性から逃れることはできない。まさしく、これは“鋼鉄の絆(メタル・バンド)”とは何なのかについての映画なのだ!

前作で音楽を担当していたのは実在のフィンランドのバンド「ストラトヴァリウス」のベーシストであるラウリ・ポラーだったが、何と本作にはJ-POPとメタルが融合した“カワイイメタル”のパイオニア、BABYMETALも出演している(しかも割とガッツリ)。メタルというジャンルはマニア向けのようでいて、実はアニソンやヴァイキング、ボサノヴァに至るまで、多種多様な要素を取り入れても成立する懐の広さを持っている。あなたがメタルを拒否しても、メタルはあなたを拒否しない。これでメタルに興味を持った方は、妖怪や古文をフィーチャーした日本の和風ヘヴィメタル・バンド「陰陽座(おんみょうざ)」や、ヴィジュアル系に各種メタルを取り入れた日本のエクストリームメタル・バンド「インペリアルサーカス・デッド・デカダンス」、静謐で美しいノルウェーのプログレッシヴメタル・バンド「レプラス」などを聴いてみると、新たな世界が開けるかもしれない。さあ、人差し指と小指だけを立てればメタルを祝福するメロイック・サインの出来上がりだ! 拳を掲げよ!

【ストーリー】
活動開始から12年間ライヴ経験なし、オリジナル曲なしだったフィンランドのド田舎メタルコピーバンド、 インペイルド・レクタム(直腸陥没)は遂に生み出された史上最高の初オリジナル曲をひっさげノルウェーの巨大フェス、ノーザン・ダムネーションへ殴り込み、 “終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”バンドへと脱皮したがその行いによって収監されていた。 獄中、超大物レコードプロデューサーのフィストからドイツのメタルフェス、ヴァッケン・オープン・エアへの出演オファーを受けるも準備不足と投獄を理由に辞退した。バンドは看守の目を盗み、牢屋でひっそりとヘヴィ・メタルを演奏するしかなかった。だがギタリストの実家であるトナカイ粉砕場が地上げ屋の乗っ取り危機に瀕しているという緊急事態を察知したとき、彼らは脱獄した。出演料で実家を救うべくふたたび史上最高のオリジナル新曲を携え、フィヨルドの彼方ヴァッケンを目指す。だが、逃走中に遭遇した、かつて憧れだった超電導波デスボイスのベテランメタルバンド、ブラッドモーターは、フィストの操り人形となり商業主義の奴隷と化していた。フィストはバンドを食いものにする金の亡者だった。フィストによるカバー曲演奏指令でかつてない屈辱を味わう直腸陥没。せっかくの新曲レコーディングもミックスで台無しにされた。見世物小屋に奴隷を送り込む権力者と、奴隷の自覚さえない家畜たち。肩を落とす直腸陥没の前に広がる音楽業界に、もはや本物の音楽はなかった。さらに後方からは直腸陥没逮捕に執念を燃やす、怒り狂える元ノルウェーデルタ部隊大佐ドッケンが迫る。そしてあらゆるものごとが裏目に出たこの猛悲惨のなか、あろうことか、大混乱でつい魔が差したメンバーの行動によりバンドに軋轢が発生した。危うし!直腸陥没危機一発!この絶体絶命の事態に直面した彼らを待ち受ける運命とは!?

【キャスト】
ヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、チケ・オハンウェ、アナトーレ・タウブマン、ヘレン・ビースベッツ、ダーヴィト・ブレディン、JUSSI69、BABYMETAL 他

【スタッフ】
監督・脚本:ユッカ・ヴィドゥグレン、ユーソ・ラーティオ

 

 

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